第10話 それ、ネタなんか?

 三日前ですかね、胃カメラ飲んだんですよ。飲んだつっても鼻から入れてるから飲んだって言わないのかな。

 で、私は子供の頃からの鼻中隔湾曲症で、右の鼻が狭いんですね。必然的に左の鼻からカメラを入れるわけです。だからいつも胃カメラの後は左の鼻だけ鼻血出ます。


 左向きに寝ると先生が私のお腹辺りのところに立ってカメラを入れ始めます。私の右側(背中側)にあるモニターを見ながら先生はカメラを入れていくわけですが、先生の立っているすぐ横、つまり私の目の前にも一台モニターを引っ張って来てくれて本人にも見せてくれるという親切ぶり。見たくない人は目を閉じればいいし、私のように見たい人はガン見ですね。


 で、まあ、食道を通ってカメラが胃に入っていくんだけど。

 胃に入るまではいいの、入ってからがいつもしんどいのね。ぐりぐり押されるから。先生もカメラから続いてるファイバーをあっちに向けたりこっちに向けたりして、中のカメラの位置を調整するわけ。こっちはわかんないからね、ただピンクの胃壁が見えるだけで。でも先生はどこ見てるかわかるらしい。

「はい、十二指腸入れますよ~♪」って狭いとこからぐりぐり入ってくのね。せまーいとこにカメラを無理やり押し込んでて「エロいな」とか「どっかで使えないかな」とか考えちゃうというね。もう消化器官にエロを見出すようになったらヤバいね。


 んで、ポリープがあったわけです、そこそこのサイズのが二つ。もうね、十四歳にもなるといろいろガタが来るわけ。十四歳歴長いからね。

 せっかく胃カメラ飲んでますから、「ポリープ取っちゃいますね」って流れになります。ファイバーの中に器具を通して、パクッと噛みつくんですね。エロいな。(いや、何がやねん)


 ところがここで事件。ぶしゃーって血が出て来て、カメラの視界が真っ赤。ポリープ取ってもそんなに血なんか出ないじゃないですか。でも如月その日は血の気が多かったの。ちょっとのことで導火線に火が……っていう方の「血の気が多い」じゃないですよ、睡眠3時間でしかも絶食で来てますからグロッキーです。

 そこで先生の驚くべき言葉。


「あー、めっちゃ血ぃ出とる。めっっちゃ血ぃ出とるわ。うわ……めっちゃ血ぃ出とる、どないしよ。めっちゃ血ぃ出とるわ、ほんま、めっちゃ出とる」


 数えましたからね。5回連チャンで言いました。モニターにもめっちゃ血ぃ出とるんが映ってます。見りゃわかるけど、先生そんなに言うんか。おかしくて笑っちゃいました。他の患者さんだったらビビって泣いてるかもしれません。


 その後、止血剤をファイバーの手元からぴゅぴゅーって入れて、血ぃ出とるところにダイレクトアタック! 映像で見ると白っぽい半透明の液体に見えます。実際は透明かもしれませんが、内視鏡映像なんでね。エロいな(なんで?)

 そして先生。


「いっや、めちゃ血ぃ出とる。止まらへんな」


 まだ言うか(笑)


「先生、もう一本」

と、看護師がシリンジを手渡すと、また入れるわけですよ、ぴゅぴゅーって。


「いや、これ止まらへんで。なんで?」


 止めろよ(笑)


 結局3回戦ぶっかけても止まらず、最期に放った言葉がこちら。


「まあ、止まるやろ。はい、カメラ抜きますよ~♪」


 いやいやいや、止めてから抜いてくれよ(笑)


 カメラ抜いてうがいをしている私のすぐ横で、新米の先生がカメラ担当したベテラン先生に質問しているのが聞こえます。


「血ぃめっちゃ出てましたね」

「そやね」

「血ぃ止まってませんでしたけど、あれ大丈夫ですか」

「ああ、消化器官が収縮するから自己圧迫止血されるんで大丈夫」


 ほんとかよ? ほんとだろうな? 勝手に賢者タイムに入るなよ。

 思わず、うがい止めました。


「それ、圧迫止血されるまでに出た血って、酸化鉄状態になって黒いウ〇コが出るって事でいいですか?」

「はい、その通りです」


 結局黒いウ〇コ出なかったので、すぐに血が止まったものと思われます。収縮率凄い! エロいな(だからエロくない!)


 そういえば、逆流性食道炎の疑いで「食道を見るために」胃カメラ飲んだのに、なぜかポリープのことしか書いてないな。先生が面白過ぎたから仕方ないな。ネタに走ってたわけちゃうやろな。

 その後看護師さんに言われました。


「胃カメラ飲みながら笑った患者さん初めて見ました」

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