悪役貴族に転生した僕は自身の死亡フラグを物理的に折るために最強となり、婚約破棄された令嬢を拾ったりハーレムを作ったりと好き勝手生きたいと思います!

リヒト

第一章

第1話

 蒼天に輝く青い太陽と赤き太陽の下。

 巨大な葉っぱのうちわで仰がれ、心地の良い足と肩のマッサージ受ける僕は甘ったるい異性の匂いに包まれながら目を細めていた。


「アルス様。お飲み物にございます」


「うむ」

 

 自分の前に出された飲み物で一口だけ喉を潤した後、僕は視線を自分の前にいる少女の方へと視線を送る。


「それで?如何用か?」


「以下用か?じゃないのよ!まずはそれを辞めなさい!それを!」


「はて?余は何もしていないのだが?」


「それが問題なのよ!何を侍らせているのよ!ふ、ふ、不潔よ!不潔!」

 

 目の前の少女は僕の方へと指をさしながら声を張り上げる。

 少女に指差される僕は今、ほぼ全裸と言えるほどに肌の露出の激しい服に身を包む女性たちに囲まれ、最高位の接待を受けていた。

 巨大な葉っぱのうちわで仰がれ、足のマッサージを二人体制で受け、肩のマッサージまで受けている。

 それだけでなく僕に飲み物を渡すためだけの女性までいた。

 

「はて?余の常であるが?」

 

 超絶接待状態、スタイル抜群の可愛いお姉さんたちに囲まれ、良い匂いに包まれている今の僕であるが、これは今日だけが特別というわけではなく、僕の日々は常にこのような感じであった。


「それが悪いと言っているのよ!」


「何が悪いというのかね。貴族は貴族として浪費する義務もあるのだぞ?」


「使い方が悪いって言っているのよ!それに無理やりそんな肌を出させるのはダメよ!」


「ロロアよ。嫌かね?」

 

 僕は自分の隣にあるサイドテーブルに平積みで置いてある金貨を一枚取り、それを自分の隣に立っている女性が持っている飲み物が置かれているお盆へと金貨を一枚乗せながら尋ねる。


「いえ、そんなことはありません。アルス様にお仕えさせてもらっていることに私は至上の喜びを感じております」


「とのことだ」


「わいろじゃない!?」


「それの何が悪いのかね?金は天下の回りものぞ。余が受け取る者は問題もあるが、下々の者が余より金を貰うのはさほどの問題ではない」

 

 僕は少女の言葉に対して気丈に返す。


「いや、普通に駄目よ!?良い加減、アルスは私の婚約者ってことを自覚してよぉ!いつまでも女を囲むのでなく!」


「何故、汝にそんなことを言われる必要が?」


「むぅ!!!もう!!!こんなんだからいつも落ちこぼれって言われるのよ!」


 少女は僕に対して怒りを露わにする……いや、ごめんね?

 僕はそんな少女に対して内心で謝罪する。

 明らかに悪いのは僕であるのだが……とは言っても、今更辞めることは出来ないのだ。

 この行為も決して無意味というわけではない。

 

 僕が囲っている女性、うちの家に仕えているメイドたちは各々の事情によって大金を必要とする人たちだ。

 僕はあえて彼女たちを侍らせ、雑用を強いる中で金銭を渡している面がある。

 今さらこれを辞めるのは彼女たち懐事情に深刻な問題を発生させることになるだろう。

 転生者としての記憶を持つ前の僕が意図的か、それでも気まぐれかに行ったことなので、色々とツッコミどころある行為ではあるが、それでも今更辞めることも出来ずにズルズルと来て今があるのだ。

 

 婚約者である少女には申し訳ないが、それでも許してくれ。

 まぁ、少女には僕を好きになる理由もないし、共に過ごす婚約者としての関係が表面上のものであるのが嫌なのかもしれないが、我慢してくれ。

 裏で君が何をしていようとも僕は深掘りするつもりないから。


「これ以上つまらぬ押し問答をするつもりはない。去れ」


「……アルスのばかぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!」

 

 僕の言葉を受け、少女は僕のいる部屋から飛び出してどこかへと走り去っていってしまう。


「はぁー」


 少女が……僕の婚約者であるヘラ・ローエングリントが部屋を飛び出していったのを見て僕は深々とため息をつく。


「あまり、気を負わないでください。アルス様」


「気を落としてなどおらぬわ。もとより悪いのは余であろう」


「……我々が、ご迷惑をおかけいたします」


「迷惑など思っておらぬわ。汝らの献身も、その美貌も、匂いもすべては素晴らしき者であるからな」


 役得です。

 いつもご馳走様だと思っています。僕に生殖能力があったら確実に襲っていただろう。性的に。

 むふふ、僕は内心で下衆い考えを回しながらもポーカーフェイスは崩さず真面目な態度を取り続ける。


「ふむ……にしても、いつまでもヘラを無視するわけにもいかぬよな」

 

 ヘラ・ローエングリント。

 彼女は僕の生家であるラインハルト家と同格の侯爵家であるローエングリント家の長女であり、次期ラインハルト侯爵家当主最有力候補である僕の婚約者である。

 

「ふぅー」

 

 前世の僕が生きていた日本でリリースされていたソーシャルゲーム『究明の箱庭』。

 リリース当時はあまり話題にならなかったゲームではあるが、とある人気Vtuberが取り上げたことで一気に話題になったゲームだ。

 僕も自分とは違って優秀で一流の研究者として海外で活躍する実の姉からおすすめされたことでプレイしていたゲームである。

 

 本作はかなり癖のある主人公が世界で無茶苦茶やる物語である。

 大まかなストーリーは王族として生まれながらに恵まれた男がヒロインを攻略しながら突然人類に対して宣戦布告し、戦争を始めた魔族の頭である魔王を倒すというものだ。

 

 本作品の魅力は細部まで練りこまれた設定の緻密さとグラフィックの良さに楽しめるゲームシステムに個性豊かなヒロインたちだ。

 ……え?主人公についてはどうなのかって?頭悪いとしか思えない行動を勝手にしだすのである意味ネタにはなっていたよ。

 

 この作品を一言で表すと主人公の珍行動とヒロインの圧倒的な可愛さが売りのゲームであり、ヘラ・ローエングリントもヒロインの一人なのだ。

 ヘラは略奪愛をテーマとしたヒロインであり、プレイヤーへと婚約者のいるヘラを主人公を使って落としていく楽しさと背徳感を提供しているキャラである。

 恥じらいながらも徐々に主人公へと靡いていく彼女の姿にはプレイヤーとしてなかなかそそるものもあった。


 ちなみにラインハルト侯爵家の長男として生まれ、ヘラの婚約者であるアルス・ラインハルト……残念なことに前世においてサクッと死んでしまった僕が転生したこのキャラは悪役として登場するキャラである。


 まさか、自分が二度目の生を受け、なおかつゲームの世界の悪役貴族に転生するとは思わないよね。

 どうせならもっといいポジションのキャラに生まれたかった。

 悪役として死ぬキャラではなくて。


「アルス様、さっきからぼーっとなされてどうしたのですか?」


 前世のことを考えていた影響でぼーっとしていた僕を前に自分の傍らに立つ女性が声をかけてくる。


「あぁ……何でもないとも。心配することはない」

 

 僕はそんな女性に対して安心するように声をかけた後、体を動かす。

 将来的には悪役キャラとして死ぬこととなる僕であるが、だからと言って無抵抗で死ぬつもりはない。

 自分なりに最大限この世界の流れに逆らうつもりである。


「余は少し動く。余の帰還までに夕食の準備を済ませておけ」


「承知いたしました」

 

 僕は簡単な命令を下した後、立ち上がるのだった。

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