第129話

シルフィード皇国の襲撃を受けたものの被害はなく新都市建設は順調に進んでいた。


街はまだ完全には完成していないものの目端の利く商人が早くも貿易拠点として利用をはじめていた。


「建築状況も順調。他にも問題はないようですね」


「こちらはお任せください」


「それでは僕は王宮に呼び出されているのでいきますね」


クロードは転移魔法で王都へと飛ぶ。




「王都も久々だな。まだ時間はあるし貧民街の闇ギルドに移民のお礼を言いに行こうかな」


レック達の家に向かうとそこには新築の家が建っていた。


クロードは扉を叩いて反応を待つ。


「は~い。今開けます」


扉を開けたレックは少し会わない間に背が伸びていた。


「やぁ。レック。久しぶりだね」


「クロードの兄ちゃんか。入ってよ」


レックに促され家の中に入る。


「最近はどうだい」


「貧民街の治安はよくなったし。あんちゃん達の羽振りがよくなって食べ物にも困らなくなったんだ」


「それは良かったね」


「それは全部クロード様のおかげさ」


「ロビもいたんだね。移民のお礼を言いに来たんだ」


「俺達は金を貰って仕事をしただけさ。王宮からのお墨付きも貰えたしな」


「ロビ達の闇ギルドは後ろ暗い仕事はしてないんでしょ」


「そうだな。昔はやばい橋を渡ることもあったがこのところはしてない」


「闇ギルドだと知らない人が誤解するしこの際、斡旋所を名乗ったらどうだろう」


「なるほどな。上には話してみるぜ」


「まだまだうちの領地は人不足だから追加の資金も渡しておくね」


クロードはアイテムボックスから貨幣を取り出してロビに渡す。


「確かに受け取ったぜ」


「それじゃ。僕はそろそろ行くね」


「治安が良くなったとはいえ貴族様がホイホイ来るような場所じゃないな。行った行った」




クロードはレック達の家を後にして貧民街を抜けて露店のある辺りをブラブラする。


適当に冷やかしつつ一人の少女が目の中に入ってくる。


少女の周囲には護衛と思われる鎧を着た人々がいる。


少女の見ているのは宝飾品を扱っている露店のようだ。


近づいてみれば少女と護衛の声が聞こえてくる。


「嫌じゃ。このネックレスが欲しいのじゃ」


「ですが持ち合わせではとても足りません」


少女が欲しいと言っているネックレスは露天で売られるには不釣り合いな細かい装飾に大きな宝石がついている。


露天商を見ればこの国の人間ではないようで行商でたまたま店を出していたのだろう。


クロードは勇気を出して声をかける。


「お嬢さん。このネックレスが欲しいのですか」


「なんじゃ。そなたは」


「クロード・フォン・プロミネンス子爵と申します。お近づきの印としてプレゼントさせていただきたいのですがいかがでしょうか」


「妾はエリーゼじゃ」


こうして長い付き合いになる二人は出会ったのである。

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