第6話

女の部屋

ソファーに座って呆然と通帳を眺めている女。

大きな溜め息を吐く。

力無く立ち上がり、寝る支度をしようとする。


ベランダ側の窓から、ゴン!と何かが当たる音がする。

恐る恐るカーテンを開ける女。

誰も居ない。


ベランダの縁から黄色い何かがへばっているのが見える。

女、窓を開けて拾い上げる。

星型の萎れた何か。


「星?」

「うん。」

「どうした。」

「びゅんして、ひゅんした。」


女の腕の中で回る星。

驚いている顔が覗く。

ガクガク震えている。


「ほし、戻れない。」

「みたいだね。」

「上がれないよ?」

「そうなんだ。」

「ほし、風に勝ったから?」

「知らない。」

「ほし、ふわふわ、出来なくなった。」

「硬いからかねぇ……。」


涙目になる星。


「ウチに来る?」

「いいのぉ?」

「どうぞ。」

「ずっと?」

「……別に良いよ。」


女、星を抱いたまま部屋に入る。

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