旧校舎の六番目の窓
ハナビシトモエ
第一章 触り
私が通う高校には七不思議がある。北から南奥への
どこにでもある
一つ目から六つ目が
ただ、七つ目だけが唯一何に障るか明言されていない。
安心材料があるとすれば
昔は肝試しと言って入る者もいたらしいが、どうやっても窓が割れないので的当てガラス破りが成立しないし、定期的にメンテナンスをしているのかドアも開くことはないのだそうだ。
私が入っている美術部の美術室からちょうど窓が六つ並んだ
「入ろうとするものかね」
そう呟くと、サボりに来ていた
「でも高校生にもなって
斎藤先輩はこれでも
「うちのクラスの男子が肝試しにあそこに行くみたいです」
「
「ほんとに」
斎藤先輩は目の付け所はいい。それにしてもうちの部室暑いんだよな。そう言って書道部に帰って行った。
今日は
絵は目の前の旧校舎。不気味さと正方形の
「
後ろから声がして、すぐにそれが
「今日は荒れそうだ。帰りなさい」
天気は晴れ、
「いや、今日も荒れる」
池田先生の言い振りに少し違和感があった。どこか既視感がある。似たことを夢にでも見たのか、
そんなわけないか。
絵を乾燥棚に置き、
「関谷、おっつー」
今日、アホな肝試しに行くらしい。四人が昇降口の外に集まっていた。
身長が低い
メガネの
細身の
この四人は二番カルテットと呼ばれている。
二と次郎の二番カルテット。四人とも私と同じクラスで四人とも大変仲がいい。
「やめときなよ。今日は荒れるって池田先生言ってたよ」
「俺たちは風や雨ごときでは負けない。な、みんな」
田沼の声に三人はうなずいた。全くよくやるよ。
「今日のビッグイベントはこの
「ますますやめときなよ。六番目は」
「ん、関谷は
「じゃなくて
「でも、石が飛んできたと言えるしな」
普段は
「とにかく今日の為に工具を準備した。これで
文化財の保護の意味を分かっていないらしいが、これ以上相手をしても無駄だと思い、後で
「帰る」
「明日になって、真実を見るといい。美術室から
「わかったわかった。頑張れ勇者さん」
ただの
家に着いた辺りで大雨が降った。池田先生すごいな。帰ってきて正解だった。
「雨降られたよ。姉ちゃん、お風呂お先」
後ろから弟が雨に濡れて帰ってきた。
「ずるい、こっちだって汗かいてるし」
「汗なんてクーラーで引くよ。僕は雨だから、
中学に入った辺りから急に
居間に入るとクーラーがついていない。
「お母さん、クーラーのリモコンは?」
奥からお母さんの声がする。
「
「
「とは言ったってさ」
ガサガサしているので、探す気はあるようだ。お父さんに頼まないと、お母さんはつぶやいている。
今日は八月十日水曜日、週末から盆だ。来るなよ。と、池田先生に言われたが、おばあちゃんの家に行ってもさほど楽しくない。弟と違って同年代の女の子がいないのだ。
おばあちゃんに「子どもが閉じこもって絵ばっかり」って
「え、クーラーついてないの? ついていると思ってシャワーだけにしなかったのに、なんで」
十五分くらいすると弟は
「お母さん、私お風呂行くね」
ざまぁ、見ろ。
お母さんはお父さんが帰ってくるまで電池の存在を忘れていたが、さほど困らなかった。雨の後のせいか気温が下がったからだ。
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