第4話
――数十分後。
変わらず怜美と手を繋ぎながら学校を登校していたのだが、周囲の視線が刺さりに刺さるまで手繋ぎ登校の違和感に気がつかなかった。
「なんだか視線……? はっ!? そういえば手を繋いで登校してんじゃん!」
「? なんか問題ある?」
「あるだろ! この時期の男女が手を繋ぎながら登校なんかしたら注目の的になっちまう! と、とにかくここいらで手は――」
「ん、ダメ」
「!?」
手を離そうとした途端、俺の手を握る怜美の握力が上がった。
怜美がこんなに握力を込めたのは一体何年ぶりだろうと、頭の中でF1並みのスピードで横切る。
「ダメ……。今日は私の言う聞く約束」
「うぐっ……。わ、わかったよ……」
先ほどの怜美の泣き顔がフラッシュバックして、断ることができなかった。
怜美の言うことを聞いて下駄箱まで歩いているが、周囲にわざと見せびらかしているような感覚がして気が気でなかった。
怜美はドがつくほどのめんどくさがり屋だ。しかし絶世の美少女ということまた確かだ。ゆえに、めちゃくちゃ目立つ。
「あの、怜美さん……?」
「なに」
「なんで繋ぎ直したの……?」
下駄箱に到着したら流石に手を離してくれた。スリッパに履き替えて教室に向かおうとしたのだが、また手を握られて歩く始末。
今までおんぶが普通だったため、手繋ぎでの登場がインパクトあるらしい。
「いうこと聞く約束、でしょ」
「いやそうだけどさ。なんで手を繋ぐ必要があるんだ……? いつもみたいにおんぶじゃダメなのか?」
「ダメ。……将来を見据えた必要なダラダラ禁……」
「ナニソレちょっとわかんない……」
なぜめんどくさいを禁止してまで手を繋ぐのかさっぱりわからなかったが、久々に握った怜美の柔らかい手に免じて目を瞑ることにた。
そして案の定、教室では質問責めにあった。
「なんで手ェ繋いでんだ!?」
「あの眠り姫が起きたまま登校だと!?」
「いつも寝てるか半目だから目を見るの貴重だな……」
「一体全体どう言う風の吹き回しだ!?」
「今日は槍が降るな……」
単純に怜美が起きたまま登校しているということに驚いている者と、とれたちが手を繋いでいるということに驚く者と、二つに割れていた。
しかも、それだけには収まっていなかったのだ。
「なんで膝の上に座ってんだ!?」
いつもなら一人で机に突っ伏して眠るはずなのだが、今日は俺の膝の上でウトウトしている。
まるで猫が日向ぼっこしながら気持ちよく丸くなっているかのように、怜美もどこか恍惚とし顔だ。
「俺にも……分からん……」
友達から質問ぜめされるが、俺は「分からない」の一点張り。本当にわからないからだ。
本人のみぞ知るが、当の本人はスースーと寝息を立てた寝始めてしまった。自分の席に座らせようにも、俺に抱きついて離れようとしない。
「(この体勢って絶対寝にくいよなぁ? なんで怜美はこの体勢で……。今朝のことが原因なのか?)」
長年怜美と連れ添ってきたからこそ、なにもわからなくなってしまった。
###
―怜美視点―
「(……恥ずかしいけど、嬉しいかも……)」
昨日今朝とで、私の使用人的位置にいたゆーすけは本当は大事な人だった……というか、す、好きな人ってことが再確認できた。
それを意識してから、いつもの距離が少し恥ずかしくなった。けどやっぱり怠惰にはいい勝負をしてる。
ゆーすけにおんぶされるのは安心する。手を繋ぐのは全然安心しない。ドキドキする。けど嫌じゃない。
下駄箱で一回手を離された時、昨日みたいな嫌な気持ちになった。できるならずっと繋いでいたい。ゆーすけに離れないでほしい。
「すー……」
今はゆーすけの膝の上で狸寝入りをしている。周りから見られていることを除けば、これはなかなか幸せ。
自分の部屋に抱き枕はあるけど、今度からゆーすけに代わってもらおうかな。……でも、寝れなくなっちゃうかもしれない……。
「よっす優介! 今日はやけに眠り姫と距離近いな〜!」
目を少しだけ開けて、声の主を確認する。
この人は確か……ゆーすけに付き纏うクラスメイト。ゆーすけは友達とか言ってるけど、チャラチャラしてるから嫌い。
「あぁ、なんか急に距離が近くなってな」
「ヒュ〜☆ 前までは主従関係みたいだったけど、今じゃあなんかバカップルみてぇだぜ!」
「はぁっ!?」
か、カップル……! ……誰かに取られたり
、どこかに行かせない為にひっついてたけど、それはそれでいいかも……。
少し口元が緩むが、顔をゆーすけに押し付けているからバレない。ゆーすけの心臓もさっきよりドクドクして焦ってるみたい。……可愛い。
自分の気持ちとか、ゆーすけの反応に満足したら一気に眠くなってきた……。昨日はよく寝付けなかったから、今はよくねれそう……。
そうして、狸寝入りから本当に眠ってしまった。
[あとがき]
今は他の作品に熱が入っているので不定期投稿になるかもしれません。☆や感想で創作意欲が湧くので助かってます!
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