仮暮らし

村崎愁

第1話 不運

俺は立石元輝たていしげんき。39歳だ。金も家も女も何もない。名前負けしていると思う、元気もない。

どれか一つでも、金があれば解決するが、日雇い労働しかない。

今日食えて酒が呑めるだけの金しかもらえない。


見た目はそんな悪くはないはずだ。

だが不衛生だからか女は寄ってこない。出会う機会も無い。

風呂はもう二週間入っていない。臭いが気になるが、まぁ仕方ないだろう。風呂も金がかかる。


日当4000円いくかいかないか。職業安定所の前はいい仕事をもらおうと、早朝からダンボールを敷いたジジイ共が沸く。


今日は運良く日当5000円の仕事につけた。

500円ババアに口淫をお願いしてもいいだろう。


500円ババアは歯が全て無い。本番行為も500円でできるが、俺はそれはしない。

恐らく病気も持っているだろうし、60歳過ぎたババアを抱く気にはならない。

工事現場のブロック運びを死ぬ気で行い、5000円を手にした。


テントの中、土に埋め込んだツボの中に宝物と少しの金が入っている。そこに余った金をしまい込む。

宝物は魚を乾燥させたものだ。所謂、非常食だ。

これは特別な日に酒と共に食べようと思い取ってあるが、特別な日がない。


俺は今後どうなっていくのだろうか。想像だにしていない。

考えないようにしているのかもしれない。


500円ババアに500円玉を渡して口淫をしてもらう。

路地裏の隅で、乾いた新聞紙やチラシが風に乗り泳ぐ中、ババアの顔は見ないようにして絶頂を迎えその日は終わった。


翌週になると、どうも股間がむず痒い。近くのテントの爺に聞くと、同じ時期に500円ババアに口淫してもらって昨日から股間から膿のようなものが出ているという。


やられた。病気をもらってしまった。痒いだけならまだいいが、膿やただれが出てきては怖い。

壺から金を出し、隣町の医者に行く。もちろん健康保険などないので10割の全額負担だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る