超神可愛天使ちゃんに好かれた話

りんごかげき

第1話

 うう、胸が痛い……。


 人前に出るといつも具合が悪くなって、倒れ込んで丸くなりたくなる。


「大丈夫? 千くん」


 僕のことを千くんと呼ぶ、この少女のことを超神可愛天使、略してジンちゃんと呼称する。

 しかし、僕以外がジンちゃんなどと呼ぼうものならそいつは爆砕する。たぶん、復活させてくれると思うけど。


 ジンちゃんは白い髪に水色の瞳をした、この地球上で一番強い生命体だ。ジンちゃんの言うことは絶対。

 彼女はふつうの家庭に生まれたごく普通の女の子だったけど、時間が経つにつれてだんだん人間離れした力を持つようになっていった。詳細は不明。ただ超絶可愛いのでSNSにはすげえ桁のフォロワーがいる。


「ジンちゃん……、体調が悪くなってきた……。夏休み明けの学校だから……」

「具合悪そうだね千くん。大丈夫だよ、わたしがそばにいてあげるから。具合悪そうにしてる千くん最高に可愛いよ」

「可愛くない……」


 ジンちゃんはにっこり笑って、握ったままの僕の手をゆらゆらする。僕たちはこれから学校にいく。帰りたい。つく前に帰りたい。帰ってSNSのインプレッションを稼ぎたい。まだ全然稼げてないけど。


「千くん。吐きたいなら吐いていいんだよ。ほら、わたしの手に」


 ジンちゃんはそう言って、両手のひらを僕に向けてくる。あまりに白くてきれいな手で、僕はますます頭痛がひどくなる。


「ジンちゃんの手に吐いたら殺されるよ、僕……」

「ダメだよ。そんなことしたら、わたしがこの世界にいる人たちを滅亡よりも酷い目に遭わせるよ」


 ジンちゃんはにっこり笑っている。超神可愛い……。けど言ってることがえげつなくて、ますます船酔いみたいにぐらぐらしてくる。


「吐きそうな千くん可愛いよ。結婚しようね……」


 ジンちゃんは僕を抱きすくめる。ふんわりと神々しい存在に包み込まれて、一瞬この世界が嘘だったかのように錯覚してしまう。嘘だったらそれはそれで最悪でしかないんだけど。


「吐いていいんだよ」

「吐かねーよ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る