1章 ライブラ探索編

1章 1話 出会い。

突如、冒険者ギルドから、1つのクエストが発令された。


「第2迷宮内で魔物の大量発生を確認。ギルドに属する冒険者は大量発生した魔物の討伐、およびその原因について調査せよ!繰り返す...」


クエスト発令から10分後、冒険者達は装備を整え、チーム編成を行っていた。


初級冒険者の少女クミンもまた、チームに入れてもらおうとギルド内の冒険者に声をかける。


「すみません、私をチームに入れてもらえませんか?」

「すまんが他をあたってくれ。」

「あの…。」

「すまないな、俺達のチームはもう、いっぱいなんだ。」

「あの…。」


だが、誰も彼女をパーティーに入れようとする者はいない。チーム編成を終えた冒険者達は急いで第2迷宮へと向かっていく。少女をただ一人残して…。


「今回もダメだった。」


クミンは肩を落としたまま、一人で第2迷宮へ向かった。


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【第2迷宮 ニューホテル】

世界で初めて攻略された迷宮。遺跡内は空を突き抜けそうなほどに縦に伸びた建築物が多く立ち並んでおり、車輪のついた四角い鉄くずや棒状のものに三色のガラスがついたオブジェクトなどがそこらじゅうに転がっている。

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本来、攻略済み迷宮では、魔物を内側に閉じ込める結界が起動しているため、魔物は迷宮の外へ出ることはできない。しかし、迷宮内で魔物が大量発生した場合、結界が魔物の数に耐えられず、外へ漏れ出すことが稀にある。その事態を防ぐため、今回のクエストが発令された。


ギルドから迷宮までは徒歩でおよそ30分でたどり着くほどの距離。馬車などの移動手段を使わずとも気軽に行くことのできる場所である。


第2迷宮へとたどり着いたクミンは息を切らせながら辺りを見渡した。第2迷宮入口前ではクエストに参加する冒険者が多く集まっている。クミンは集団から逸れないようにすぐさま合流。しばらくして、冒険者一行の前に屈強な体つきで鋼の鎧などの重装備を纏った男性が現れ、話を始めた。


「諸君!この場に集まってくれて感謝する。今回、現場の指揮を取る、上級冒険者のオルトだ。早速だが今回の作戦では、部隊を大きく4つに分ける。」


先輩冒険者の指示の元、冒険者の集団は4つに分割された。ベテランや実力者中心で編成した部隊が2つ。冒険者歴2~3年の若手中心で編成された部隊が1つ。新人冒険者中心で編成された部隊が1つ。


クミンは一番下の部隊に編成された。


「ベテラン部隊は魔物の討伐、残りの2部隊は大量発生の原因調査を担当してもらう!」


オルトが一通りの説明を終えると、冒険者一同は最終確認を済ませ、迷宮区入口へと向かう。


魔物討伐部隊が先行した後、続けてクミン達調査部隊が迷宮内に突入、その直後のことだった。


迷宮内入口付近で大量の魔物が待ち伏せており、突入してきた冒険者一行に襲い掛かってきたのだ。


突然の出来事で、不意を突かれてしまった彼らは隊列を乱してしまう。次第に冒険者達は個々にバラけてしまい、クミンも大量の魔物の波に押され、何処かへ流されていった。


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「痛っ、ここは…私は確か…」


ふらつく頭を片手で押さえながら、記憶を辿ってみた。どうやら魔物の大群に流されている途中で転移トラップを踏んだらしく、何処かへ飛ばされてしまったらしい。


ズキズキと痛む全身。クミンは眉根を寄せながらも自身の体に鞭を打ちながら全身を起こし、辺りを見回した。


周りは本棚で囲まれており、床には大量の本が散乱していた。まるで王都にある国立図書館みたいな…。


「やあ、気が付いたかい?」


しばらく周囲を見渡していると、突然、上の方から声が幼い少年の聞こえてきた。クミンは慌てて顔を上に向ける。そこにはシルクのようにふわりとした白い髪をなびかせた十四、五歳くらいの少年の姿があり、段々と積み上げられた本の上に腰かけていた。少年は、太陽のような橙色の瞳でクミンを心配そうに見つめる。


「君は...」


これがクミンとヒイロの運命的な出会いの瞬間である。

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