第4話 夕涼みの街灯
私は今
以前の職を辞めて
全く違う施設で働いている
疲れ果てて家に帰れば
染み付いたような汚れを流し
落ち着いて角氷にアルコールを注ぐなら
書斎の大きな窓の外にあるベランダに出て
煙を燻らす
此の場所から見えるのは
一本だけの街灯
早朝には
灯りの消えた街灯の下を歩くスーツ姿が見える
時は過ぎ
日が暮れ始めると
それぞれの仕事の
それぞれの理由があるのであろう
明かりを灯し始めた道の下を潜り歩く人の姿を見れることは
殆ど無い
家々の窓から漏れる光は暖かく
団欒のテーブルに並べられた小さなお皿たち
男が帰って来たなら食事を並べる母親の姿に
子供たちは歓喜の声を上げ
譬へどんなに疲れていても
笑顔を忘れない男
余程に疲れているであろうと思うが
それには触れずに暖かい食事を出す女
奇跡など望まずに
ただ生きていこうとする姿に
私は目を瞑り幸せを願う
夏の夜に吹く一陣の風に目を開ければ
いつものように
一本だけの街灯が
帰り道を照らしていた
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