第14話 魔物討伐3
馬車を降りて周囲を見回すと魔術師や剣士が訓練をしていた。
そう、ここがこの世界最大の軍であるザトム軍の本拠地だ。
ザトム軍はどの国にも属していない軍であるが、世界各国から支援金を集めてあるため多額の軍事費を持ち、兵士も超一流の魔術師や剣士だけしか入ることのできないエリート集団だ。
俺が今通っている魔法学院をはじめ剣士学院やその他の学院の生徒はこの軍に入るのを夢見て日々努力をしている。
神リリスに会う前の俺はこの軍に所属していた。
所属していたといっても他の連中と違いチームを組まされることなく一人で魔物を討伐していたからこの軍に友人やライバルはいない。
まあ、顔見知りはいるだろうけど。
「俺の正体がばれないように注意しないとな。」
「なんか言った?」
「いや、何でもない。それより、今からどこに行けばいんだ?」
「校長先生は、到着したらまずザトム軍の隊長に会いに行けと言ってたわよ。何処にいるのかしら?」
隊長に会わないといけないのか、あまり良い思い出がないな。
「それなら俺が案内できるはずだ」
俺は昔(数日前だけど)の記憶を頼りにシエラを隊長のいる場所まで案内する。
「ノア(世界最強の魔術師)ってもともとザトム軍の所属だったかしら?」
シエラは俺がザトム軍の拠点について詳しいことに疑問を覚えたのか俺に質問してきた。
「そうだ。てか、よく知ってたな。」
俺は自分の知名度をあまりよくわかっていない。
「まあね、私の先生がよくあなたの話をよくしていたわよ。世界最強の魔術師は先生の憧れだって。」
憧れと言われて悪い気はしなかった。
そんな話をしていたらザトム軍の隊長の部屋の前に到着した。
「一応確認だが俺の正体は秘密にしといてくれ。それと、隊長は顔見知りだからバレそうになったらさりげなくフォローしてくれ」
俺はシエラに自分の正体の秘密について念押ししておいた。
「分かったわ」
シエラは緊張しているのか一度大きく深呼吸して隊長室の扉をノックした。
「入れ」
その声を聞き、俺とシエラは隊長室に入った。
そこにいたのはザトム軍隊長と副隊長、それと知らない顔の人物が2人いる。
おそらくこの二人は剣士だろう。
「よく来てくれた。お前ら二人は魔法学院の生徒だろ。」
そう言ってきたのはザトム軍の軍隊長だ。
「はい、魔法学院から来ましたシエラです」
「ノアです。」
シエラが挨拶したので俺も一応挨拶しておいた。
「ノア!!」
軍隊長はノアというと少し反応(怒ったような声)をしたがさすが隊長というべきか一瞬で冷静さを取り戻し普段どおりに戻った。
「すまない、少し取り乱してしまった。最近ノアという名前のうちのエースが何の報告もなしに姿を消したから俺らは苦労しているんだ。戻ってきたらあいつに死ぬまで腕立て伏せを死ぬまでやらせなければならんな。」
この瞬間、俺は正体を絶対に隠し通さなければならないと改めて思った。
「隊長、そろそろ本題に入りましょう」
そういったのは副隊長で俺が唯一頼りにしていた人物だ。
「そうだな、まずは自己紹介からだ。俺の名前はゲイル、このザトム軍の隊長だ。」
「私は副隊長のアロイです。」
副隊長は女性のような見た目をしているが男だ。
「君たちをここに呼んだ理由は各々の校長から伝えられていると思うが魔物の討伐だ。現在この拠点近くの森から魔物が進行してきている。今まではうちのエース(世界最強の魔術師)がいたから余裕で進行を止めることが出来たが、最近そいつが姿を消してしまって今は魔物と戦力が拮抗している。そこで、魔法学院と剣士学院に協力を要請して君たちに来てもらったわけだ。具体的な作戦は副団長に話してもらう。俺からは以上だ。」
「それじゃあ、具体的な作戦を話します。君たち学生は森の西側を守ってもらいます。私たちの調査によると西側から来る魔物は比較的弱いゴブリンなどを中心に進行してきています。今現在ザトム軍の新人兵士が西側の防衛をしているので君たちはそのサポートをしてください。君たちの出番は明日からなので今日はゆっくり休んでください。宿と食事は用意してあるので後ほど案内します。」
一通りの説明が終わり俺たちは副団長に連れられ、宿へと向かった。
俺が宿のベッドで休んでいると扉からノックの音が聞こえた。
扉を開けるとそこにはシエラが立っていた。
「何か用か?まあ、とりあえず上がれよ」
俺は自分の部屋にシエラを招き入れた。
「別に大したことではないのだけれど、ここに来る途中、私に魔法を教えてくれるって言ったわよね。明日が魔物討伐の日だから今のうちに少しだけでも魔法のレベルを上げておきたいの。」
なるほど俺に魔法を教わりに来たのか。
確かに今のシエラのレベルでは弱い魔物相手でも群れで来られたら対処は難しいだろう。一日ではあまり変わらないだろうがやらないよりはましか。
「そうだな、じゃあ今から訓練場に行くか」
俺がそう言ったとたん再び部屋の扉からノックの音がした。
扉を開けるとそこには剣士学院の生徒がいた。
「休んでるとこ申し訳ない。まだ自己紹介をしてなかったと思って。」
「そうだったな。とりあえず上がってくれ。」
俺は剣士学院の生徒を部屋に招き入れた。
「とりあえず俺から自己紹介していいか。俺の名前はマルク・アーゼン剣士学院3年でSクラス、ランキング1位だ」
どうやら剣士学院にもランキング制度はあるらしい。
「私の名前はジュナ・アリエル剣士学院3年でSクラス、ランキング2位です。明日はよろしくお願いします」
ジュナという生徒は少し人見知りなようでさっきから目が下を向いている。
「じゃあ次は私ね、私の名前はシエラ、魔法学院1年Sクラス、ランキング3位よ。よろしく」
「俺はノア、魔法学院一年Eクラスだ。よろしく」
俺がEクラスというと明らかに剣士学院の生徒は動揺していた。
「ノアは、Eクラスだけど実力はあるのよ。安心して」
シエラがいい感じにフォローをしてくれた。
「それじゃあ、自己紹介も済んだし僕たちは部屋に戻るよ。明日はよろしくね」
マルクはそう言ってジュナを連れて自分たちの部屋に戻っていった。
「いい人たちね」
「ああ、そうだな。それじゃあ俺たちも訓練場に行くか」
そう言って俺とシエラは訓練場に向かった。
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