第32話 エピローグ まだまだ先は長い
しっかりと、お父様とお母様に説明し、アキバへ行く許可をもらった。
なんと、滞在期間は2年半だ。
「長期間滞在する意味はあるんですか?」
「ある」
「その心は?」
「できるだけ、お父様、お母様とかかわりたくないからだ」
「…………」
少しの沈黙の後、ごほんっ咳払いしながら話をつづけた。
「考えてもみろ、アルル。表面上は優しいお父様、お母様だが実際、裏では、世間に出せないほどの悪逆を平然とやっているんだぞ」
「それは、まぁそうですけど」
「それに、アキバで師匠をとる以上長期間の特訓が必要不可欠だ。わかるだろ?」
「わかりますよ。実際に私にも師匠がいましたから」
「だろう?だからこそ、ギリギリまで滞在する必要があるんだよ」
それに、シノケスハット家の屋敷に残っていたら、またいつアリステラが訪れるかわからないし。
今度こそ、勇者を連れて、「一緒に魔王退治へ行きましょう、ライン様」なんて言いかねない。
だったら、原作ストーリー本編の学園編が始まるまで、他国で訓練しておいたほうが身の安全の確保ができるはずだ。
「話はずれるのですが、じつは一つお願いがあります」
「な、なんだよ」
真剣な眼差しを向けられる俺は、その雰囲気で嫌な予感が浮かんだ。
もしかして、「ご主人様には失望しました。ここでお別れです、さようなら」ってことはないよな?
今までたくさんこき使ってきたし、休みも今思い返すとあまり与えていない気がする。
この眼差しも間違いなく、重要なことを言うときの目だ。
いかん、いかんぞ。
「どうか、私に修業する期間をくださいっ!!」
「へぇ?」
「私はシャルガーとの戦いで、自分の弱さを自覚しました。私はこの機会に自分を見つめなおし、ご主人様を守れるメイドになりたいんですっ!!ですので、どうか、修業する期間を私にっ!」
っと顔を近づけて、迫った。
「な、なるほどな…………とりあえず、離れよう」
「あ、す、すいません、ご主人様」
アルルのやつ、あの時の戦いをそんなに反省していたのか。
たしかに、弱くなったとは思ったけど、もしかして、俺が言った言葉がそんなに響いたのか?ありえるな。
しかし、こうして自ら強くなることに前に向きになることはいいことだし、むしろそのほうが俺としては安心する。
「別にいいぞ。どうせ、アキバへ行ったら、アルルも暇な時間が増えるだろうし、この機会に誰よりも強くなれ、アルルっ!!」
「はいっ!」
アルルの表情が生き生きとしているような気がする。
最近、少し表情が暗かったし、これでも安心だな。
すると、ガチャっと扉が開き、ノータが俺のひざ元までテコテコと駆け寄ってきた。
「ライン様っ!!」
「どうした?」
「また、新しい魔法を作ったのっ!」
「ノータちゃん、また変な魔法じゃありませんよね?」
「今度は変じゃないもんっ!」
「どんな魔法を作ったんだ?」
「ふふん、一度立ち寄った場所ならどこへでも移動できる魔法だよっ!すでに、名前を決まってるのっ!その名も転移魔法っ!!」
「すごく便利そうですけど、本当になんですか?」
「アルルちゃん、この転移魔法を一度体験したら、そのすごさに度肝抜かすよ」
自信ありげに言うノータをみて、アルルは言った。
「それじゃあ、見せてください」
「いいよ。それじゃあ、私とライン様の思い出の地、都市アルキナへ繋ぐね」
杖を掲げると、杖先が強く光りだし、目の前に青く輝くゲートが開かれた。
「これをくぐれば、もう都市アルキナだよ」
俺たちは普通にゲートを潜ると、視界に広がったのは、都市アルキナの街並みだった。
「す、すごい」
「でしょっ!ライン様、褒めてっ!!」
「あ、ああ、すごいな」
「えへへ」
まさか、転移魔法を開発するなんてな。
転移魔法事態は、原作で登場するが、開発されるのは魔王軍進行後のはずだ。
さすが、原作最強の魔法使いだな。
「この魔法があれば、いつでも帰ってこれるな」
「うんっ!」
「まさか、こんなことが…………やっぱり、ノータちゃんは魔法使いとして天才すぎる。それに比べて私は…………」
隅っこでうずくまるアルルの姿。
あいつ、最近、情緒が不安定のような気がするが、大丈夫だろうか。
普通に心配になる。
「アルルちゃん」
ノータはひざを折り、同じ目線に立って肩を軽くたたいた。
「ドンマイっ!」
その笑顔にアルルの中で何かプチっと切れた。
「ノータちゃん…………殺すっ!!」
「へぇ」
鬼のような表情を浮かべながら、クナイを取り出し、ノータに向かって
追いかけ回すアルルと逃げ回るノータは都市アルキナを駆け回った。
「はぁ…………」
溜息を吐きながら、思った。
この二人、本当に仲いいよな。
「まてぇぇぇぇ!!」
「ごめんなさーーーーーーーいっ!!」
この後、1日中かけっこが続くのであった。
□■□
数日後、俺たちは東洋大陸の国、アキバへと足を踏み入れていた。
「ここがアキバという国ですか」
「どれも新鮮…………ワクワク」
「お前ら、絶対に変なところに行くなよ。探すのめんどいから」
「わかっています」
「わかっている、安心していい」
「ノータが一番心配だ」
東洋大陸の国の一つ、アキバ。
ここには凄腕の剣士がいる。
原作最強の剣士ゼノン。
俺は、原作最強の剣士ゼノンを師匠にするためにここまで来たんだ。
「さぁ、早くアキバまで行くぞ」
こうして、東洋大陸の国アキバで新たな一歩を踏み出したラインたちであった。
ーーーーーーーーーー
あとがき
これにて第1章完結です。
ここまで読んでくださりありがとうございます♪
第2章を挟む前に閑話が2回挟みます。
閑話1 『アルル・エルザー』が6時5分に投稿します。
閑話2 『勇者シン』が16時5分に投稿します。
少しでも『面白い』『続きが気になる』と思ったら『☆☆☆』評価お願いします!!
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