こわいチーズ



 株主優待のカタログを手渡され、好きなものを選んで良いよ、と父から決定権を譲り受けた私。スイーツやお肉など、美味しそうなものがたくさんあります。散々迷った挙句、普段自分では買わないものを選ぼうということに。


 注文して手元に届いたのは……ちょっとお高いチーズセット。


 普段はスライスチーズやスティックチーズしか食べないので、真空パックに入っているチーズたちにまず驚きました。

 ゴーダ、パルメザン、カマンベール、ミモレット、チェダー。普段食べているものよりも、それぞれ癖があり、濃くて、旨みがぎゅぎゅっと詰まっているチーズたち。さすが、高級チーズ。手が止まらない。小分けになっているけれど、美味しくて家族でじゃんじゃん開けてしまい、あっという間に残りひとつに。


 でも、そこで手が止まりました。


 残っていたのは……エンボルグダナブルー。ブルーチーズ、つまり青カビタイプのチーズです。


 ブルーチーズといえば、独特の癖があって好き嫌いが分かれることで有名ですよね。あと,悪夢を見るなんて噂もありますし。そして何より見た目がすごい。

 普段食べるものには無い青緑色に怖気付き、そこから放置。いつか挑戦してみたいけれど、今じゃなくていいや。そんなこんなで冷蔵庫に眠らせたままでした。


 「もう賞味期限近いし、開けよう!」


 意を決してエンボルグダナブルーを開封したのは、株主優待のチーズセットが届いてからしばらく経った午後でした。テストが終わり、ほっと一息つけたお昼時。冷蔵庫に眠っているチーズを見つけ、賞味期限を確認してみたところ残り一週間。このまま食べずに捨てるのも忍びない。ちょっとチャレンジしてみよう。幸い明日は振替休日で休み。お腹を壊しても何とかなります……たぶん。


 決めたは良いものの、また少し怖くなって、「ブルーチーズ 美味しい 食べ方」で検索。なるほど、どうやらフルーツやハチミツと相性がいいらしい。キッチンをあさってみると、メープルシロップを発見。これをお供に、人生初ブルーチーズに挑むとしましょう。


 そっと包丁をいれると、意外にもほろほろと崩れて、三角形には切れず。崩れたかけらを、スプーンにこわごわのせて、まずは何もつけずに一口。


……あ、美味しい。


 塩味がガツンと効いていて、コクもあってこれはたまらない。まったりと溶けていくチーズと、青カビのしゃりしゃり。嫌いじゃないぞ。でも、ちょっとこれ単体で食べ続けるには、味が濃すぎてきつい気がする。


 ここでメープルシロップをとろりとひと回し。


 おお、これは合う。おすすめされているだけあります。メープルシロップの甘さがチーズの塩気をちょうどよく消してくれて、よりクリーミーさが引き立ちます。デザートに近い感じ。ついでに、ヨーグルトのトッピング用に買い置きしていたレーズンもぱらり。これも絶品。レーズンバターの親戚みたい。


 結論、もっと早くチャレンジすればよかった。それくらい沼が深いです、ブルーチーズ。食べ切れるか心配なくらいだったのに、ひとりで三、四日で食べ切ってしまいました。ブルーチーズはよくワインに合うといいます。二十歳になって、お酒とのペアリングも楽しめる日がきたら、もっと楽しいんだろうな。

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