第70話

屋敷にプロミネンス家の御用商人であるライハルトが訪れていた。


「侯爵様。お時間をいただきありがとうございます」


「何。いつも世話になっておるからな相談があるなら乗ろう」


「王宮に商品を届けなければいけないのですが、都市の建設に人手が取られて十分な護衛をそろえることができませんでした。何とかなりませんでしょうか?」


「こちらも人手の多くを都市建設にまわしていて余裕がないんだがどうしたものか・・・」


そこに暇を持て余したクロードがやってくる。


「ライハルトさんが来ていると聞いたのですが」


「クロード様。ご無沙汰しております」


「何か困りごとですか?」


「王宮に商品を届けなければいけないのですが護衛を揃えられなかったのです」


「王宮への商品って僕が頼んでいたものですね。無関係ではないですしそういうことでしたら僕が護衛につきましょう」


「なるほど。クロードなら適任か」


「侯爵様よろしいのですか?噂では最近王都との間に盗賊が出るという話ですが」


「クロードはそこらの騎士より強いしこの件については責任者だ」


クロードがアイテムボックスに入れて王都に飛べば全て解決するが、それではライハルトの仕事を奪ってしまうこととなるので却下だ。


「それでは僕は準備してきますね」


言うが早いかクロードは準備のために退室してしまう。


「本当に大丈夫なんでしょうか?」


「盗賊相手なら手も足もでんさ。何か考えがあるようであるしな」




準備を終えたクロードと共にライハルトは待機させていた商隊に向かう。


クロードは屋敷から馬を連れてきており騎乗した状態だ。


「会頭。護衛の件はどうなりましたか?」


「侯爵家も余裕がないとのことで断られたが、クロード様が護衛してくださることになった」


「クロード様ってどう見ても子供じゃないですか」


「今回の仕事の依頼者は侯爵様というよりクロード様だ。その責任者が直々に護衛につくというんだ。侯爵様の話ではそこらの騎士より強いそうだ」


「眉唾ものですが拒否権はないのですね。それでは出発の準備をいたします」


「任せたぞ」


ライハルトは馬車に乗り込み出発の合図をすると商隊は進み始めた。




荷物を満載した馬車はスピードを出せるわけもなくノロノロと進んでいた。


当然、盗賊達の目に止まることとなり標的としてロックオンされることとなる。


「お頭。護衛の数が少なくて数の多い獲物がやってきましたぜ」


「狩りの時間だ。いつもの場所でやるぞ。準備させろ」


盗賊達はわかっていなかった。


この商隊には化け物と呼んで差し障りのない人物が護衛として参加しているということに。

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