第36話 原作最強の姉妹は俺をボスと認めていない

 シノケスハット領に到着した俺はまず、都市アルキナへと向かった。


 理由は単純に屋敷に戻れば、お父様とお母様のめんどくさい親心が襲ってくるからだ。


 アキバにいた頃、何通手紙が送られたことか。


 これぞ、親ばかというやつだ。


 まぁ、わが子が相当かわいいんだろう。


 中身はゲスなのに。


「ってここどこだよ」


「都市アルキナですよ、どうですか?俺の努力の結晶は!?」


「ち、ちかい…………」


 顔近づけてくるフユナの顔を突き放しながら、再び都市アルキナを眺めた。


 路頭に迷う人たちが徘徊していたイメージが崩れるほど健康的な人たちが楽しそうに歩き、子供たちなんて元気よく遊んでいる。


 さらには建築物も都市アルキナでは煉瓦で作られたものが多かったはずなのに、デザインに凝った建築物が多く並んでいる。


 もはや、大きな都市と言ってもいい。


「多くの商人と貿易を行い、物資を提供してもらったりといろいろ努力しました。もはや、2年前の都市アルキナはありません。どうですか!ボスっ!!」


「これ…………お父様にばれたら、やばいな」


「え…………」


 アルゼーノン帝国の中にシノケスハット領があり、その管理下に都市アルキナがある。


 つまり、ここまで変化しておいて、シノケスハット家が動かないはずがない。


 お父様が直接介入してこれば、下手をすれば、ここが戦場と化してしまう場合だって考えられる。


「まぁ、最悪、ラプラスが乗っ取ったってことにすればいいかって、何してるんだ?」


 なぜか、フユナが地面におでこをつけて土下座していた。


「すいませんっ!そこまで考えが至りませんでしたっ!どんな罰でも…………どんな罰で受けますっ!!」


「あ、いや、別に罰を与えるつもりないんだが」


「なぁ!?ミスを犯したこの俺を許してくださると!?なんて優しいだ、ボスっ!!」


 響き渡る声に周りの民衆から視線が集まる。


「声を静かにしろっ!とりあえず、ラプラス本部までの案内を頼む」


「あ、わかりました」


 一瞬で素に戻った。


 フユナって本当に変な奴だよな。まぁ見てて面白いからいいけどさ。


 でももうあの原作のかっこいいフユナを見られないと思うとちょっと悲しいかもしれない。


 都市アルキナの中心部に訪れると、立派な屋敷が立っていた。


「お、すごいな」


「ラプラスの本拠地ですが、実は地下があるんですよ」


「な、なんだと!?」


 地下という言葉に激震が走った。


 ラプラスという組織に加え、立派な屋敷、そして地下という言葉。


 そのワードから導き出される答えはただ一つだ。


「まさか、本当の本拠地は地下にあるのか」


「その通りですっ!それでは案内します」


 立派な屋敷に入るとは大きな階段があり、その裏には地下に続く階段があった。


「こっちです」


 しばらく、下に降りた後、大きな扉があり、開けるとそこにはラプラスにふさわしい部屋が広がっていた。


「これはこれは…………美しい部屋ですなぁ」


「ひろーーーーーーいっ!!」


 ゼノンやノータは感心な表情を浮かべた。


 たしかに、立派な部屋だ。


 扉も複数あるところを見るとさらにたくさんの部屋があるのだろう。


「部屋の設計はアリの巣を参考にしています。これならもしばれたとしても到着するのに時間がかかりますし、罠にはめることもできます。さぁ、次はボスの部屋に行きましょう」


「俺の部屋?」


 フユナの後ろについていきながら入り組んだ道を進んでいくと、ひときわ豪華な扉が視界に入る。


 もしかして、この扉の先に?


 ガチャっとフユナが開けると。


「お久しぶりです、ご主人様」


「あ、アルル?ってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 アルルが目の前にいることにも驚いたが、それよりもその後ろにいる二人に驚いた。


 原作最強の傀儡使いシトリーに、原作最強の殺人姫マイノ。


 どうして、2人がここに!?


「驚かれましたか?」


「ああ、相当驚いたよ」


 特にアルルの後ろにいる二人にね!!


「さぁさぁ、ボスっ!お入りくださいっ!!」


 ボスの部屋に入ると、それはもうお金をふんだんに使ったんだなと思うほど豪華な部屋になっていた。


 どこから持ってきたのだろうか、金のライオンに、なんか見たことのある絵画。


 本当に無駄にお金がかかってるな。


 そして、目先にあるボスの机と椅子。


 これに関しては満点だ。超かっこいいし、デザインも黒色を統一しているのもいい。


 俺はゆっくりと椅子に腰かけた。


「ライン様、かっこいいっ!」


「ご主人様、とても素敵です」


「これぞ、ボスっ!ああ…………頑張ってきてよかった」


「これぞ、風格というものですなぁ~~」


 みんな、ほめるなよっと言いながら、自分なりにかっこいいポーズをとった。


 ふと、横を通り過ぎる男を見て、俺の目は真ん丸になった。


「え…………ちょっと、お前」


「う?これはライン様、ご機嫌麗しゅうございますでぷ」


「もしかして、ブタブル・チェルナーか?」


「はい、そうでぷよ」


 超スリムになっているんですけど!?


 無駄に垂れ下がっていた肉がそがれ、まるで貴族の見本のような姿。


 この2年で一体、何があったんだ。


「ボス、今ではブタブルはラプラスの会計長幹部として資産を管理しているんですよ。いや~~人生って何があるのかわかりませんね」


「そ、そうだな」


 本来ならありえない未来。


 こういうことも起こりえるんだな。


「ブタブル、これからもがんばれよ」


「はいっ!このブタブル!精一杯頑張るでぷ!!」


 張り切って、出ていった。


「さてと、いろいろ聞きたいんだが、そこの二人は?」


「あ、はい。実はラプラスに幹部という役職を設けまして、俺自ら選定した強者です。二人共ボスに挨拶しろ」


「シトリー」


「マイノ」


「「二人合わせて、双子姉妹!いぇーーーいっ!」」


 っと二人とも頬をぴったりとくっつけながら、ピースしてきた。


「…………それはあれか、定番のあいさつというやつか?」


「その通り」


「よくわかっていらっしゃる。さすがボス」


 ほ、本物だぁ!!


 内心興奮状態である。


 この二人は原作最強の姉妹とも呼ばれていて、原作にはあまり登場せず、外伝でのストーリーメインで活躍する姉妹キャラ。


 その人気はすさまじく、最強の姉妹。


 まさか、目の前であいさつが聞けるなんて、俺どうなっちまうんだ。


「そうか、これからよろしくな」


「よろしくない」


「全然よろしくない」


「おい、二人とも何失礼なことを言っている!!」


「私たちはフユナについてきた」


「あなたじゃない」


「お前らぁ!!」


「まあまあ、落ち着けってフユナ」


「しかし、ボスっ!」


「ここは一勝負しようじゃないか」


「一勝負?」


「何をするの?」


「そりゃあ、決闘だ。お前たち二人でかかってきていい」


「なめてる?」


「なめてるの?」


「いや、なめてない。むしろ、これでやっと戦いになると思っている」


「わかった」


「決闘しよう」


「フユナ、準備頼めるか?」


「わ、わかりましたぁ!」


 ちょうど試したかったんだよね。今の俺がどれぐらい強くなったのか。


 こうして、原作最強の姉妹と決闘することになった。

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