第92話 アジア予選結果と知恵熱
~ネットニュース速報~
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-- アジア予選結果発表
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1位 RENGE (日本)
レコード 0:04:45
2位 AKIHO (日本)
レコード 0:07:02
3位 ShanShan (日本)
レコード 0:07:13
3位 FeiFei (日本)
レコード 0:07:13
5位 G・T (中国)
レコード 0:10:36
・・・5位以下略
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途中棄権者
・M_Choi (韓国)
・RIOT (韓国)
・BooPhaaa (韓国)
→3名、ケガのため
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失格者
・LiU (韓国)
→故意の他選手への攻撃のため
* * *
「……う~~~ん」
アジア予選、そしてナズナの卒業式の翌日。
私は自宅で寝込んでいた。
「うううううぅぅぅ……頭痛いよぉ、頭熱いよぉ、眠いのに寝れないよぉ……!」
「ヨシヨシ。寒ピタ変えるわよお姉ちゃん」
お布団に横になる私の隣で、膝を着いてナズナがペリペリと寒ピタのフィルムを剥す。
そうして私のオデコにひんやりとしたそれをペタリと張ってくれる。
気持ちいい……
ピピピッと。
ナズナの"すまほ"から電子音がなる。
「熱は48度か……高いわね」
私の脇の下から水銀式の温度計 (体温計ではない)を取り出してナズナは言った。
「お姉ちゃんじゃなきゃ死んでるわ。やっぱりRE・SIMも考えものね」
「うぅぅぅ……」
「まあ賢いお姉ちゃんなんてお姉ちゃんじゃないし、今後は封印ね」
「おなか、空いた……」
「そう、胃腸が元気なら治りも早いわ。おかゆ食べる?」
「おにくと、ばなな……」
「はいはい、お肉とバナナね」
ナズナは私の頭をヨシヨシと (それが気に入ったかのように)何度も撫でながら、クルリと後ろを振り返り、
「そういうわけで"居候さん"、買い物よろしく頼めるかしら」
韓国語で、部屋の片隅で膝を抱え込むようにして座っていた少女──リウへと言った。
「……な、なんで我が」
応じたこちらも韓国語である。
サラリとした長い銀髪を"へなっ"と床に付け、銀の眉を八の字にして西洋人形のごとき端正なその顔をムッと歪めている。
まごうことなきアジア予選"元"韓国代表のLiU選手だった。
なぜリウがウチに居るのか。
それは……アレ。
アレだよ……アレ。
アジア予選大会が終わったあと、韓国政府のお偉いさんが私たちの元にやってきて……
『どうかこの件は秘密に』とかなんとか……
あと『もうウチじゃ制御できない』とかなんとか……
……ああ、頭がボーっとする。
なんにも考えられない。
とにかくリウは私の側で暮らすことになったんだ。
「ばなな……」
「ほら、お姉ちゃんがバナナって言ってる。買ってきなさいよアンタ。バナナを」
「だからなんで我が買いに行かなくちゃならないのだとっ!」
「うぅぅぅ……」
耳がキンキンする。
あまり叫ばないでほしい。
「リウ、アンタ居候なんだから買い物くらい行ってきなさいよ。それともまさか異国の地が怖くて買い物に行きたくないのかしら」
「フンっ、安い挑発だな。そんなものにこの我が……この偉大なる光滅竜が乗るとでも?」
「……あっそう。別にアンタが行かないなら私が行くでもいいけど。忠告するわ。お腹を空かせたお姉ちゃんは何でも喰うわよ。偉大なるドラゴン様は非常食代わりになりたいのかしら?」
「…………クッ!」
リウは苦汁を舐めたかのように表情を歪めると、立ち上がってドアへと向かう。
「いつか……いつかきっと、この偉大なる光滅竜をパシらせたことをいつか後悔させてやるのだからなッ!」
「あ、ヨーグルトとハチミツもお願いね」
「ガーッ!!! わかったよクソが!!!」
バタンっ!
ドアが閉まる音が響く。
「う、うぅ……リウは……?」
「偉大なる光滅竜様はエコバッグ持って買い物に出かけたわ。バナナはもうちょっと待って」
「うん……」
それから私はまたひとしきりウンウンと唸って、
30分間隔くらいで寒ピタを変えてもらって、
リウの買って帰ってきてくれたバナナ、
ハチミツヨーグルト、
そしてお肉をペロリと平らげて、
夜の9時くらいには38度まで熱は下がった。
この調子なら明日には元気になれるだろう。
「ふぅ、よかったぁ……」
「1日で体温10℃下げるとか、やっぱ人間じゃないよ貴様……」
リウがあり得ないものを見る目で私を見て、ため息を吐いた。
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