第11話 特別試験4

Eクラスのメンバーが集まっている場所に近づくとロイドが駆け寄ってきた。




「ノア、レインは無事か?」 




ロイドは不安そうな顔をしながらレインを見た。




「大丈夫、気を失っているだけだ。」




「よかったーーーー」




ロイドは安心したのか膝から崩れ落ちた。




「現時点を持って特別試験を終了する。生徒は担任の指示に従って教室に転移するように。」




学年主任の先生が全体に呼び掛けている。




「Eクラス集まれー」




担任のクラウスがEクラス全員を集合させた。




「これで1回目の特別試験は終了だ。皆よく頑張った。」




クラウスは嬉しそうな顔をしながらEクラスのメンバーの顔を見渡した。


本当にこの人はいい先生だ。




「とりあえず魔法石を回収する。出席番号順に俺に提出してくれ。提出し終わったら、各自この魔道具を使って転移してくれ。使い方は前回と同じだ。転移先は魔法学院Eクラス教室に設定してある」




クラウスがそう言うと出席番号が一番初めの生徒から魔法石を提出していく。


何人かは泣きながらクラウスに抱きしめられていた。


きっと合格出来るだけのポイントを集められなかったのだろう。




「次、レイン」




クラウスがレインの名前を呼ぶと、俺はレインを抱えながらクラウスの前まで歩いた。


俺はレインのポケットから黒色の魔法石を取り出してクラウスに提出した。




「これ、レインの魔法石です。今、見ての通り気を失っているので代わりに俺が提出しに来ました。」




クラウスは黒色の魔法石を見て一瞬驚いていたが「受け取った」と言って深くは探ろうとしてこなかった。




俺はこの瞬間改めてクラウスが担任で良かったと思った。




ついでに俺の魔法石も提出してレインを抱えたまま魔道具を使い教室まで転移した。






俺は教室につくとすぐにレインを抱えたまま保健室に向かった。


保健室のベッドでレインを寝かせ少し経つとロイドが入ってきた。




「レインの調子はどうだ?」




「さっきよりも呼吸が安定している。もうすぐ目を覚ますはずだ。」




「そうか。」




ロイドはほっとした顔でレインを見つめていた。




「とりあえず教室に戻るか」




俺とロイドは教室に戻り自分の席についてクラウスの到着を待った。


教室の席が何席か空いていたが保健室にいるEクラスの生徒はレインだけだったからおそらく試験に合格出来ずに退学になってしまったのだろう。




数分後クラウスが戻ってきた。




「みんなお疲れ様。残念だが退学になってしまったクラスメイトが数人いたが、ここに残っている生徒は試験を乗り越えて見事合格できた者達だ。だが、安心するにはまだ早いぞ。数か月後また特別試験がある。それまでに魔法の訓練を毎日実施すること。そうすればきっとまた合格できるはずだ。今日はもう疲れただろう。皆今日はゆっくり休むように、それでは解散。」




クラウスがそう言うとクラスメイト全員が一斉に寮へ向かっていく。




「ノア、一緒に帰ろうぜ。」




ロイドは俺の首に腕を回してきた。


良かった、落ち込んでいると思っていたが立ち直ったようだ。




「すまない。少し用事があるから先に帰っててくれ」




「しょうがないな。じゃあ、またあとで。」




ロイドと別れ俺は屋上へ向かった。




「遅かったわね」




屋上につくとそこにはシエラがいる。




「すまない。」




「まあ、いいわ。とりあえず約束通りすべてを話してもらうわよ。」




「話す前に一つだけ約束してくれ。今から言う話は他言無用で頼む。」




俺はシエラを信用しているが念のために口止めしておいた。




「もちろんよ、別に初めから誰かに話すつもりなかったし。」




「なら安心だ。そうだな、まず初めに俺は世界最強の魔術師だ。」




俺は自分の正体をカミングアウトしたが以外にもシエラは驚いていなかった。




「やっぱりそうだったのね。あなたが転移魔法を使ったときになんとなくそうだと思っていたわ。転移魔法を使える魔術士なんて私が知っている限り今生きている中では世界最強の魔術師だけだもの」




なるほど知ってたのか。


通りで反応が薄かったわけだ。




「それで、他に知りたいことはあるか?」




「じゃあ、あなたは覚えてないかもしれないけど私、昔魔物に襲われたとき世界最強の魔術師に助けてもらったことがあるの。その時はもっと老けていた気がするのだけど………。」




老けていたって失礼だな。




「そのことに関しては、神様が若返らせてくれたとしか言えない。俺も未だによくわかってないんだが本当のことだ。」




シエラは頭に手を当ててうずくまっている。


いきなり神様とか言われたら混乱するのも無理もないか。




「とりあえず信じるわ。次はそうね、なぜあなたはその実力を隠すの?本当ならSクラス1位だってとれるはずなのに」




「平穏な生活を送るためだ。」




俺はシンプルで簡潔に答えた。


そのあともシエラからの質問攻めは続き2時間が経過した。




「そろそろいいか」




俺は疲れてきたので話を切り上げようとした。




「そうね、大体のことは分かったわ。あなたは世界最強の魔術師でこれからも実力を隠して学園生活を送るってことでいいのよね。」




「そうだ、俺はこれからも実力を隠し続ける。だから困ったことがあったら助けてくれ。」




「しょうがないわね、あなたには昔助けてもらった恩もあるし助けてあげてもいいわよ」




シエラは少しうれしそうな顔をしていた。


その後、俺はシエラと別れ寮に戻った。


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