【悲報】悪役に転生した俺さん、うっかり原作主人公さんを殴り飛ばして辺境に追放されてしまう~原作を履修済みなので辺境を開拓していくことにした。俺の開拓した辺境はやがて立派な大国になっていく

にこん

第1話 【悲報】殴り飛ばして追放される


「おい、お前」


俺は庭で素振りしていると声をかけられて振り向いた。


異世界転生して7年。現在12歳。

俺は悪役に転生していた。そして後悔しないようにずっと努力をしてきた。


これはその一貫だ。


「不敬であろうよ。この俺がここにいるのに素振りをしているなど」

「だからどうしたんだよ」


俺がそう答えるとそいつは偉そうに右手の人差し指を地面に向けた。


「土下座しろ」

「なんで?」

「土下座しろよ!土下座!早くしろ!」

「意味が分からんな。俺が土下座する理由を述べてみよ。なぜ俺がお前に土下座を?」

「俺がしろといったらしろ。俺は偉いんだぞ?」

「知らねぇよ」


そう言いながら素振りを続ける。


理解ができない。なんで俺が土下座を。

そう思っていたら。


パシっと俺の腕を掴んできた。


「土下座だって。はーやーくーしーろー。ばか。言うこと聞け」


そう言って俺の頭を叩いてきた。


イラッ。


俺はそいつの腹に軽く膝蹴りを食らわせてやった。


「触るなよ俺に」

「おごっ……」


その場で腹を抱えてうずくまっていた。


すぐに立ち上がって俺に反撃をしてきたが俺は顔面を殴り飛ばしてやった。


「うげっ!おごっ!」


そのまま吹っ飛ばされていく男。


「もう話しかけんな」


俺がそう言うと男は泣いて走っていった。



その日の夕方俺は父親に呼び出されていた。


応接間のソファに座っていると、対面にふたりの男が腰をかけた。

昼間に会った男と、その父親だった。


「うちの息子を殴ったそうだね」

「だから?」


俺はふんぞり返って答えてやった。


「先にケチ付けてきたのはそっちだよ?」


俺がそう言うと父親は言ってきた。


「おい、ルイス、やめろ。謝れ」

「なんで謝る必要が?」


俺はそう言って逆に男の子を見た。


「そいつに謝らせろよ。俺は何も悪くない。急に土下座しろと言ったのはそいつだ」


俺がそう言うと男の父親はこう言った。


「ルイスを辺境へでも連れて行け」


そう言って相手の親子は出ていった。


俺を見ている父親はこう言った。


「お前とは縁を切るぞルイス。だが最後の温情だ。最期くらいは周りに人をやろう」

「なんの話だ?」


俺がそう言うとこう返してきた。


「お前を我が家の所有する辺境に追放する」



俺は辺境に連れてこられていた。

寂れた荒れ果てた小さな村だった。


父さんは馬車に乗って声をかけてくる。


「達者でなルイス。お前が殴ったのは勇者の息子のユージンという子だ」


そこで俺は思い出していた。


勇者のユージン、そういう名前のやつが出てくるラノベがあったことを。


いや、ラノベの世界なのは知っていたんだけど。


(あいつが主人公だったのか。うっかり殴り飛ばしてしまった)



反省反省。


ちなみに俺はこの主人公と対立して追放される物語上の悪役だ。

そして追放された俺はモンスターに襲われて食われる、それが俺を待ち受ける破滅の運命ってやつだった。


父さんに目を向けた。


「ではな。ルイス。達者でな」


そう言って父さんは馬車に乗って帰って行った。


こうして俺は辺境に追放されることになった。


(まぁいっか。あんな勇者の一族にペコペコすることしかできない父親こっちから願い下げだ)


俺はそう思いながら村の中に入っていくとさっそく出迎えがあった。


「これはこれはルイス様。よくぞお越しくださいました」


ぺこり。

頭を下げてくるのは12歳くらいの薄汚れた女だった。


ここは辺境の土地で我が家が飼っている奴隷が暮らしているような場所だからだろう。

これだけ薄汚れてるのは。


原作でもそうだったはずだ。


「名前は?」

「ミーシャです。よろしくお願いします。なんにもない村ですがゆっくりしていってくださいね」


俺は答えてやることにした。


「なんにもない村?」

「はい。特になにもないチンケな村です」

「俺がいて君がいるじゃないか」


そう言って入村していこうとしたそのときだった。


「わ、私には価値なんてありません」


そう言ってくるミーシャだった。


別に変にネガティブになられても困るので言っただけの言葉だ。


入村してみたそのときミーシャが咳をした。


「げほっ!」


振り返ってたたずねる。


「この村特有の流行病ってやつか」

「は、はい。げほっ!ルイス様はお気をつけください」


ちなみにこの病の原因だが俺は知っている。


「その原因を明日排除しに行こうか」

「え?」

「その咳を引き起こしてるのには元凶があるんだよ」


俺はそう言ってから聞いた。


「とりあえず今日は寝たい」


勇者を殴り飛ばしてここに来るまでに時間がかかってしまったからだ。


「どこで眠ればいい?」

「どこでも構いませんけど、一応一番綺麗な場所は確保してあります」


そう言われて俺はミーシャに寝床に案内してもらうことにした。


一番立派な建物だった。


「昔は貴族さんが避暑地として使ってたみたいで、その残骸です」

「まぁ、いいだろう」


中に入って俺は呟いた。


「ホコリがすごいな、それからものが散乱している。ホコリはとり払ってものを整理しよう」


【ウィンド】


風魔法を使いホコリは外に流してものを整理していく。


「す、すごい!風魔法で一切建物を傷付けずにホコリだけ外に出してしまうなんて!魔法でこんなに細かいことまでできるなんて!さすが貴族の方!」


俺は笑って言った。


「そんなに褒めなくてもいいよ。この程度、誰でもできるから、今度教えてあげるよ。君ならきっと上手くなる」

「ほ、本当ですか?!」


俺は頷いてそのまま一番高そうな部屋を選んでそこを寝床にする事にした。


「君はどこで寝てるの?」

「普段はここだったのですが、ルイス様がここを使うとなると出ていかなくてはなりませんね」

「ここを使うといい。それと、もし外で寝ている人がいるのならここに入っていいと伝えて欲しい」


俺はそう言って次に風呂を探すことにした。


この世界には風呂がある。

貴族以外はあまり入らないみたいだけど。


歩いてるとそれらしい部屋があった。


「この部屋はなにに使うのですか?」

「体を洗う部屋だよ」


俺はそう言って風呂場も綺麗にしていく。


「ウォーターボール」


呟くと水が汚れを剥がしていく。

そして、ボールは汚れを包み込んで部屋の外から屋外へ。


これでキレイになった。


「おぉ……さすがの魔法でございますね」


そう言ってるミーシャの横で今度は湯船にファイアで加熱したウォーターボールをいれた。


ドボン!


一気にお湯の完成だ。


「す、すごい!綺麗なお湯がこんな一瞬で?!」

「こんなことで驚かないでよ。まだまだ基礎魔法だよ?」


俺はそう言ってミーシャを浴室から追い出したが、ふと気づいた。


「そういえば、風呂には入ったことがないんだよね?」

「は、はい」

「中に入りなよ。入り方教えてあげるから」

「ほ、ほんとですか?!」


こうして俺はミーシャと風呂に入ることにした。

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