第15話
ベッドの上に寝転んで俺はあの事について考えていた。
どうして、樋山さんはあんなに悲しそうだったんだろう。
それに、森さんと水瀬さんの様子もおかしかった。
原因は明莉?いや、三人と明莉は初対面のはず。
なら、俺と明莉の関係?たぶん、三人は俺と明莉が付き合っていると思っているはず。というか、明莉がそう思わせたんだ。
あのあと、明莉にどうしてあんなことしたのか聞いても答えてくれなかったからな。
そんな、いたずらっ子だったか?
ああー、分からない。
もう直接聞いた方がいいんじゃないか?
俺はスマホを取り出す。
……なんて書けばいい?
こういうのって、直接聞いていいのか?
こんなところでぼっちだった弊害が出るとは思わなかった。
俺はずっと画面と見つめあい、気づけば寝落ちしていた。
◇◆◇◆◇◆
かくなる上は、本人に直接聞いてみようと思う。
そう意気込んで学校に来たんだが……
「…………」
朝、挨拶されなかった。
目は合わないし、近づこうとすればトイレに逃げられるわで、完全に避けられていた。
森さんと水瀬さんとは、アイコンタクトは取れるんだけど、樋山さんと一緒に行動している。
……まじか。まさか、話すこともできないとは思っていなかった。
もちろん、俺の席にやって来るわけもなく、俺は久しぶりに一人で休み時間を過ごした。
昼休みになった今も三人が来る様子はない。それどころか、教室にすらいなかった。
「…………」
……もう俺と樋山さんは友達じゃないのかな。
◆◇◆◇◆◇
「しずちゃん、ちょっと」
「え……?」
昼休みになると、美晴と遥香が真剣な表情で私の前に立っていた。
いつもの明るい雰囲気とは違う二人の雰囲気に戸惑ってると、二人は私の手を掴んで歩き出す。
黙って着いていく。足が止まったのは、人のいない空き教室だった。
「しずちゃん、流石にもう見てられないよ」
「私も。捨てられた子犬みたいな表情してるよ」
心当たりしかなかった。心が苦しくなって、表情が歪む。
「しずちゃんの気持ちも、もちろん分かるよ。でも、それで急に間宮っちのこと避けたら、悲しいよ?」
横目で見てた。
悲しそうな表情をしていた。私がそうさせた。
「……分かってる。でも、顔を合わせたら、たぶん泣いちゃうから」
「間宮、雫と話したそうにしてたよ」
分かってる!
それなのに、近づけない。
間宮くんの口からあの子のことを直接聞くのが怖い。
「……このままじゃ、友達ですらなくなるかもよ。まあ、しずちゃんはいいかもね。友達多いもん。でも、間宮っちは?」
どこか煽るような言い方。
でも、怒りは沸かずにその言葉で思い出す。
「ぁ……」
言ってた。
“俺の初めての友達”だって。
恥ずかしそうに告白された。
嬉しかった。間宮くんの初めての友達になれて。
友達になれてから、間宮くんも楽しそうだった気がする。
私は、それを切ろうとしてた。
酷い。身勝手だ。
これじゃ、口だけじゃなくて性格もダメな奴じゃん……
「どうすんの?」
遥香が私に聞く。
「行く。話したい、間宮くんと」
初恋は、残念だけどもう叶わない。
だけど、友達ですらなくなるのは絶対嫌だ。
「ししっ、いつも通りのしずちゃんだー」
美晴が満面の笑顔を浮かべる。
「二人ともありがとう」
私は間宮くんの元に向かおうと足を進める。
教室にいるよね?
「雫」
空き教室を出ようとした所で、背中から遥香に名前を呼ばれる。
私は振り返る。
「雫は優しすぎるから、たまには悪いことしちゃってもいいと思うんだ」
「えぇ、突然どうしたの、遥香?」
「別に、間宮に彼女いるから諦めなくていいじゃん。奪っちゃえ」
遥香がニヤッと悪い笑みを浮かべる。
私と美晴は驚いた表情で遥香を見る。
「そんなもんなんだー。雫の気持ちって」
「そ、そんなことない!好きだから!!」
まんまと遥香の煽りに乗ってしまい、恥ずかしいことを口に出してしまう。
というか、当たり前のように私が間宮くんのこと好きだってバレてるんだ。
顔、熱い……
「それありなの?ありなのかなー?わっかんないけど、恋愛にルールなんてもんはないよね!もう、やっちゃえしずちゃん!」
美晴まで遥香に便乗しだした。
あぁ、こうなった二人はもうダメだ。
……でも、うん。伝えよう、好きだと。
絶対フラれるけど、その時はこの気持ちを捨てる。
そして、友達としてこれからは接する。
よし!驚いて慌てろ、間宮くん!
フラれて屋上でめちゃくちゃ愚痴ってやる!
私は意気揚々と空き教室を出た。
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