第19話 見つかった部屋

 「やばいやばい助けてや」

俺が蒼の実験室でここなら人のにもばれないからと勉強系の本を読んでくつろいでいると蒼が助けを求めてきた。

見ると蒼以外に瑠樹と鈴もいるではないか。

「どうしたんだ?そんなに慌てて…」

「見つかったかもわかれへんのや。ここが。」

「どうして?」

「わしが知れへん間に鈴が勝手にここ入ったみたいなんやけど、周りに人がおるのを

確認せずに入って、それが茶髪の看守にばれたみたいなんやんな」

「ほかにどんな見た目だ?」

「確か緑色の目だった」

と鈴が答える。

「...」

 俺は少しフリーズする

「そいつと目が合ったか?」

「バリバリ合っちゃった」

「やばいな...てかなんでその状態でここ入ったんだよ」

「だってその時は大丈夫だと思ったんだもん」

「そいつに心当たりがあるのか?」と瑠樹が聞いてくる。

「ある。とっても厄介なやつだった」

「ホンマか?どんな奴やねん?能力は持ってるんか?持っとったらどんな能力なのか?」

「なんかうそ発見器って言って嘘をついているのを見抜ける能力だった気がする」

「なかなか厄介やな」

「そうなんだよ。それで前鈴が脱獄に成功したのにそのあとの話を言っちゃって...」

「まぁまぁあれはそれを見越して嘘を教えたからね。全然大丈夫だよ」

「俺舐められてる気がする」

「違うってば」鈴が強く否定する。

その時外から看守たちの声がした。俺らはすぐに物音を立てないようにしながら

「どうするんだよ」と小声で口々に話す。

「外から聞こえる声は誰や?」

「声からして、3人はいるな」と瑠樹が不安をあおるように言う。

「僕肉弾戦無理やで」

「できるできないんじゃない。やるんだよ」と鈴が非難する。

 しばらくすると物音は消えて、声も静まった。

「いなくなった?」

「いや、帰るときの足音が聞こえへんかったような気ぃする」

「確かに」

「罠かもしれない」

しばらくするとチッっとしたうちの音が聞こえ、去ってゆく足音がした。

「...しばらくここに来るんはやめたほうがええんちゃう?」

「そうだな」

そう言ってここを出ると目の前に監視カメラ的なものが置かれていた。

「...」瑠樹がそれを見て止まる。

そして次の瞬間とても大きな音を出してそれを蹴り、壊した。

「...それ壊してもうていけるやつなん?」

「この世にはばれなきゃ犯罪じゃないって素晴らしい言葉がある」と言って笑った。

「ま、まぁ早くここ離れようよー」と鈴が驚きを隠せないまま言った。

「そ、そうやな」

そう言って蒼とは別れ、雑居房に戻ると待ってましたかのように海良と白井がいた。

「うわ今一番合いたくないやつランキング一位と二位がいるわ」と瑠樹が後ずさりしながら言う。

「待て動くな。とりあえず海良に実際に部屋に入ったところを見られた鈴とカメラ壊した瑠樹はこっち来い」と白井が威圧感を出して言う。

「こっち来いって言ってくる奴がいんのか?」と瑠樹が

「今なら軽くしてあげるよー?」と海良が言う。

それを聞いて鈴が少し悩んでいるような顔をした。

「絶対そっち行くなよ」と俺が言うと

「わかってるよ」と返してきた。

「ちなみに蒼のほうには星灯くんが言ってるよ~」

蒼は星灯にあったことはないし、どんな奴か知らないから負けてるかもしれない。

俺はゆっくりと来た道のほうに後ずさった。そして蒼がいる部屋のほうへ走った。

「あ、逃げた」

「お前がしっかり見てないからだろ」

「別にこいつを見てろなんて言われてないし」

「お前仕事しろよ」

と海良と白井がけんかしている。どうやら犬猿の仲らしい。

確かにまじめな性格の白井と少し不真面目な性格の海良とは馬が合わなさそうだが。

とりあえずそこがもめている間に俺は蒼のほうへ走り、鈴がどこか隠れる場所を探すように逃げて行った。瑠樹はというと二人の観察をしている。

そして喧嘩しながら白井が鈴を追い、海良が瑠樹を雑居房に入れてから、俺を追いかけるという針方になったようだ。

だが瑠樹が二人の足止めをする。

「二人を一人で抑えるのはきついんじゃない?」と海良が言う

「お前ら仲悪いし、コンビネーションも悪いからお前らこそ無理なんじゃねーの?」

「へぇそんなに自信があるのか。じゃあその自信折ってやる」と白井が怒りを出して言う。

「おい、白井」

「なんだ海良」

「俺がこいつの足止めするからお前あの女追えよ」

「確かにな。こいつ一人にかけてる時間はない」

「じゃあそれで」

そう言ってその間にいつの間にか白井は消えていた。

「チッ、あいつのほうへ走り去ったか」

瑠樹が舌打ちをし、海良のほうへ向いた。

「言っとくけど大人しくすればただ単にお話聞いて終わるんだけどな」

「みんなにか?」

「うーん蒼くんは無理かな」

と海良が答える。

「じゃあ駄目じゃねーかよ」と瑠樹が警戒する。

「まぁまぁ、おとなしくしよーよ」

「無理だね」

瑠樹がそういうと、海良はにやりと笑った。


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