第21話 赤い靴の女の子を連れて行ったのは誰

 童謡「赤い靴」みんな知ってるアレです。横浜の山下公園に像が立ってるアレね。


♪赤い靴ー 履ーいてたー おーんーなーのーこー

♪異ー人さんに 連ーれられーて 行ーっちゃーったー


 ってやつね。あれ、勘違いしてたって人多いじゃないですか。

 大抵誰に聞いても人生一度は「ひい爺さん」に連れられて行っちゃったと勘違いしてる。「いい爺さん」バージョンもあったな。

 あれを勘違いしないでいるためには、最初に文字で歌詞を読むのが一番なんですけど、私「ひい爺さん」と勘違いする前に正しい歌詞を知ったんです。

 でも歌詞を文字で読んだわけじゃないんですよ。じゃあ、どうしたのか。


 別の勘違いをしてたんです。ひい爺さんじゃなくて「いじんさん」だった。でもその「いじんさん」が違ってた。


『偉人さん』だと思ってたんですよ!


 赤い靴履いてた女の子が、偉い人に連れられて行ったんだと思ったんです。きっとね、何か凄い能力があってね、ノーベルとかエジソンみたいな人がその子の能力をどうしても使いたくて協力をお願いするわけね。それで女の子は貧乏な家の末っ子で、自分がその研究者(偉人さん)の手伝いをすればおうちに仕送りができる、お兄ちゃんたちみたいにわたしだってお金を稼いでお父さんとお母さんを助けるの! っていう凄い使命感に駆られてね、ついて行くわけよ偉人さんに。

 それをたまたま見かけた近所の幼馴染(やんちゃ坊主)が「待てぃ!」って止めるんだけど、偉人さんは幼馴染にも「この子は特殊技能を持っていてね」って話をして、なんか納得させちゃう。それでも横浜の波止場まで一緒について行って、船に乗る偉人さんと女の子を見送るわけだ。

 そこで女の子は幼馴染に家族への伝言を頼むのね。

「お父さんとお母さんに話しておいてね、わたし遠い国で青い目の人達と一緒に仕事をしておうちにお金を送るから。心配しないでねって」

 ボオオオオオオオーって汽笛が鳴って、大きな船が波止場から離れていくのを幼馴染は大きく手を振って見送るんだけど、船が小さくなっていくのを見ながら急にビビるんだ。どうしよう、俺あの子を行かせてしまった。

 それで急いで女の子の家に走るんだ、「知らないおじさんについて行っちゃったよ!」って。伝言を家族に伝えると両親が、私たちが不甲斐ないばかりに……って泣くんだけど、女の子の行き先はわからないから、彼女の異国での生活を案じてご先祖様にお祈りするんだよ。


 と、勝手に頭の中にストーリーが出来上がってたんですけどね。

 ある日友人が「ひい爺さんだと思ってた」って言うもんだから「いや偉人さんだろ」って。音で聞いたら私が勘違いしてることなんか誰もわからないんですよ。

 ドヤ顔で上のストーリーを話して「こんな感じやと思うねん」と披露したところで「待て待て、偉人さんちゃうくて異人さんやで?」と。(当時は横浜に住んでたので関西弁ちゃいますけど、横浜ってどんな言葉使ってたか思い出されへん)


 子供の頃、暇つぶしに伝記を片っ端から読んでたんですよ。(『何読んで育ったらこんなモノカキになっちゃうの?』第1話「子供の生活環境」参照)

https://kakuyomu.jp/works/1177354055091913278/episodes/117735405509208274

 エジソンと野口英世は7~8回読んでますからね。北里柴三郎も5~6回読んでる。なもんだから、「いじん」って聞いたら「異人」じゃなくて「偉人」なわけ。そういう変換しか私の選択肢にないわけ。


 「ひい爺さん」「偉人さん」以外に勘違いしたことある人、教えて!

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