第76話 クリスマスプレゼント
「よしっ」
12月20日。
今日もまた私は秋津ダンジョン管理施設の清掃作業を終えた。
"へるモード"の清掃時間は1時間15分。
順調に清掃速度が速まっている。
この調子なら今年が終わる前に、1時間切れてしまうかも?
「それにしてももう年末かぁ……」
今年はいろいろ特別な出来事があったなぁ。
振り返ってみてそう思う。
今年は4月にこの施設へと就職してお仕事を学ぶ毎日だったかと思えば、10月にまさかのRTAに初参加。
11月には日本予選も突破。
この前は竜の竜太郎 (秋津の空から私のところに戻ってきてくれた竜)に乗ってナズナといっしょにアメリカまで行ったし……
これが社会人になったってことなんだなぁ。
「たくさんの友達もできたし、良い1年だったな」
AKIHOさん、FeiFeiちゃん、ShanShanちゃん……
たくさんのお友達ができることになった。
そしてたくさんの人たちにお世話になった。
「何かお返しがしたいな」
特に施設長、そしてAKIHOさん。
RTAに関してまるで何の知識もない私に1から多くのことを教えてくれた。
そういえばクリスマスも近い。
今年はお金もできたし、何か贈り物をするのもいいかも?
「施設長はそういえば、最近お気に入りの湯飲みが割れちゃったって言ってたっけ。頑丈でカワイイ柄の湯飲みを探してみようかな」
AKIHOさんはどうだろう。
湯飲み要るかなぁ?
いやでもAKIHOさんは現役の女子高生だし、いくらでも家にカワイイ湯飲みはあるだろうし……
現役女子高生に勝る美的感覚は私には無い。
「よしっ、素直に聞いてみようかな」
私は地上まで戻り施設長に清掃作業完了の報告を済ませると、さっそく"すまほ"を操作。
"ちゃっと"からAKIHOさんを選んで、
『今日お電話できますか?』
と書き込んだ。
するとすぐに『いつでも大丈夫だよ。今からでも平気!』と連絡が返ってくる。
今日は平日のハズだけど、学校とか大丈夫なのかな?
まあAKIHOさんが大丈夫というなら大丈夫なんだろうけど。
さっそく通話ボタンを押す。
『レンゲちゃん、久しぶりだねっ』
すぐにAKIHOさんは通話に出てくれる。
ひと言ふた言雑談を交わしてさっそく本題だ。
率直に聞いてみる。
『えっ……レンゲちゃんが私にクリスマスプレゼントっ?』
「はいっ。"ぷれぜんと"です! 今年はとてもお世話になりましたので!」
『嬉しいな……でもどちらかといえば、お世話になったのは私の方だと思うんだけど』
「そんなことないですよ。AKIHOさんに色々と教えてもらえたからこそ、RTAをやってみようという選択もできたんです」
『そうかなぁ……』
「そうなんですっ。なので、何か欲しいモノとかありませんか? 私、女子高生の流行とか疎くって」
『流行は私も分からないよ。ダンジョンばっかり行ってるし。欲しいモノかー……』
AKIHOさんはウーンと唸りつつ、
『ひとつ欲しいモノというか、経験してみたいなって思ってることはあるんだけど、』
「はいっ! なんでしょうっ?」
『ドラゴンと戦ってみたいな、って』
「えっ、竜太郎とっ?」
『竜太郎……?』
「あっ、いや、なんでもないですっ! ドラゴンってダンジョンのドラゴンのことですよね?」
『うん、そうだけど……』
うっかり。
気をつけないと。
竜太郎のことと、アメリカに行ったことは人に話しちゃダメとナズナに言われてるんだった。
結局何しに行ったのかは (ほとんど目隠しに耳栓をさせられていたから)分からなかったけど、ナズナと日本に帰る際にがおおきなハンバーガーを買って食べられたので大満足な旅行だった。
「じゃあ、"へるモード"ダンジョンにまた一緒に潜りましょうか?」
『うん。そうしてもらえるとすごく助かるな。私1人じゃ絶対に生きて帰れないだろうし』
AKIHOさんは決意するように、
『正直ね、今の私って伸び悩んでる。だからまた魔力爆発だけでアイスゴーレムと戦ったときみたいな強敵との戦いが必要だと思うの』
そう口にした。
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