第40話 RENGEの完全介護生配信その4
「じゃあっ、気を取り直していつものお掃除……清掃作業の様子をお送りしたいと思いますっ」
>よろしくー!
>RENGEようやく本調子か
>HELL52階層とか、楽しみだな
>これまでHELLモード配信とかあり得なかったしな
「秋津ダンジョン管理施設の50階層から60階層は特にモンスター出現率が多い一帯になっていて、いつもは消毒銃で一掃するようにしています。でも、今日はみなさんもマネしやすいように、素手も多く使っていこうと思ってますっ」
>また素手www
>だからそれはマネできんのやってwww
>気の遣い方が異次元で草
「あっ、さっそくモンスターの影が見えましたね」
ダンジョンの通路奥から現れたのは二足歩行の大きなモンスターの影。
手に持つのは鋼の棍棒、そして後ろには配下と思しき【普通オーク】や【少し大きめオーク】たち。
「【大きなオーク】ですね。ただの
>エサっ?
>どういうことwww
>大きなオークって・・・キング・オークな笑
>キング・オークが雑魚ってこと?
>RENGEから見ればそうなのかもしれんがwww
>キング・オークってVERY HARDで出てくるフロアボスでは・・・?
>オオトカゲとはいったい・・・?
『お姉ちゃん、説明が足りないよっ!』
私がオークたちに向けて駆け出していると、ナズナの声がまた響く。
『もっとちゃんと説明をしてっ!』
「せ、説明って……今したよっ?」
ちゃんとオークたちが出てきた説明もしたし、
また何かダメなところでもあったのかな……?
大きなオークの心臓を握り潰しながら"どろーん"を振り返る。
『視聴者さんは【餌モンスター】だとか、【オオトカゲ】とかの情報も知らないし、そのオオトカゲに食べ荒らされるとどういった悪いことがあるのかも分からないの』
「あっ、ああ! そっか、そうだよねっ?」
『まず餌モンスターだとお姉ちゃんが考える理由はなに? そこから説明してみよう』
「そうだね、分かりましたっ。では、まずこのオークたちが餌モンスターだっていう理由ですが……それはこの弱さにあります」
私はあえてオークたちの正面で立ち止まる。
するとここぞとばかりに左右から太い棍棒、錆びた剣が振り下ろされてきた。
……よっ、と。
私は両方とも左右の手で止めて見せる。
「はい。この通り、ちょっと大きめサイズのオークたちの攻撃は弱いですね。このように、身体強化魔法をかけることなく片手で止められます」
>???
>???
>あれ???
>待って???
>ちょっと今なんつった?
>身体強化魔法をかけることなく?
>ウソだろ、生身?
>そんなわけなくね???
「このオークというモンスターにはほとんど脅威がなくて、他のモンスターに食べられる強化食材として出てくるモンスターだと思うんです。なので餌モンスターと私は呼んで、」
『ちょ、ちょっとちょっとお姉ちゃんっ!?』
「えっ、ナズナ? どうかした……?」
『身体強化かけてないのっ? なんでっ?』
「……? かける必要がないから?」
私はオークたちの持つ武器を捻る。
するとオークたちの体が浮くので、地面に殴りつけると絶命した。
『ど……どうやらお姉ちゃんは、力の流れ、それにオークの体重を利用して仕留めているみたい……? ですね』
>なんやそれwww
>お姉さんはミュータントか何かですか?w
>敵の力を利用して自分の力とする・・・古武術?
>映画の世界なんよwww
>でもさすがに危なくね?
>失敗したら大怪我じゃすまんぞ?
『いえ、恐らく基本的な魔力で体を覆ってはいるのでケガの心配はないと思いますが……それはともかくお姉ちゃん、いつの間にそんな技を……?』
「いつの間に、と言われても……」
いつからだろう?
確かにいつからか勝手にできるようになっていたけれど。
私はう~んと唸りつつ、片手間でオークたちを地面に叩きつけて仕留めつつ、記憶を漁る。
確かお金が無かったけど、【すき焼き】の話を同級生から聞いたナズナがボソっと、食べてみたいなーなんてこぼしていた日があって……
「ああっ、ほら、お姉ちゃんがよくお魚を釣りに行っていた山があったじゃない?」
『え? ああ、うん。あったね? お夕飯が足りない時とかに……』
「あそこにツキノワグマが増えて、よく出没した時があったんだよね」
『ああ。確かいっとき、畑とかの害獣被害が増えた時期があったよね? すぐに収まったみたいだけど……そういえば、あの年はお肉をいっぱい食べれたような……? ん?』
「うん、その時のお肉がお姉ちゃんが
『……え?』
「臭みを抜くのは大変だったけど、味付けを濃くすればちゃんと食べれて美味しかったよね、すき焼き」
『んんっ!? えぇぇぇっ!? じゃあ私があの時食べてたのって、熊っ!?』
「う、うん。そうだよ?」
『聞いてない聞いてない聞いてないっ!』
「お肉はお肉だから……」
『そういえばお姉ちゃん豚も鹿もウサギも鳥もひとまとめにお肉って言ってたねっ!? あぁーもぉー! なんで気づかなかったんだろぉ……!』
ブルブルと、"すまーとをっち"が震える。
>ヤベー情報出てきたなw
>熊鍋は草。いや臭www
>ツキノワグマって勝手に狩猟していいんか・・・?
>調べた。柵の無い山ならいいらしい
>いや、まずは素手でツキノワグマ狩ってることに誰かツッコめよwww
>それは不思議じゃない
>RENGEならやるだろうな
……なんか予想外に食いつきがいいなぁ。
みんなジビエとか好きなのかな?
>しかし野生児すぎるな
>親なにしてんの?
>それは気になる
>貧乏とか?
>貧乏はありえる
>ナズナちゃんのお肉カテゴリに"牛"が入ってないもんなぁ・・・(泣)
>スパチャ不可避。良い肉買ってほしい
>スパチャしたわ。
>焼肉いってこいwww
>"鹿"と"ウサギ"は当たり前に肉にカテゴライズしてる妹ちゃん草。日常的に喰ってたんだろうなぁ・・・RENGEが狩ってきたやつを
>スズメとか蝉も喰ってそう
「スズメは……っと、あ、しまった。オーク全部倒しちゃった」
失敗……。
お肉たちのことを考えていたら倒し方の解説も何も忘れてしまった。
でもちょうどその時、
通路の奥から【オオトカゲ】が姿を現した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます