第81話 ドラゴンと戦ってみた その5
『"既視感応型無意識による現象波捕捉とそのイメージ化"……その説明の前に、みなさんは緊急地震速報の仕組みをご存じでしょうか?』
ナズナの問いに、当然私は首を横に振る。
FeiFeiちゃんたちも首を傾げていた。
一方のAKIHOさんは、
「確か揺れが起こる前兆の地震波? のようなものを地震計がキャッチして、それによって地震の大きさを予測する仕組みじゃなかったかな?」
『おおむねAKIHOさんの仰る通りです』
ナズナは頷きつつ、
『具体的に地震波にはP波とS波というものがあり、P波はとても揺れ幅が小さい分、揺れ幅の大きなS波よりも速く地震計にキャッチされます。このP波の分析結果から、その後に来るS波の大きさを予測して伝えるのが緊急地震速報なんです』
「なるほど……それで、今の地震波の例がさっき最初にナズナちゃんの言っていたワードと関連していると考えていいのかな?」
『さすがAKIHOさん。話が速くて助かりますね……まあつまるところ、お姉ちゃん以外の全ての現象が"P波"で、お姉ちゃんの五感全てが"地震計"のような関係性なんです』
ナズナは続けて、
『お姉ちゃんはあらゆる現象の"起こり"をP波として受け取ると、それを無意識下で自身の戦闘経験と照らし合わせて分析し、その先で起こるだろう未来を予測できるんです』
「それって……高度な演算処理がレンゲちゃんの中で走っているってことっ!?」
『そういうことになります。未来視ではなく、99.9%の精度の論理的な未来予測をリアルタイムで受け取って自身の中で映像化しているようなものです』
「……めちゃくちゃすごいことなんじゃない、それ? 実質未来視ということになると思うし、色んなことに活用できるんじゃ……」
『ですね。だから研究中ではあります……ただまあ、姉のソレは戦闘にしか活かせず、他の事象に対しての再現性が無いのが"玉に
「……zzz……zzz」
『おねーちゃんっ!』
「……ハッ!」
いけない。
またいつの間にか深い眠りに就いていたようだ……。
ヨダレが垂れそうになっている。
これは動画に載せられない!
『このように我が姉は戦闘以外はてんでダメですので。宝の持ち腐れです』
「も、持ち腐れ……? ナズナ、私が寝ている間にいったい何の話を……?」
なんだか酷いことを言われていた気がするよ?
AKIHOさんたちも「なるほど……」と言って頷いているし。
『別にお姉ちゃんの悪口は言ってないわよ。つまり、お姉ちゃんは決して未来視を持っているわけではないけど、その行動の根拠となっているモノの信頼性は高いから、みんな安心してそのカメレオンに挑んで大丈夫ってことが言いたかったの』
「な、なるほど……?」
正直、分かったような分からなかったような……。
でも結局、私としてやることは変わらないか。
「3人とも、未来視とかなんとかの理由は私には分からないけどナズナが
「う、うん! ありがとネ、RENGE。私もNAZUNAの話はよく分からなかったケド、謎の説得力はあったヨ!」
「RENGEちゃんってやっぱりすごいなぁ……! 戦闘の天才って感じですごくカッコイイ……!」
私の言葉に、FeiFei・ShanShanちゃんたちは思い思いに納得してくれたようだった。
「AKIHOさんはどうです……? 私の、未来視ではないみたいですけど、信頼して後ろを任せてもらえますか……?」
「そんなのもちろんだよ。それどころか未来視よりもよっぽど信頼できそう。だって他の誰でもないRENGEちゃんの戦闘経験が元になってる予測なんだもん」
「ホントですかっ? それならよかったです……!」
そうこう話している間に、カメレオンは全ての傷を回復し終えたらしい。
後ろで立ち上がり、こちらの様子を窺っていた。
「それではみなさん、私は後ろで消毒銃を構えて待機していますので……時間が許す限りカメレオンに挑んじゃってくださいっ!」
──その後1時間、私は計6回カメレオンのことを完全無力化し、7回目の挑戦で最大限に研ぎ澄まされた魔力運用を見せたAKIHOさんたちによってカメレオンは討伐された。
30分休憩した後、帰り道は上り坂ということもあったので地下20階層までは私が3人を肩と背中に乗せて1時間ちょっとで運んで上がり、
みんなで合意の上で20階から地上までは体力づくりのためのマラソンをして上った。
そんな経験を私はあまりしたことがなかったので楽しかったけど、後日聞くところによればFeiFeiちゃんたちは筋肉痛で年の瀬直前まで寝込んだらしい。
電話で、
「AKIHOに『アジア予選に向けて良い課題が見つかってよかったね』と言われたヨ……あの人スパルタ過ぎネ……」
「AKIHOさんの場合は本当に"伸びしろ"って捉えてるから……」
FeiFei・ShanShanちゃんたちはそれ以来、マラソンが日課になったそうな。
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