炊き立てごはん

 うちの炊飯器が壊れて早数年。それからお米は、お鍋で炊くようになりました。

 炊飯器みたいにピッとボタンを押せばできあがり、というわけにはいきません。

 新しくお米を買うと、試行錯誤するところから始まります。その時の米の品種によって火にかける時間や浸水時間、水の量は違ってくるので、なかなかうまく炊けない。水が多くてお粥みたいだったり、逆に少なすぎておこげばかりだったり。


 でも、その苦労を乗り越え、上手い水加減を見つけると……。ふっくらツヤッツヤ、絶品のお米が炊けるんです。これだから鍋炊きはやめられない。新しい炊飯器を見ても、まだ買わなくていいか、となってしまう。


 お米がツヤツヤな日は必ずおかわりしてしまいます。だってそうせずにはいられないんだもの。まず、フタを開けた時のお米の光り方が違う。一粒一粒がしゃっきり立っている。噛みしめるだけでお米の甘さがわかる。シンプルにそのままでもよし、おかずと合わせてもよし。ふりかけ、お漬物、納豆。卵かけも良いし、ウインナー丼もアリ。アイデア次第でいくらでもバリエーションが効きます。最近のお気に入りは、粒の大きな塩をひとつまみと、たっぷりのすりごまをかける食べ方。ごまの香ばしさと、炊き立てのお米の香り、塩気。たまりません。ごま塩とはまた違った美味しさでやみつきです。


 鍋で炊くようになってから、お米の品種にも注目するようになりました。コシヒカリ、あきたこまち等スーパーに置いてあるものを食べ比べしたり、ふるさと納税でちょっと良いお米を頼んだり。こだわり始めるとけっこうおもしろい。


 いつもベストな炊き加減を保つには、一定の品種で炊けば良いのはわかっているのですが、色々試してみたくなってしまいます。お米のチャートと睨めっこしながら、自分の好みと照らし合わせて見るのもオススメ。たくさん品種がありすぎて迷ってしまいます。それぞれに特徴があり、銘柄の由来があり、つくってくれた方の想いがこもっていると思うと、一粒一粒だいじに食べたくなります。


 家族の中で一番お米を炊くのがうまいのは母。新しい品種のお米でも、数回練習するとすぐに要領を覚え、ベストな状態で炊いてくれます。すばらしい。父はツヤツヤのお米とおこげを同時に、綺麗につくる天才。


 じゃあ私はというと、水加減や浸水時間は同じなのに、いつも極端。やわやわか、カピカピか。どうやら沸騰してからフタをし、弱火にするタイミングが課題みたい。まだまだ米炊きのプロになる道のりは遠そうです。まだ見ぬ品種にチャレンジできるその日のために、美味しく炊けるように、今から修行ですね。


 




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