第7話 スカーニーの忘れ物

ヴァージニアとアーサーとジョセフは当日の朝10:00に11号の前に集合した。今日はいよいよ2階の大掃除の日だからだ。

重曹、洗剤、バケツ、ほうき、ぞうきん、モップ、ウエットティッシュに100円ショップで購入した便利グッズ。

初めて入る11号の2階に3人は少しだけ緊張していた。

めぐみは今日セオとスチュワートと新学期に向けての準備があるとかでいない。帰宅前に片付けてしまうことを約束した。


11号の2階は令和次代の世界一有名な部屋だといえるかもしれない。

スカーニーがめぐみが心配だからという大義名分のもとにめぐみのためだけに作った監視部屋だからだ。この部屋を世の中では「性加害」と呼ぶこともあるが、これは今更の話ではなく、黒沼衣子もスカーニーと恋人同士だった頃にはやられていた。もちろん、衣子の母親であるエルザ・ヨウも例外ではなかった。


コンセントや電気配線でごちゃごちゃしていることを想像していた。

階段を一歩一歩上がっていくと、「関係者以外立ち入り禁止」という張り紙の横にめぐみの笑顔の写真があった。これもまた盗撮によるものだ。


2階は3部屋に分かれている。どの部屋もきちんとしたベッドメイキングがされ、どの部屋もめぐみの笑顔の写真が飾られている。ちなみにこのことについて、めぐみは今週初めまで知らなかった。スカーニーを盲信していたのは監視部屋の真実を知らなかったからであることは、詳細の説明は必要ないだろう。


Mjustice-Law家の本家という重圧から極度の人間不信であったし、その精神不安定さから酒に逃げてしまっていたことも有名な話だった。黒沼衣子も翠蘭も本気で愛したけれど、スカーニーはついに誰も信じられなかったということもまた事実だ。



2階の監視部屋はスカーニーの人間不信からタイムカードが設置されていた。アプリで入退室がすべて自動記録されている。

2年間の記録はすべて検証済みだ。


部屋の掃除は1日では終わらなかった。

明日はめぐみの部屋と終わり次第エルザ・ヨウのための監視部屋、つまり8号室の掃除をしなければならない。


明日以降、入退室の記録をもとにヴィクトーが入室経験のあるひとりひとりにインヴィテーションカードを順次送付する。

「忘れ物があります、取りに来てください」


忘れ物があります、取りに来てください。

部屋の掃除をしていたらありえないものを発見した。

父親が実の娘に行った行為は性的虐待ではないのか?その虐待行為が組織的に行われていたのではないか?という疑惑が元老院で議題になっている。

この話の意味をタイムカードを刻印したあなたであればわかるはずだ。事情を聞きたい。


忘れ物があります、取りに来てください。

When we were cleaning room11, we discovered something impossible.

Isn't what the father did to his biological daughter sexual abuse?

Could this abuse have been carried out in an organized manner?

This suspicion is being discussed in the Senate.

If you have engraved your time card, you will understand the meaning of this story. I want to hear about the situation.

You forgot something, please come and get it.

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