第42話 勇者と一緒に依頼を受ける件

 近くのお店で腰を据える4人の雰囲気と空気感は最悪と言ってても過言ではなかった。


 俺とアルルは普通に注文する中、勇者シンは俺を怪しみながら注文し、アリステラは興味津々にメニュー表を眺めていた。


 しばらく、待っていると、次々と頼んだものが運ばれ、話す場が整った。


「君は飲まないのか?」


「いえ、飲みます」


 勇者シンは出された飲み物をゴクリと一気飲みした。


 豪快だな。そんなに俺と一緒に飲みたくないのか。


「さてと、それでだ。まず一つ聞きたい。どうして、俺を襲った?」


「半分は勘、もう半分は気配。あなたからは魔族に似た気配がした。だから、その仮面を外して、魔族ではないかを確認させてもらえれば、さっき襲ったことは謝る」


「ほほ…………」


 急に話を聞くようになったな。アリステラに殴られたからか?


 まぁ明らかにさっきは血が頭に上っていたみたいだしな。


 でも。


「無理だ。さっきも言ったが、俺は顔が見られるのが恥ずかしんだ」


「ふざけているの?あなたがその仮面を外せば、この場は収まる。私はそう考えてる」


「ああ、わかるよ。君が言いたいことが。でもそれでも、この仮面を外すことができない。もし、外せば、ここにいる全員をいけなくなる」


 少し殺気を込めて言うと、勇者シンが剣を引き抜こうとし、それをアリステラが止めた。


「だめですっ!ここで剣を抜いては」


「でもぉ!!」


 話を聞く耳持たず、これはあれか、どうあがいても勇者シンとは対立する運命という神のお告げなのかな。


 仕方がない。本来の目的から外れるけど、このままだとずっと付きまとわれそうだし、ここは。


「なら、俺たちと一つ、一緒にボランティアをしないか?」


「え?」


「それはどういうことでしょうか?え、え~と」


「ルンゲです。聖女アリステラ様」


「どうして私の名前を」


「その姿と美貌を見れば、一目でわかりますよ」


「そうですか…………それでボランティアというのは?」


「この国のために一つ、魔物退治を一緒にしましょう。ほら、一緒に依頼を受ければ、きっとお互いの内面がわかるでしょうし、きっとシンも誤解であることを理解するはずです」


「なるほど、それはいい案ですね」


「私の名前を軽々と口にしないで!」


「意外と繊細なんだな」


「私はただあなたを信頼していないだけ」


「でもいい案だろ?ほら、一緒に冒険して見えてくるものがあるってやつだ」


「いいじゃないですか、勇者様」


「…………わかった。でも、それでも私の考えが変わらなかったらどうするの?」


「その時は…………その時考えるさ。じゃあ、早速、冒険者ギルドに行こうか」


□■□


 勇者シンの視線を気にしながら、俺たちは冒険者ギルドに訪れた。


 ここには、たくさんの困った人たちの依頼が集まる場所。


 冒険者が集まり、困っている人たちの依頼を受け、対価をもらう。


 貴族だとそこまでかかわることはないが、冒険者には夢があり、運と実力があれば、貴族以上の資産が手に入れることができる。


「さてと、どんな依頼を受けるか」


 冒険者ギルドに入るとズキズキとした視線が突き刺さる。


 やっぱり、この仮面は目立つよな。


 早く依頼を決めて、ここから出たい。


「これなんてどうでしょうか?シーラスドラゴンの討伐」


 アリステラが見せてくれたのは難易度マックスの依頼だった。


「却下」


「却下ですね」


「さすがに私も却下」


「え~~~~」


 初めて勇者シンと意見があったが、表情をのぞいてみると、いやそう表情を浮かべていた。


 そんなに意見が一致するのが嫌なのかよ。


「これなんてどうでしょうか?」


 次はアルルが依頼書を手に取った。


「どれどれ…………メイド4人募集中(男性可)。主なお仕事は撮影(裸可)…………ないな」


「ないです」


「普通に無理」


「そんな!?メイドっていいんですよ!可愛いし、それにこの依頼をしている人は貴族の中でもかなりのお偉いさん。お金もたんまり」


「別にお金稼ぎに来たわけじゃねぇよ」


 ツッコミながら、軽く手刀をくらわした。


「いて…………残念です」


「お前ら、もうちょい、まともな依頼はないのかよ」


「本当そうです、もうすこしまともかつ可能な依頼を選んでください」


「「すいません」」


 アルルとアリステラはシュッと小さくなりながら謝った。


「さてと、どうするか」


 ちょうどいい依頼はいくつかあるが、どうせだったら、少し苦戦できるぐらいがちょうどいいんだが。


 その選定が難しい。


 少し悩んでいると、勇者シンが一枚の依頼書を持ってきた。


「これなんてどう?」


 勇者シンが持ってきた依頼は、沼を占領しているワニの討伐。


 確認されているだけでも100匹以上いると書かれている。


「いいんじゃないか」


「私もいいと思います」


「いいですね」


「よし、それじゃあ、その依頼を受けよう!」


「なんで、あなたが仕切るの?」


 と言いながら、受け付けに行き、依頼証を渡す勇者シン。


 受付が終わると、すぐに俺たちは依頼の場所へと向かった。


 馬車で、数時間後、無事に到着するも依頼場所である沼化した泉は想像以上にひどかった。


「こ、これは…………」


「すごいですね、ルンゲ様」


「だから、みんな、あの依頼を受けなかったのですね」


「ここは勇者としてしっかりとやらないと」


 こうして、勇者と一緒に依頼を始めるのであった。

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