第234話 悲劇の傷跡
まあ、大体どうにかなるなら、なっている話である。
既に実質time over。
とっくに終わった時間を第三者視点で考察する暇つぶし。
But where's my fool?
I have not seen him this two days.
情報を並び替え続ける。信頼度が高いのは、本人が語った台詞。ただ、プロモーションなどのバイアスがかかること、さらに所謂パブリックイメージとの乖離は、美容師との会話で顕著にでた。
美容師が初めてみたヴォーカリスト様とやらは、それが真実なら18歳。
俺が知ったのは「彼」が30歳以降であるとして、その間にバンドとソロで成功している以上、パブリックイメージは更新されていると推察される。
また、プライベートな事象からも心境の変化が台詞に反映されると考えられることから、彼について調べ物をするには時間軸を理解した上で、彼の言動を追うのが1番わかりやすいはずだ。
しかし、ざっくり見た限りバンドが売れてきた24歳ぐらいからソロになってから日本にいた33歳ぐらいまでぐらいまでしか信憑性があるものがなさそう。あとは伝聞レベル。全体的に情報量は多いが信憑性には欠けるとしか言えない。
映像を加工するのは手間がかかる。彼の最初は半世紀近く前なのだから、余計に手間がかかる。であれば、バンド時代のものは、まだ実体が見える可能性が高い。
この「おじいさま」の過去を調べるという、ホラー小説。背徳感が酷い。既に相当な罪悪感を感じている。
これが「カリスマ性」だとすると、その反意語は「冒涜」か?
バンド時代の音楽をサブスクなどを確認する。美容師の証言や記録されたデータからは、この時代は既に結婚されていたとある。
所謂ヴィジュアル系の先駆けだと思っていたから、こんなヴォーカリスト結婚とかわかりやすいイメージダウンが大きなことをカミングアウトしていたことに驚いた。
ファンが減るだろ、フロントマンの結婚なんざ。日本中の女性たちを打ちのめした湯川准教授ですら人気が低迷したのだ。影響は大きいと考えられる。
先輩たちが絶叫していた記憶がある。選ばれる確率は宝くじの当選確率より低い、というか0だと言いたかったが自殺行為だとはわかっていたから黙っていた。真実より我が身可愛さに保身に走ってしまった。現実は非情だ。
月の輪郭が滲み、暁月の明星が綺麗な赤色で輝き、世界が最も暗くなる時間。限られた時間内で貪る情報。「苦い」。
この苦み走った、フレッシュな檸檬を齧ったような苦味と、檸檬を爆弾のように、本屋に置いてやろかと思う苦しみと。
何故か「痛々しい」、第三者からみた「成功者」。
「カリスマ性溢れる美形で美しい歌声のアーティスト」。
この「世界」を慈しみ、嘲笑い、慟哭している。
洒脱な、苦痛。
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