第13話 魔物討伐2
俺とシエラが魔物討伐の準備を済ませて校門に行くとすでに馬車があった。
「お待ちしておりましたノア様、シエラ様。私は今回お二人を案内させていただくギースと申します。」
ギースの見た目は80代後半くらいだが魔力量は人一倍多い。きっと全盛期は軍でそこそこの役職に就いていたのだろう。
「ささ、どうぞ二人とも乗ってください」
そういわれて俺とシエラは馬車に乗った。
「ギースさん目的地まではどのくらいかかりますか。」
「そうですね、順調にいけばおおよそ一週間くらいで到着すると思います。」
シエラは馬車が苦手なのか一週間と聞いてがっかりしていた。
「馬車苦手なのか?」
「違うわよ、ただノアが転移魔法を使えば今頃到着してるのに。」
シエラは俺にしか聞こえないくらいの声で愚痴をこぼした。
確かに転移魔法を使えば今頃目的地に到着しているかもしれないが確実に俺の実力がばれてしまう。
というわけで俺は転移魔術を使わない。
俺はシエラを元気づけるために話題を変えることにする。
「シエラはSクラスで友達とか出来たのか?」
「いや、Sクラスは友達を作るとかそういう雰囲気ではないわね。なんか皆ライバルというか、敵というか。まあ、そんな感じね。」
「なるほど、つまりぼっちというわけか」
俺がそう言うとシエラが鋭い目で俺を睨みつけてきた。
しまった、心の中で喋ったつもりだったが声に出ていたようだ。
「そうよ、私は友達がいないわよ」
完全にシエラは拗ねている。
次の俺の発言で今後のシエラとの関係が傾く可能性がある。
慎重に選ばなくては。
「何言ってるんだ。俺達は友達じゃなかったのか?」
やばい、自分で言っててめちゃくちゃ恥ずかしい。
「そうね、あなたは私の友達よね」
「ああ、そうだ俺たちはもう友達だ」
恥ずかしかったが、シエラの機嫌が直ったので良しとしよう。
「それで一つ頼みがあるんだが、俺の友達がシエラにお礼がしたいと言っているんだが一度会ってくれないか。もちろん俺もその場には居るつもりだ。」
俺はレインとの約束を果たすためにシエラに提案してみた。
「お礼って私何かしたかしら」
「すまない、説明不足だった。特別試験の時に俺はお前から黒の魔法石を奪ってレインを試験に合格させたのは知っるよな。その魔法石を俺がお前を倒して奪ったって言ったら俺の実力がばれる可能性があるから、お前に事情を話して譲ってもらったって説明したんだ。」
俺は事の経緯をそのままシエラに説明した。
「なるほど、確かにそうするのがベストね。だけど私たちの関係性はどう説明したの。まさか恋人とか言ってないわよね」
シエラは顔を真っ赤にしながら聞いてきた。
恥ずかしければ言わなきゃいいのに。
「普通に知り合いとだけ言っといた」
明らかにシエラは残念そうな顔になった。
何なんだこいつは。
「まあ、分かったわ。都合のいいときに連絡して頂戴。私は基本的に寮で勉強か、魔法の訓練をしていると思うからいつでもいいわよ。」
「助かる」
俺とシエラはその後も他愛のない話をずっとしていた。
「ドン!!」
急に馬車が止まり馬から降りたギースさんが俺たちが乗っている場所に駆け寄ってきた。
「すみません、いつの間にか魔物に囲まれていました。私は前方の魔物を相手しますので、お二人は後方の魔物を倒してください。」
「分かりました。行くわよノア。」
俺はシエラに腕を掴まれていやいや馬車から降りた。
俺たちの前にはゴブリンが数十体いる。
普通の魔術師なら苦戦するだろうが俺なら余裕だ。
俺は後方を確認する。
よし、ギースさんは後方でゴブリン討伐に集中している。
「シエラ、今から魔物討伐に行くわけだけど魔物と戦ったことあるか?」
「無いわよ」
シエラは魔物との戦闘をしたことないせいか少し怯えている。
「この魔物はゴブリンと言ってあまり強くない部類だ。」
「そんなこと知ってるわよ。教科書で見たことあるもの」
「じゃあ、弱点は知ってるな。」
俺はシエラに確認する。
このくらい答えてもらわないとおそらく今から行く魔物討伐ではシエラは足手まといになってしまう。
「もちろんよ、ゴブリンは火の魔法に弱い」
よし、しっかり勉強しているな。
これなら魔物討伐でも安心だ。
「じゃあ、俺がお手本を見せるからしっかり見て学べ」
俺はシエラにそう言ってファイヤーボールを出した。もちろん無詠唱で。
「ギャーー」
ゴブリンたちは悲鳴を上げて一斉に燃え、灰になっていく。
「こんなのどうやって見て学べっていうのよ」
シエラは俺に文句を言ってきた。
「いや、意外とシエラの魔力量ならこれくらい数週間で出来るようになるぞ」
「本当」
「本当だ」
「今度教えてやる」
俺がそう言うとシエラは嬉しそうな顔で「約束よ」といった。
後方を見るとギースさんもゴブリン討伐が終わっていた。
やはり彼の魔法の技術は相当なものだ。
討伐を終えたギースさんはこちらに向かってきた。
「なんと、もうあの数を討伐し終えたのですか。いや、なかなか魔法学院の生徒もあなどれませんな。」
ギースさんは笑っている。
おそらく魔術の戦闘が好きなのだろう。
「では、そろそろ出発しますか。」
「ギースさん、休憩しなくても大丈夫ですか?」
俺はギースさんが心配になり一応声を掛けた。
「心配無用です。この年になっても体力は十分にありますから。」
その年でこの体力、この人は恐ろしいな。
その後一週間かけて俺たちは目的地に到着した。
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