第45話 準備:AKIHO×RENGE配信(魔力爆発)
「レンゲちゃん、生配信後にごめんね。ちょっと今から少しいいかな?」
AKIHOさんからその連絡があったのは初の1人生配信を終えた1時間後だった。
「AKIHOさん……先ほどの生配信ではすみませんでした、"すぱちゃ"いただいたのにちゃんと回答できなくって」
「ううん、いいの。世界大会についてが何かはもう分かった?」
「はい。施設長やナズナに教えてもらったので」
「そう。じっくり考えて、答えが決まったらSNSで発信してみるのもいいかもしれないわね。きっとみんなレンゲちゃんの答えを待っていると思うから」
「えすえぬえす……?」
「……し、施設長さんならきっとご存じのはずよっ!」
私が流行の先端を知らないばかりに、
しまった、という風にAKIHOさんを焦らせてしまう。
うーん……そろそろ横文字にも慣れなきゃなぁ……
「それで、本題は別なのよ」
AKIHOは仕切り直すように、
「今日はまたコラボ動画の提案をしに電話をしたの」
「こらぼ動画って……前見たく、AKIHOさんと私がいっしょに動画を録るってことでしょうか?」
「そう。実はね、私がレンゲちゃんが公開してくれた魔力操作ハウツーの動画を見ながら練習してた感じ……どうやら魔力爆発の方が比較的楽に実現できそうなの」
「えっ? そうなんですかっ?」
「うん。でね、私は今のその現状についての動画を収録しようと思っていたんだけど……それについての感想や助言をレンゲちゃんから貰えたら、動画がより面白くなるんじゃないかなと思ったんだ」
私が感想や助言を……?
なんだかまたトンチンカンなことを言ってしまいそうで、ちょっと不安だ。
「それだけじゃないの。もちろんレンゲちゃんにとってのメリットもあると思う」
「めりっと……」
「魔力操作をまるで知らなかったRTA走者の私が、本気でレンゲちゃんのハウツー動画を参考に練習をしてみた生のフィードバック……つまりは感想や疑問点をレンゲちゃん自身に伝えることができる。それは次のハウツー動画を作る際の方針として役立てられるんじゃないかと思って」
「AKIHOさんのご感想……! 確かに、それはすごく助かります……!」
実際、次のハウツー動画をどのようにするかはナズナとずっと相談していたことだったのだ。
最初の動画の再生数は瞬く間に億を超えたものの、感想欄には動画の内容を純粋な娯楽として見ている人たち、あるいは内容の真偽を疑うもの(インチキ気功や霊能力、やらせ、CGを疑う声)が圧倒的に多かった。
「AKIHOさんが困ったところなんかが分かれば、もっと分かりやすい"はうつー"動画を作ることができそうですっ!」
「じゃあ、決まりね。いつ頃がいいかしら?」
「私はいつでも大丈夫ですっ。何なら今日でもっ!」
「えっ……いいの? 疲れてない?」
「はいっ。いつも"へる"モードで100階掃除してるところを今日は3階分しかしていないのでっ」
「そっ、そう……? それなら、今から秋津にお邪魔しちゃおうかしら」
そんな経緯があって、生配信直後に私は今度はコラボ動画を録ることになったのだった。
* * *
「こんにちは、あなたがナズナちゃんね?」
施設までAKIHOさんがやってきて、ナズナの前に屈む。
そっか、そういえば初対面なんだっけ。
「こんにちは、先週は姉がお世話になりました」
「いいえ。私の方こそ、お姉さんと出会ってからは毎日が貴重な体験よ」
「それで本日は、動画のコラボ案件とのことですが……」
「あれ、もしかして詳細はナズナちゃんと詰めた方が良かったりするのかしら?」
あれぇ?
AKIHOさん、一瞬でナズナな方が頼りになることを見抜いてしまったのかな?
まったくもってその通りです。
でももちろんお姉ちゃんとしては妹にあれもこれもと任せきりにするわけにはいかないから……
「とりあえず私はお茶を淹れてきますねっ!」
任せてほしいっ!
家事全般は得意だし、お茶の美味しい淹れ方についても事務の野原さんに教わったのだっ。
私は3人分のお茶を用意しに給湯室へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます