第11話 突如、現れた原作最強の指揮官、そしてボスになる

 次の日、ノータは母親のミストンさんと久しぶりの再会を果たした。


「お母さん」


「ノータ」


「おかあぁさ~~~~~ん」


 ノータはお母さんの胸に抱き着き、ミストンさんは優しく抱きしめた。


 その様子を陰から見守る俺たち。


 二人の再会を邪魔したくないとアルルが言うため、陰からこっそり覗くことになったが、正直、傍からみたら不審者である。


「よかったねぇ、ノータちゃん」


「泣くなよ」


「だってぇぇぇぇぇぇ」


 再会を泣き喜ぶアルルの隣で俺は、どうやって思い出づくりをしようか考えていた。


 都市アルキナを出るのはミストンさんの体力的には無理だ。


 ならやはり、都内で行うしかないな。


 でも、ここら辺、治安悪いしな。


「アルル、あの二人のことは頼む。俺は少し外に出る」


「おひとりで大丈夫ですか?」


「大丈夫だ」


「わかりました」


□■□


 思い出づくりの案がでず、外を歩いていると、続々と盗賊が現れ、俺を囲んだ。


「な、なんだ?」


 少し警戒すると、突然。


 一人の男が前に出て。


「どうか、私たちを傘下に入れてくださいっ!!!」


 っと周りの盗賊たちの心を代弁するように声を上げ、そして頭を下げた。


「え…………ど、どういうことだ?」


「そのままの意味です、ボスっ!!」


「ボス?」


「あの盗賊組織の柱であるバエルをつぶした大物。俺たちはあなたについてい来たんですっ!!」


「え、お前たち盗賊だよな?」


「はいっ!!」


「いや、俺、盗賊のかしらになるはごめんだわ。他をあたってくれ」


 っと逃げようとすると逃げ道をふさぐように盗賊たちが。


「待ってくださいっ!別に俺たちは盗賊である必要はないんですっ!ただ、ボスについていきたいんですっ!!!」


「ついていきたいねぇ…………」


 そもそもこいつら、どこから湧いてきたんだよ。


 しかも、バエルをつぶしたって、つぶしたのリーダーだけで、別にまだ、バエル自体は…………。


「も、もしかして、おまえらバエルの盗賊か?」


「そうですっ!!」


「バエルってつぶれたの?」


「はいっ!ボスが死に幹部たちもお金持って逃亡。正直、今の俺たちは…………うぅ」


 っと涙を流した。


 なるほどな、これは困ったな。


 バエルの残党なんて、いても困るし、アルルに始末してもらうか?でも、後処理がめんどくさいよな。


 …………いや、待てよ。もっといい使い方があるじゃないか。


「ふん、いいだろう。お前たちを傘下に加えてやる」


「おおっ!!」


「ただし、条件がある」


「じょ、条件ですか?」


「…………この都市アルキナの中心部にある。お偉いさんの家があるだろ?あそこ、占拠せんきょしてこい」


「え…………」


「もしできたら、傘下さんかに加えてやる。あ、もし占拠できたら呼んでくれ」


「あ、あの…………」


「なんだ?」


「さすがにそれは…………」


「なんだ?できないのか?それでも、元バエルの盗賊かよ。なら、話はなしだ」


 すると、カチッとスイッチがオンになる音が聞こえた気がした。


「やってやりますよっ!!あの地獄のようなバエルで生き抜いた俺たちの力で、占拠してやりますよっ!お前らいくぞっ!!」


「「「「おーーーーーーっ!!!!」」」」


 そのまま、中心部へと向かっていった。


「やっぱり、あおって正解だったな」


□■□


 数時間後。


「無事、占拠終わりましたっ!ボスっ!!」


「「「「ボスっ!!!!!!」」」」


「は、早いな」


 指示を出してほんの数時間、正確に数えるなら3時間ちょっとぐらいだろう。


 元バエルの盗賊の一人に呼び出され、向かってみると、都市アルキナを管理する貴族が縄で拘束されていた。


 本来いるはずの警備員の人たちは全員逃げ出し、実質もぬけの殻。


 ま、まさか、こんなに早くできるなんて、普通にすごいな。


 伊達だてに元バエルの盗賊ってことだけはあるな。


「な、なんだっ!お前らはっ!こんなことをしてただで済むと思うなでぷっ!」


 肥えたちゃぷんちゃぷんした体付き、まさしく貴族の汚点の象徴ともいえるの姿。


 はぁ、こんな奴がシノケスハット領土にいるなんて、やっぱり管理が雑すぎるな。


「お前のほうこそ、わかってるんだろうな?」


「な、なんだとっ!その口の利き方は何だっ!私は、ブタブル・チェルナー様だぞっ!立派な貴族なんだでぷっ!!」


 拘束され、自分の立場もわきまえずにベラベラとしゃべるブタブルの姿は滑稽という言葉が一番しっくりくる。


 俺は膝を折り、視線を合わせた。


「おいおい、自分の立場をわきまえてくれよ。それに、貴族といってもはしくれだろ?」


「なぁ!?」


「そもそも、この都市アルキナを管理できていない時点で、貴族失格だ」


「お前に何がわかるっていうんだでぷっ!!!」


「はぁ、俺はライン・シノケスハット。アルゼーノン帝国の三大貴族の一つシノケスハット家の長男。わかるか?」


 その言葉にブタブル・チェルナーの顎が外れ、そのまま気絶した。


「ふん、牢屋に連れてけ」


「はぁ!!」


 これで、邪魔者はもういない。


「よし、それじゃあ、都市アルキナの革命を始めようじゃないか」


「革命ですか?」


「正確に言うなら、都市アルキナをよりよい都市にするってことだ。お前たちにも手伝ってもらうからな」


「どこまでもついていきますっ!!」


「ふん、そういえば、まだ名前を聞いてなかったな」


「俺ですか?俺は、フユナ・ストローグです」


「そうか、フユナか…………んっ!?」


 フユナ・ストローグ!?


 あの、原作最強の指揮官、フユナ・ストローグ。


 原作ストーリーの中で、魔王軍と戦う際に活躍した指揮官。読者からは原作最強の指揮官と言われた人物で神の目の持ち主なんて呼ばれたりしている。


 その特徴はこの世界では珍しい黒髪に、キリッとした顔つき、原作では終盤に登場するからか、今のフユナはまだ少し子供っぽい。


 どうして、バエルの盗賊なんか、やってるんだよ。


 てことは、あれか、本来の原作でバエルが壊滅した際に生き残り、指揮力だけでのし上がったってことか?


 普通にいかれてんな。


「どうかしました?ボスっ!!」


「あ、いや、なんでもない。大丈夫だ」


 あれ?もしかして、俺がボスになれば、こいつを仲間に引き入れられるってことか。


 …………ありだな。


「それで、これからどうするんですか?」


「あ、ああ、実はなフユナに任せたい仕事があるんだ」


「なんでしょうか?」


「俺はこれでも立派な貴族だ。ずっとここにいるわけにもいかない。そこで、俺がいない間、このえ~~と組織?をまとめ上げたほしいんだ」


「お、俺がですか?」


「そうだな、組織名はまた後々考えるとして、頼めるか?」


「はいっ!ボスから頼みとあれば、是非、やらせていただきます」


「よし、今日からフユナは副ボスだっ!!」


「はいっ!!!」


 これで、実質、仲間入り。


 今日の俺、めっちゃ運良くないか!!


 いろいろあったけど、神様は俺を見捨てなかったんだな。


 泣きそうだよ。


「それじゃあ、早速だが、都市アルキナでもよおしをやるぞ」


「も、催しですか?」


「実はな」


 俺はフユナに、ノータとミストンさんのことを軽く話した。


「あのそれ、俺たちがやってもいいですか?だって…………」


「何言ってるんだよ。むしろここでやらずしてどうする!今この時こそ、罪を償う、最後のチャンスだろっ!」


「そうですね、その通りですっ!ボスっ!!副ボスとして、全力でやらせていただきますっ!!」


「その意気込みだっ!!あと言っておくが時間は限られている。遅くても三日間だ、いいな!!」


「はいっ!!」


 これで、めんどくさい催しの準備はこいつらに任せることができた。


 あとは、どうやって、ミストンさんを助けるか考えるだけだな。


 実は俺、あきらめていませんでした。


ーーーーーーーーーーー

あとがき


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