RTA知識皆無なダンジョン清掃員、実は規格外の力を持っていたらしく、生配信中のRTA会場の清掃時に世界最速記録を叩き出して大バズりしてしまう
浅見朝志
第1話 私の適性はダンジョン清掃員です
〔死ねぇッ! 人間の小娘ふぜいがッ!〕
ダンジョン地下100階層の最深部にて。
ラスボスのレッド・ドラゴンが毎度お馴染みのセリフを吐いた。
……魔力充填200%、消毒弾リロード完了。
「えいっ」
引き金をひく。
私の持つ消毒銃から真っ直ぐに光線が放たれた。
〔グアァァァッ!?〕
ブレスを吐くつもりで開いたであろうその口に光線が突き刺さりドラゴンが悲鳴を上げてのけ反った。
もう全てパターンは読めている。
〔小娘め、やるではないか。かくなる上はワガハイの爪で真っ二つに斬り裂いて、〕
「さて、これで終わり。急がないとスーパーの半額セールが終わっちゃう」
〔グガッ……!?〕
魔力充填300%の消毒弾。
その2度目の攻撃で逆鱗を貫くとドラゴンが地面へと倒れ伏した。
──テッテレーテーテ~~~!
スピーカーから、ダンジョン内へと陽気なBGMが鳴り響く。
〔RTA完走おめでとうございます、攻略者のみなさん。みなさんは【HELL】モードダンジョンを完全クリアいたしました。今回の記録は2時間2分56秒です。記念賞状をお求めの方は──〕
「2時間2分か……前より5分は清掃作業が早くなったかな?」
スピーカーの異常もないし電源オフ、っと。
ダンジョン最奥にあるスイッチを押すと、倒れ伏していたドラゴンは消える。
まあ当然だ。
ここは【仮想ダンジョン】。
ただのダンジョン攻略体験施設に過ぎないのだから。
「これが本物のダンジョンなら、モンスター素材を集めてお金持ちになれたのかもなぁ……」
言ってても仕方ないけどね。
勉強は苦手な私でも知っている。
本物のダンジョンなんてもう数十年も発見されていないし、モンスターも狩り尽くされているって。
ダンジョンで稼ごうなんて、ひと昔前の考えだ。
それに、仮に現代に本物のダンジョンがあったとしても私にきっとダンジョン攻略者の適性はない。
「確か施設長が言うには……1番普通くらいの【のーまるモード】とかいうモードのRTA平均時間が2時間くらいだっけ? 私なんて1番簡単な【へるモード】で2時間なのに……」
施設長からは1番簡単なモード以外は触っちゃダメとも言われてるし。
確か【べりーいーじーモード】が1番難しくて危険なんだとか。
そんなことを言ってた気がする。
合ってるか不安だけど、たぶん。
まあ、別に誰とも競ってないからいいけどね。
というかそもそもRTAってなんだろう?
PTAに似てるけど……
当然違うものだよね?
「はぁ。結局、才能がないなら地道にコツコツと働くしかないんだよなぁ」
幸い、こうして良い職にも恵まれたことだ。
頭を使わずに消毒銃でアチコチをピカピカにするこの【ダンジョン清掃】の仕事は私にピッタリの職業だと思う。
子供の頃から家事全般をやっていたから、掃除はかなり得意なのだ。
勉強は苦手だけど。
特に英語が。
「さてと、消毒消毒~っと」
さっきのドラゴンが倒れた際に跳ねた血染みを消毒銃で2発撃つ。
それは正確に天井と壁へと当たる。
とたんに汚れは消えてピカピカの天井になった。
仮想ダンジョンは汚れやすい。
あっちこっちで魔法が飛びかうし、モンスターもゲーム中はメーテル(?)だかエーテル(?)とかいった不思議な魔力成分で実体化してるから血も跳ねる。
ダンジョン清掃員としてこの施設に雇われている私は、そういった汚れを最短・最速で綺麗にするのが主な仕事となっている。
……まあ、今回みたくモンスター実体化の点検作業もいっしょにしてるけどね。
人手が少ないんだから仕方ない。
別に不満もない。
消毒銃を撃ってモンスターと戦うのってちょっとカッコイイし、点検作業は楽しいくらいだ。
「よしっ、業務終了。早く帰らないとスーパーの半額セール終わっちゃうよ」
今日の業務はコレで終わり。
私は魔法で身体強化(瞬発×10:筋耐久×10:動体視力:×10)を重ねてかけると、地下100階層から地上への道を急いだ。
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