ある日、それは消えた

ぴえ~ん

第1話 ある日、それは消えた

ペタペタペタ…………。

誰かの足音なのか。

ヒタヒタヒタ………。

歩いているのは人なのか。



男には『夢』があった。

『希望』『願望』……何でも良い。

男はしかしそれを望んではいなかった。

ただただそこに『存在』すればそれで良いと思っていた。

世界がそれを許さなかった。



経験として費やした時間ときが男の『夢』を削り流していく。

積み重ねた人生が男の『夢』をし潰していく。

高みを望めば望むほどに

男の『夢』は勢いよく転がり落ちていった。



いつしか男は『夢』を忘れてしまった。

『夢』の存在を諦めてしまった。

下り坂よりも平坦な道のほうが歩きにくかった。

しかし男は立ち止まろうとはしなかった。



現世うつしよとは刹那のの自分。

誰が『あらわ』れる『世』界なのか。

男の歩みは止まらない。

そこに存在するは『夢』ある『自分』。



積み重ねた経験も流れた時間ときもまた『自分』。

男は立ち止まり空を見上げた。

『夢』は確かに『自分』として『存在』していた。

良かったと男は涙を流した。



ああ良かったと心から思った。



そして男は世界の『夢』と消えた。



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ある日、それは消えた ぴえ~ん @razing-geese

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