散歩

九月十二日

 近頃は意識しないとわからない程度だが、日が少しずつ短くなってきた。最低気温は予報では二四度と、七月の下旬頃とほとんど変わらない程度だと思うのだが、体感温度としてはその頃よりも涼しく感じられる。いまだに最高気温は三十度を超え、真夏日と連日ニュース番組では報じているが、こういうふとした時に少しずつ秋が訪れているのを感じることができる。


 朝の日の出の時間が少し遅れ、空を走る雲の形にも夏の雲とは違う形が紛れ始め、田んぼの脇を通り過ぎれば、膨らみ始めた稲穂から微かに米の匂いがした。

 この時間はまだ薄暗いが日の出までもう少しという時間で、東の空が地平線からオレンジやピンクの光を放ち、朝の訪れを感じられる。

 家の中で時計だけを見ていると、こんな時間に外を歩いている人などいないと思うが、こうして実際に外を歩いてみれば意外にも人が多い。

 健康のために歩く人や、犬の散歩をする女性、毎朝のジョギングを日課にしている人、出勤する人など、様々な人と行き交う。


 かくいう私も健康のためのウォーキングが目的で出てきていた。今朝はなんだかいつも以上に空腹で、歩きながら「今日は早く切り上げようかな」などと怠け根性丸出しの気分で普段よりダラダラと歩いていた。しかし不思議なものでそんな適当な気分でもしっかりと体は体力を消費しているらしく、歩き始めて三十分も経てば、顔や首を汗が流れ落ちるほどに体が温まってきていた。

 その頃にはもう折り返し地点を通り過ぎ、私にとっては復路になるが、向かい側から結構な人数が歩いてこちらに向かってくる。さながら朝の運動のラッシュアワーだ。私と逆向きからの復路と考えることもできるが、歩く速度から往路であると感じられた。元気いっぱいなのだ。対する私は息も荒くいかにも疲労困憊といった感じでなので、彼らから見ても「帰る人なんだろうな」と思われているに違いなかった。


 そうして残るところあと五分程度の道のりに来た頃には、頭の汗も頭皮をつーっと伝うのが感じられるほど鬱陶しい量に増えてきていた。顔の汗のせいでメガネはあげてもあげてもすぐにずり落ち、気分は最悪。「タオル持ってくればよかった」などと考えながら残り数分の道のりが永遠に感じられるほどに不快感はマックス。家が見えてきたところでようやく汗でイライラした気分も落ち着き始めた。

 家に着いて汗をタオルで拭いた時の爽快感といったら。エアコンの効いた部屋で寝転がった時の気分といったら。

 まさに天国。運動って終わった後の休憩を楽しむためにあるのかもしれない。

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散歩 @mrsatom

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