第22話 マッドサイエンティスト
薬品開発や、実験に許可が降りた蒼は自分の思うがままに研究をしていた。
研究や、勉強をここでは許可しているらしい。なぜなら出所した後に職に困り、
またここに戻ってこられても困るからだという。
前科がついた人は周りと同じ力量を持っていても職に就きにくい。
なので勉強や、研究、自分の能力をどううまく使えるかが周りと差をつけられるようになり、それがここに戻ってこないための必要事項なのだ。
なので蒼はまたここに入ってくる前と同じ仕事をしたいため、外に出たときに現在の薬学の知識に遅れを取らないよう研究や勉強をしているらしい。
なんなら外よりも進んでいる気がするけど。
「僕の作った毒薬の効力を確かめてほしいんやけどええ?」
そしてたまに俺に実験体になるよう頼んでくる。
「無理無理。だって血液検査されるし」
「そこを何とかお願いでけへん?」
「ほかの人に頼めよ...」
「瑠樹にお願いしたら殺されかけたんやんな」
「よりにもよって瑠樹になぜ頼む?」
「そこにおったから」
「そこに山があるから的なこと言うな」
「そないに断られるとやっぱご飯やらに盛ったほうがええんかいな」
「...お前なに怖いこと言ってるんだよ」
「だってそうでもせんと飲んでくれへんやん」
「...じゃあ動物とかは?」
「おれへんやん...あそっか瑠樹の蛇に毒薬頼めば...」
「それこそほんとに殺されるぞ」
「そっか。ほなどないしよう」
「毒薬以外はないのか?」
「回復薬ならあるで」
「それならいいぞ」
「え、それでええの?やった!」
「そっちのほうがどう考えてもいいだろ」
「だってけがしてもらわなあかんから、そっちのほうが嫌か思うとった」
「そのぐらいなら平気だよ。で、けがの規模は?」
「切り傷でも、かすり傷でもええで」
「結構小規模じゃん」
「でも...まぁええか」
「まぁそのぐらいなら協力するぞ」
「ええのか!?おおきに」
「うん。それぐらいならいいよ」
「ほなじゃあこれけがしてから飲んでみて」
「いいよ」
そう言い、俺は軽く切り傷を作り回復薬を飲んだ。
すると何とも言えないまずさと、耳鳴りが襲った。
「う...」
「...けが治ってへんな。失敗したかも」
「え、マジかよ...」
「いけるか?」
「やばいかも...」
「あ、治ったわ」
「なんでやねん...」
「そりゃ危ないと思ったら無効化始めるだろ」
「てか失敗ってなんだよ」
「いやこれ開発途中の薬やさかい、今どんな感じなのか気になってなぁ。
それに回復薬の失敗作って大体まずうて、相当な代償いるからさ...」
「それを先に言えよ...このマッドサイエンティストが」
「え、君僕の事そんな風に思うとったん?」
「毒薬と言い、この失敗作と言い、人を非検体にすること自体マッドサイエンティストのすることなんだよ」
「そんなせっしょうなこと言わんでも...」
そういうと、蒼はしょぼんとしたそぶりを見せた。
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