第149話

「必要な儀式ね」


「クロード卿は学園に入学するのだろう。だったら腕を鈍らせないように修練の場が必要だ」


「なるほど。修練をうちの騎士団員達相手にしてもらおうと思ったわけか」


「騎士団長と打ち合える腕だと広く知らせることで無駄な軋轢を回避しようと思ったわけさ」


「それで負けかけていては笑い話にもならんがな」


「それは痛いところを突かれたな」


「ご配慮いただきありがとうございます」


「うんうん。クロード卿は謙虚だな。それに比べてうちの同僚ときたら」


「抜け駆けして模擬戦をしたお前が悪い」


「本音はそこか。そんなに言うならクロード卿と模擬戦すればいいじゃないか」


「立場を考えろ。3人揃ってクロード卿に負けましたでは外聞が悪すぎる」


「機会があれば是非お願いします」


「クロード卿はこう言ってくれているし今日のところは解散だ。仕事に戻るぞ」


3人の騎士団長はそれぞれ散っていき訓練に戻るように集まっていた団員達に促していた。




「クロード。アイリスとは会ったのか」


「いえ。まだです。姉とはいえ女性の住む寮に行くのは憚られるので」


「なんだ。そんなことか。わかった。俺はもうあがるしこのままアイリスを誘って夕食に行こう」


クラウス兄様と並んで学園の女子寮へと向かう。


クラウス兄様は女子生徒を捕まえるとアイリス姉様への伝言を頼んでいた。




クラウス兄様とその場で話し込んでいるとアイリス姉様が出てきた。


「クラウス兄様から誘ってくるなんて珍しいと思ったけどそういうことね」


「アイリス姉様。お久しぶりです。お元気そうで」


「久しぶりね。クロードは相変わらず可愛いわ」


「ありがとうございます」


「店はどうする」


「いつものお店でいいんじゃないかしら」


アイリス姉様を先頭に街を歩いていく。


目的の店は小ぢんまりとしていたが寮から近く使い勝手はよさそうだ。


店に入ると他にも学園の制服をきた生徒が何組か食事を取っていた。


「ここはお値段もお手ごろだし料理も美味しいのよ」


「楽しみです」


メニューを前にアイリス姉様が何か悩んでいる。


「アイリス姉様。どうしたのですか」


「せっかくの再会だから贅沢したいけど今月のお小遣いがね」


「そういうことならここは僕が持ちますよ」


「いいのかしら」


「これでも領主として色々儲かってますからね。クラウス兄様も遠慮は無用です」


「ここはクロードの言葉に甘えさせてもらうよ」


それぞれ好きなメニューを頼み料理を思う存分堪能した。




「アイリス姉様の言う通り美味しかったですね」


「また機会があれば一緒に食事しましょうね」


クラウス兄様とアイリス姉様と別れて宿屋に戻るのであった。

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