猫神家の一族

希藤俊

第1話 魔界都市

 東京都の表舞台の中心は、黄金都市立川である。その立川市に隣接する昭島市は、東京都の裏舞台の中心であり、異界へと繋がる扉が多在する魔界都市と言われている。


 日中の穏やかで平和な昭島市は、夜の帳が下りるとともに、背筋を凍らす妖気と妖しい魔気に溢れ、人外のものたちが彷徨う魔況に変貌する。


 黄金都市立川市の象徴として屹立する立川駅を発車し昭島市拝島に向かう『あの世行き』などと呼ばれる路線バスも、夜間には魔除の御札を車体中に貼り重ね、運転手も身体中にお経を書き記し、白装束を纏って勤務するのが日常となっている。


 かの路線バスは立川を出発した後は、途中の停留所に極力止まらず、ひたすら目的地に向かう。夜間のバス内には、高僧が読むお経が途切れることなく流れ、香さえ炊かれている。


 拝島に向うバスの運転手のうち、翌日の朝日を見れた幸運な者は、数少ないという噂は、あながち嘘とは断定できないようだ·····

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る