第154話

クロードは入寮できると聞いて宿を引き払って学園へと来ていた。


案内されたのは豪邸と呼べるような他とは独立した建物だった。


「あの。本当にここですか」


「生徒を区別しないというのが本校の方針ですが王族や上級貴族のご当主となるとさすがに区別をつけざるをえません」


寮での学友との生活を楽しみにしていたというのにこれでは交友を深めるのに難儀しそうである。


とはいえ学園側の配慮に文句を言うのも違うだろう。


「わかりました」


「必要なら使用人の手配もできますがどうしますか」


「いえ。必要ないです」


「隣はエリーゼ様が入寮されますので問題を起こさないでくださいね」


注意を言って案内してくれた人は去っていった。




クロードは渡された鍵でドアを開けて内部を見てみることにする。


王族が使うこともあるということで内部も豪華な装飾が見受けられる。


キッチンや風呂場もあり生活する上では問題なさそうだ。


「豪華すぎてちょっと落ち着かないけど慣れるしかないか」


そこでドアベルが鳴らされたので出てみるとエリーゼがいた。


「エリーゼも来たんだね」


「ええ。学園に入学したら王族でも寮に入る規則だもの」


「お隣さんだね。これからよろしく」


「ええ。困ったことがあったら気軽に訪ねてきてね」


「エリーゼもね」


「私はこれから引っ越しの作業があるから失礼するわね」


「手伝おうか」


「大丈夫。そのために使用人も連れてきたもの」


「わかったよ」




エリーゼと別れてクロードは久しぶりに古書店を訪ねることにした。


店の中に入ると独特な匂いと老人の店員さんが出迎えてくれる。


「よく来おったの」


「お久しぶりです。お元気そうで良かったです」


「頼まれておった本は揃っておるぞ」


「助かります」


クロードは頼んでいた以外の本も次々と抜き出すとカウンターの上に乗せていく。


「ありがたいことだが毎度凄い量を買っていくの」


「知識を蓄えるのは楽しいですから」


「うむ。古書達も読まれて喜んでおることだろう」


アイテムボックスから代金を支払い本をアイテムボックスにしまっていく。


「ありがとうございました」


「うむ。またの来店を待っておるぞ」




寮に直帰してクロードは買ってきた本を早速読んでいく。


「相変わらずいい仕入れをしてくれるな」




時間が経つのも忘れて没頭していたらしく辺りは真っ暗になっていた。


「夕ご飯の支度をしないと」


携行食は勿論のこと時間経過のないアイテムボックスの中には討伐した魔物の肉や新鮮な野菜なども入っており手早く料理していく。


アースドラゴンの肉のステーキに野菜をじっくり煮たスープでお腹を満たしたクロードは再び本に没頭するのであった。

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