第105話 ハリウッド決戦 その4
今日は3話に分けての更新のため、
この話の前に103話と104話があります。
読み逃している方はそちらからお読みください。
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〔無駄ダ、"ドラゴン程度"ガ食イ下ガロウトモ〕
「……クッ」
銀のドラゴン──リウは肩で息をしつつ、キングから少し距離を取る。
直接攻撃も、光線のブレスも、全身のウロコを利用した奥義も何もかもキングには効果が無かった。
どれだけ直撃させようとも、その獅子の顔はいっさい歪みはしない。
「やはり、此の世の理の中でお前に勝つなんてのは土台無理な話というワケか……!」
〔勝チ負ケ以前ノ問題ダ。我ハ"世界"デアリ"コノ世ノ理"デアル〕
「……相変わらず気に喰わないヤツだ。お前が目覚めたのもその"理"とやらを正すためか? この世にあらざるほどの力を持つレンゲを殺すことによって」
〔ソウダ〕
獅子の首を動かしもせず、キングは答える。
〔アレノ存在ハ我ガ理ノ外ニアル。我ガ理ノ内ニ不要ダ〕
「フン、勝手にこの世にダンジョンを作った
〔気ガ済ンダノナラソコヲ
キングはリウの皮肉を気にする様子もなく、高層ビルへとその獅子の眼を向ける。
〔生キテイルノハ知ッテイル。庇ッテモ無駄ダ〕
「庇う気なんて別にない。そして退くのは一向に構わん」
リウは翼を大きくはためかせると、キングの道を開けた……
が、しかし。
「だが、別にお前から足を運ぶ必要はないだろうな」
リウは不敵に微笑んで言う。
「もう経ったんだよ、1分が」
直後、後ろの高層ビルから膨大な魔力の波動がリウの右肩に向けられて照射された。
それ自体に攻撃力は無い。
しかし、
「──お待たせ、リウっ!」
それは"魔力の道"だった。
レンゲの声がリウの耳元で聞こえる。
ついさっきまで高層ビルに居たはずのレンゲが、一瞬にして、いや0秒でリウの右肩へと乗ってきていた。
「用は全部済んだのか、レンゲ」
「うん、滞りなく!」
とてもスッキリとした声と表情でレンゲは頷いた。
「……で、なんだ、今のは?」
「えっ? えっと、魔力と私の体を置き換えたというかなんというか……詳しく説明はできないや。ナズナは"りょーしろん"とか"りょーしのねじれ"がどうとか言ってたけど」
「ソレがレンゲの言っていたキングを倒す術か?」
「えっとね……」
レンゲが答える前に、しかし。
〔ヤハリ貴様ハ必滅ニ値スル、レンゲ。貴様ノ"力"ハコノ世ヲ混沌タラシメルノニ邪魔ダ〕
キングが翼を広げ、敵意に満ちた眼をレンゲへと向ける。
〔肉体ノ"量子テレポーテーション"……人ノ身デソレヲ実現ノ域ニ持ッテイクトハ驚嘆ノ極ミ。ダガ所詮、物理法則ノ域ヲ出ハセヌ〕
キングの両翼から辺りへと波のように黄金色の魔力が広がっていく。
そしてその魔力が渡った空間に星々の輝きが満ちる。
〔レンゲ、貴様ノ種ハ割レテイル。小宇宙ノ創造ニヨリ得ラレル無限ニ近シイエネルギーデ、机上ノ物理的理論ヲ実現シテイルノダロウ? ソノ程度ノコト、コノ世ノ理ヲ治メル我ニモデキル〕
「……zzz」
〔寝ルナッ!!!〕
「……ハッ!」
リウの肩の上でこっくりこっくりと舟を漕ぎ始めていたレンゲは目を覚ますと、
「理由とかは色々説明されても分からないけど、私のことを殺したいって思っているのは分かったよ。それに、"きんぐ"が強いってことも。普通に殴っても効かないし」
そう言ってその拳を固く握る。
「だからもう手加減はできない。私も本気で、"殺す気"でやるからね」
ゾッと。
レンゲを肩に乗せるリウの背中に鋭い冷気が走る。
この時点でリウだけだった。
リウだけが気づいていた。
レンゲが体に纏う魔力の質が、これまで感じたことの無いほどに濃密なものへと変化し……
……いや、魔力?
本当にコレ魔力か?
オイオイオイオイ!
なんだコレっ!?
リウはドラゴン形態ではかくはずのない汗をその額に流した。
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