『35年目の亡霊 学童疎開殺人事件』(1980年/土曜ワイド劇場)
監督 真船禎
脚本 佐々木守
原作 斎藤栄
出演 松尾嘉代、南田洋子、名古屋章、長門裕之
戦中派の怨念爆発! 怒りのハイテンションとパワーに圧倒される大傑作!!
35年前、疎開先で亡くなった姉の死に疑念を持った少女漫画家が、その真相を探るうち、関係者が次々に殺されていく。
脚本の佐々木守と監督の真船禎は昭和の『ウルトラマン』シリーズで数々の傑作を手がけた人物(もちろん、それだけではないのだが)。
真船監督は2時間サスペンスのジャンルでも『陰の季節』シリーズ(2000~04年/TBS)などの傑作を放っており、本作では、その特徴ともいえるトリッキーな演出がオープニング明け、開始2分からフルスロットル! インパクトのある素早いカッティングに極端な構図、複数の演者が話しているなかを進んでいく手持ちカメラの勢いと臨場感、過去と現在をカット割りなしでつなぐ回想シーンなど、真船演出の面白さが堪能できる。
そんな本作がやろうとしていることは、戦時中の学童疎開がいかに子どもの人権を踏みにじり、無秩序で暴力が支配するモラルなき飢餓地獄であったか。それは、当時はまだ存命であった戦時中の大人たちに対する「あのとき受けた屈辱、苦しみ、裏切り、忘れてねぇからな!!」という叫びでもある。身に覚えのある人間はブラウン管の前でなにを思っただろう。
戦時中の唱歌(「勝ち抜く僕等少国民」)と放送当時の最新アニメソング(「ぼくドラえもん」と「ハローララベル」)の対比から、戦時中の子どもたちがいかに異常な状況下に置かれていたかを浮かび上がらせているのは印象的だ。
怨念とエンタメ、一見相反するふたつの要素が見事に合致。『ガラスの仮面』の美内すずえがなぜか顔出し出演していたり(ストーリーとまったく関係なし!)、妙にマニアックな見どころも満載。
こんなヤベェくらい面白い作品はそうそうないのだから、BS松竹東急は年一ペースで再放送してほしい。
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