ΣΧΕΔΙΟ ΕΠΙΝΟΙΑ
@Pz5
1. Παραδεισος
水滴が滴る。
混沌が受止め、暗黒に光る。
水面が揺れる。
波紋が同心円上に広がる。
波紋は硝子の壁に当り、少し後退し、後から来た波紋とぶつかり増幅し、その次の波紋とぶつかり減衰すると、次の衝突で対消滅する。
止水。
鼓動音が聞こえる。
滴り、広がり、止まる。
その都度波紋が揺らめく。
波紋を歪ませる人工管。
それは水滴の着水点の横を通り、混沌の羊水の中へと潜って行く。
その先には、精一杯の鼓動で分裂と構築の繰返しを行う肉の塊。
その形はまちまちで、次なる環境への多様性に満ち満ちている。
光る暗黒を閉じ込めた硝子の殻の培養装置。
その数360。
それらは同心円上に並べられ、中央から一目で見える様に配置されている。
その中央にはAとΩの大本が立っていた。
「ほら、ご覧。僕達の子供は順調に育っているよ」
Αの大本は男の声でそう告げた。
「気持ち悪い言い方、しないでくれる?」
Ωの大本は女の声でそう告げた。
「え?でも『この子達』は、僕と君、『ソフィア』が選んだ最高の遺伝子組合せのパターンからできているのだから、事実『僕達の子供』だろう?」
Αは各培養装置の数字を眼鏡に反射させてそう告げる。
「『ソフィア』が選んだのは次の惑星に移住する際にそこで予測される環境に親和性を持ち得るであろう範囲内に於ける遺伝子的多様性が最大限になる可能性の高い組合せであって、そこには『人間性』の相性の良さは含まれていないの、今スゴく実感しているわ」
ΩはΑの方を向きもせず、周囲の培養装置を見渡しながらそう告げる。
肉塊達は羊水の中で眠りながら踊る。
思い思いに多様な肢体を揺する。
その眠りは深く、微睡みは果てしない。
「でも、遺伝子的に相性が良いなら、少なくとも『肉体的』にも相性は良いはずだろう?」
ΑはΩの方に顔だけ向けるとそう告げる。
「演繹的には、ね」
ΩはΑを見ずに言葉を紡ぐ。
「それに、その『相性の良さ』は『次の居住可能惑星の環境』と言う
Ωはそのまま「我が子達」を見てそう告げる。
「帰納的実証試験はまだしてなかったね」
ΑはΩの金髪に反射する暗黒の光を目で追いながらそう告げる。
「地球環境下であなたと遭わなくて、本当に良かったわ」
ΩはΑの視線を避けながらそう告げる。
「とりあえず、私はまた冷凍睡眠に入るから、あなたも記録作成と送信が済んだらお休みね」
Ωはそう告げると「床」を蹴り、「天井」まで跳ぶと手すりを取り、体を縦に回転させると「天井」から「床」に変わった所にある疑似重力区画のハッチを開ける。
「『産めよ殖えよ地を満たせ』は僕等の
ΑはΩが跳んで行った方を見てそう告げる。
ここでΑとΩの視線が合う。
暗黒の光が絡み付く。
無限に供給される栄養素と快適性に最適化された湿度に温度の疑似地球環境。
生存への一切の不安は無く、一切の迷いも無い。
ただ、
次の天地へと生命を渡す
「もう、ここに360体も居るでしょう?」
Ωは「天井」から実験区画の壁に疑似重力で押付けられた培養装置を見てそう告げる。
壁は「次の惑星」の重力に近い速度で回り続けている。
ΑはそれでもΩを見つめる。
「それじゃ、亜光速とはいっても、次に起きるのは『数年後』になるでしょうから、それまでお休みなさい」
ΩはΑの視線を無視して、そう告げると疑似重力区画へと繋がるハッチの中へと入っていった。
ハッチはロック状態を表示すると、そのまま開く事はなかった。
Αはそのハッチをただ見詰めている。
水滴が落ちる音と鼓動音、駆動音だけが無間に鳴り響いていた。
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