六章

未来へのキー



まずは、説明しなければならないの。


私は、パズルのピースを集めている間は楽しかったの。

女神さまが私を導く宝石のような言葉は格言に満ちていた。

そして、なぜかあなたとの楽しい会話にもちらばっていた。

それを聞いているものがだんだん予言に変わっていっても楽しかった。


まさか、それぞれの魂別に合わせた今後の生きる未来をしめす地図になっていたとは思わなかった。

ただ、未来をどう生きれば良いかと言う手掛かりを残していってくれたの。

それを、せっかくだから女神さまが与えてくれたこのインスピレーションに託すことにした。



ある星の瞬く明るい夜のこと。


少女は、物語を作ってみたいと考えた。

羊毛紙とインクを買い込み、現実にある人の言葉に自分なりの解釈を付けたりしながら考えていた。


こんなにきら星たちが囁きあう星を見ていると、素敵な物語が書けそうだと思いながら。


星を見ていると彼方の惑星から届く光にも思いを馳せるけれど、古の人々が星の名前に願いを託した気持ちや祈りを紐解いていく事も少女は小さい頃から大好きだったわ。


何か星にお願いをして名前をつけさせてもらおうかしら?

たとえば、平安とか、安らぎの泉とか、そういったものが少女の今の気分。

明るい水色の光を放つ星が良いわね。

そう思いながら、少女は想像を膨らましていた。


そして思い出すの。

昔の神話を。



太古の昔、人々は神と調和し人間らしく感謝し正しい気持ちで過ごしてたの。

女神のもつ秤は人の魂のカルマ量をはかるものよ?

神の教えを守る間の人間は心が平和で全てが美しく潤い満たされ気分で過ごしていたわ。


けれど、おごりたかぶり醜い心をもつ者が現れはじめて、あっという間に伝染病のように広がり始める。

人々は醜くなりどっちが偉いだの戦いだのをはじめたの。

それを悲しんだ神々は天へかえったというお話よ。


それを、インスピレーションで膨らまし少女なりの作品を作ろうとしていた。

なぜかどんどんアイディアがわいてくるの。



今また現代において、同じことが繰り返されようしていたの。

けれど、今回は神々様は新しい方法を思い付かれたのよ。


神は、今度は罪深い人間の魂を色んな次元へ送り込むことにしたの。


戦いが好きならずっと戦える次元に。

人を泣かせても強欲であるものがいくところよ。

やがて寿命尽きれば魂ごと消滅するの。


また、日和見であった人間や口汚く罵っていたものは、ずっとそういう状況が続く世界へ。

魂は消滅まではしないけれど、この次元へ固定されて抜け出れないの。


そして、最後まで神を信じ人を思う優しさを心に秘めていた良い子には、ご褒美として安全で平和な次元世界で、楽しく創造的な仕事をして生きていってもらう次元へ。


神の仕掛けで、何万年も続く魂の前世からのカルマの集大成として、今の現代に生きる人間の性格に魂の癖が表れるようになっているの。



そして、秤でカルマの重さをはかりあがなわせたり反省させたり、改心させたり多くのチャンスを与えてくださっていたのよ。




あとは、しばらく現実は続くでしょう。

ただ、今後が大きく違ってくるわ。


良い次元の人たちは、人のためを思いなさい、大切な人を。

そうすればもっと誰かに優しくなれるでしょ?

その気持ちを社会にひろげてゆくだけよ?

それが神に好かれ、人間らしく生きることなのよ。


さぁ、神々を信じて、のびのびと豊かな優しい心で生きるのよ。


これが理解できる人は安心なさい。

太古から聖なる人々に神が約束してきたことなのよ。

その約束の時が平和的に自然に今訪れているのよ。


さぁ、あなたたちはできることをただなさい、

人に動物に環境に神に優しいかを心においてね。

少女の出来上がった作品にはこう書かれていた。

書きあがったものを見ると、自分でも感慨深いほど不思議な作品だった。





少女は、物語に散らばった言葉を追い始める。

インスピレーションを探し始める。

周りの声に、身の回りに起こる不思議な現象に意味を見出し始める。


欲深い人間の話を読めば、後から女神が格言を与えてゆく。

人間の欲には限りがない、生きていくモティベーションを否定してはいけない。


そして、死を扱った本を読むとまた少女のインスピレーションに女神が

手を加えてゆく。

その者がマイナス思考に傾きすぎて、人類や生き物、地球にとって良い影響を及ぼさなくなれば死ぬのだと。


そして、マイナス思考や闇にとどまる時間を長く持っていては更なる同じ現象を呼ぶのだと。

つまり、マイナスのエネルギーに囚われてはいけないと。



さらに続く。

自分に嘘をついてゆくと、心と本音に乖離が出来て生命エネルギーが抜けてゆくのだと。


そして、ある秘密を知る。

人間が神とともに作ってゆくこと、神が人間の魂のレベル別に使役してアイディアを現実の形として作っているのだと。



ならば、少女はノートに質問を書いてゆくようになる。

希望とは何って、

明るい兆しや心持の状態


過去とはなに?

今の自分に成長するために、必要な過程で時間的なカリキュラム。

辛い思いをしただけ未来に反比例して開けた未来が待っている。

学びが悟りへと変わる場合の人間、魂のレベル、カリキュラムにより、得られるものは違う。

人間は後悔や反省があるから生かすことが出来るのだと。


幸せを感じて生きるには?

自我より、神との共同作業の方が楽しい。

感謝することでインスピレーションが降ろされ実行してゆく事。

実践してみなさいと。


このインスピレーションの源泉は何?

自我の薄いものほど、インスピレーションが降ってくる。


インスピレーションとは何のために?

平和と安全へと地球生物を導いてゆく事、地球環境、動物、人間を守り未来へずっと生命を繋いでゆくこと。


自然体でいる事

本来の人間の持ち味、一人一人の力を合わせて少しずつ心を大きく丸くしてゆく事、インスピレーションを互いに届け合って。


こんな風に、インスピレーションのカケラを与えてくれる女神がいる事が楽しかった。


そうして、少女は思う。

この知恵を授けてくれる理由は何だろうと。


やがて、この羊毛紙は動き出す。

少女を巻き込み、混乱と真実への旅へと。



それは、多くの混乱をもたらした。

なにせ、時空と時間がゆらゆらと揺れ、そこに生きる人間の心も揺れ、犯す罪も増えてゆくから。

勿論、少女も普通の人間だ。


意味が分からない、常に混乱は付きまとい、女神は急かし始める。

時空と時間は5回しかやり直せない、今3回目の滅びの危機にあると。


少女は、何が書かれているのかまるで理解できない。


けれど、だんだん現実が追い付いてくる。

隣国の戦争に巻き込まれ始める。

混沌へとこの世は動いている。


少女には、意味が分かり始める。

時間と時空を安全にしなくてはいけないのだと。



生き残れるのは、心の綺麗な者だと女神は語る。

または、死んでも魂の輪廻があるのだと。


けれど、少女に何ができるのだろう?


少女は無力な少女。

少女を待ち受ける未来から彼女を救おうとして現れた未来の女神さまからの格言を

インスピレーションに託し詩にした。





ある老紳士が花壇に舞う4羽の蝶を見ている。


赤の蝶はあまりにも鮮やかで私は直視できずにいる

緋に燃ゆる情熱的で攻撃的な赤い蝶

蜜から蜜へ

それがおまえのさだめ 欲への執着というのか



緑の蝶は揺ら揺らと少しの蜜を着実に吸っている

翠に染まり冷静に現実を繋ぐ緑の蝶

蜜から露へ

それがおまえのさだめ 命を繋ぐ意志というのか



青の蝶は互いに種を助け合い守りあうように蜜をえるのか

蒼の羽を煌めかせ命を守りあう青の蝶たち

露から露へ

夜行の中でも鉱石のように光を放ち 辺りを照らし助け合うというのか



紫の蝶は青の蝶を誘導するように舞い互いに楽しそうに鱗粉をまき散らす

菫の羽をはためかせ新たな命の可能性を繋ぐ紫の蝶たち

露から鱗粉へ

花粉をかけあわせ夜露に濡れながら 新たな生命を作り繋げるというのか



群青の蝶たちよ

私の空間にとどまってはくれないか

まだ飛び立つにははやいだろう




蜜から蜜へ

それがおまえの生と死への根源

命のあわれというのか

だが、それさえも疲れた時は

どこかで羽をそっと閉じるのだ



露から露へ

それがおまえの生への希望

命のきらめきというのか

青から紫へと進化を遂げる時は

新しい命と生き方を求め羽ばたくのだ




全てを話して見せた。

「昂は、こんな世界があったとしてどちらを選ぶ? 」

「俺は、答えられない」


「世界は経済も社会情勢もどんどん変わる、その原動力は金だろ?

それがなくちゃ生きていけないだろ?

そして、世界はどっぷり金に絡み取られて身動きできないだろ?

生きてくってそういうことだろ? 」


「そうだね。それは私もわかる。

世の中綺麗事じゃ生きていけないことも。

けれど、影の中にも良心は存在し、光の中にも悪行は存在している。

この矛盾があるから、人間はまた考え悩むのかな? 」


「歌奈、世の中はグレーなんだよ。

それで良いじゃないか。そうやって進むんだよ。

人間はよほど振り切れた奴しか、聖人君子や突き抜けた悪人にもなれ

ないんだよ」


「うん、わかる気がする」

「とりあえず、様子を見ていこうか、どうなるか。

歌奈と俺が出会った意味を見つけていこう。

そんなに今焦って判断を決めなくていいと思う」


「そうだね、ありがとう、昂」





弥香と会っている。


「歌奈、不思議なことが起こり始めたの。

最近、私の心が感じる事が現実に流れてくるの」

「どういうこと?」

「彼を愛したいと思えば甘いラブソングが流れてくる。

嫌いだと思えば、またあの去ってゆく彼を見送る曲が再び流れたの。

その現象は、ずっと私を追い詰めていくように続くの。

そして、本の中やテレビの中にまでそれは広がっているような気がする。

ただの偶然と言えば、偶然、でも共時性が見つかるの」



「分からないの、私も囚われている。

たまたまかも知れないし何かが私達を動かし始めたのかもしれない」


「何なのだろう?この現象?」



「一度この波に囚われたら抜けられない、樹海の地図が見えるまで」

そして、昂にみせた寓話の2作を弥香に見せることにした。



「なにこれ?特にこの2作目は何を書いているのか全く分からない」


「私も全くわからなかった、書き上げるまで。

そして、そこに行きつくまでにノートの内容は揺ら揺ら形を変えてゆく。

やっと掴んだ何かの尻尾のようなものだと思う」


「わからないの。

でも、彼を追う事でこの現象が起き始めた。

会えなかった時間の意味が、そして、何かがここには詰まっている。

また彼にもずっと前から不思議な現象が起きているらしい。

それは、何なのかが正確にはわからない。

何かがこの現象を引き起こしているらしいことは分かる。

それが何なのか未来の自分の魂と神様だと書かれているけれど、正確には分からない」


「確実に何かが迫ってきている様なそんな感じ。

しかも、偶然の領域まで入り込んでくるという現象が」


「でも、もしこの2作を合わせてまとめて考えるとするよ?

もし、神がいたとしてその導きで人間を動かしているとして?

このバイオとか兵器とか戦争とかにひた走る側と、それを阻止したい勢力側があるとしたら、

なんか繋がってゆくよね?

でね、神様がすべての魂をはかり選別して魂の次元に分けたとかいう説も繋がってゆくよね?」


「え?弥香。

今なんて言ったの?」



「憎しみや争いの仕組みって、対抗したり憎しみには憎しみで対抗する起るよね?

理解をしようと言うよりは憎しみに囚われて正確な事を理解しようとしなくなる、そして諍いがおこるよね?」


「弥香、冴えてる!、きっとそれだよ!」


「どうしよう、光を集めたり考えたらいいのかな?

そうしたら、抜けられる?この妙な現実から?」



「いや、私は愛とか光を集めようとしてここまで連れて来られたの」

「でも、この2作が歌奈とインスピレーションが導き出した答えなんでしょ?」

「いづれも、ヒントはここにしかないような気がする」

「それが、きっと何か大きな世界への問いかけでもあるし、平和への道でもある気がするの」

「歌奈、ちょっと落ち着こう、そこまでいっちゃうとアレだから」


「でも、弥香、考えてみて?」

「例えば、戦争。

結局、領土争いが焦点として、一旦攻撃されるとするでしょ?」

「うん」

「その時が、焦点なの。

皆のために自分がどうありたいかという立ち位置をしっかりと心に刻んでかんがえなきゃ」


「ん?歌奈、何言ってるの?」

「最初は理不尽な出来事に許せないでも、怒りでも、復讐でもなんでも良いの。

とにかく人間は生きていくでしょ?

人をコントロールしたくなればそれは不安であり、怒りだよ。

その怒りを不安をぶつけるだけではなく、一歩上をいくの。」


「どういうこと?」

そういうと、女神様の導きの書かれたページを見せる。

これ見て?

そういうと、ノートを見せる。


『傷が癒えたとき、あなたの高潔な魂が輝き出します。

人間であるならば、人の支えになりたい人と繋がりあいたいと願いますから。

それまでは、自問自答を。

自分はどうありたいか、どんな心でいたいか、真の目的は何かしっかりと心の奥底をのぞきこみ、そして、感覚に従うのです。


そこには、優しい繋がりや地域コミュニティーが、また、互いの命を繋ぎたい純粋なエネルギーが、心にわきます。


人をコントロールしたくなればあなたは不安であり、怒りが出ています。

その怒りを不安をぶつけるのではなく、話し合いましょう、互いにハグができるまで。

そんな未来を、切に願い、皆が繋がりあえたら…願ってやみません。


平和も、平和でない世界も、紙一重にいます、今安心な環境にいると思い無責任に放埒にいきるのではなく、近しい人のために、地域のために、国のために、そして、地球のために、今自分はどうありたいか、これを考え素直に生きていきなさい!』



「これは、人間の魂を人質に取られて、心を入れ替えなさいって

忠告なのかも知れないね?

みんな自分の命や大切な人の為に救いあいたいと願うでしょ?」と笑う弥香。


「確かに、それが、それぞれの魂別に合わせた今後の生きる未来をしめす地図なんだよ。

どんな心持でどう生きてきたかってこと。

そう考えれば繋がってゆくよね」

弥香がバカでよかった、さすが親友と笑う。


その時、携帯ニュースが二人に流れる。

「失効寸前の協定が一転し、対立する2国の間で軍事情報を互いに集めあい、平和への流れを作っていく」という奇跡のニュース。



「このタイミングで?、何この奇跡?

「歌奈……なんだかわからないけれど、きっとこれが共時性なの?」


私も驚いたけれど、何となく確信があった。

女神さまはサインを示してくれるって。


「そうなの、この何年か考えればずっと私にはこんな奇跡の偶然が起き続けてる。

それが怖くもあり、少しずつ実感し打ち明けられるレベルになってきたの。

でも、人間の私としては責任は持てない、あくまでも可能性の提示。

けれど、必要な流れとなり神々が正しい心なら導いてくださるはずだから」


「歌奈の導く女神さまは良い存在だよ。

いつも平和へのインスピレーションを与えてくれているもの」


「弥香、それに、いつもこうして意味が出てくるの、必要な時に。

いつも女神さまは先回りして答えを書かせてくれているの。

いつも不思議な時間の導きがあって、ノートの言葉とインスピレーションに導かれた文章には意味が出てくるの。

こんな不思議なことってあるのかな? 」


「歌奈、そうだね、歌奈は形にしていきなよ。

何が出来るのかはわからないけれど。

きっと、意味があるとしか思えない」



「うん。そうだね」

そういうと、なんだか気が抜けてしまった。


「この女神様が示す流れに乗ろうか?歌奈?」

いたずらっぽく弥香が笑いかけてくる。


「うん」

私は誰かにずっとこう言って貰いたかったのだと思う。



安心と満たされた気持ちになった途端におなかが空いた。



「とりあえず、ナポリタンね」

弥香とパスタを作ることにする。

弥香が野菜をきりはじめる。

私がパスタを茹でる。

野菜とホールトマトとケチャップをパスタにからめる。


「おいしい、やっぱこういうシンプルな味が好き」と弥香。

「え?カルボナーラじゃないの?」と私。

「どっちもえらべない」

と笑いだす。

「じゃあ、私はそこにペペロンチーノも加える」

と笑いあう。



「そういえば、チョコと話付けたの?」

「まだ」

弥香が問う。

「歌奈は?」

「うん、会って来た。すべてのノートを見せて話した」


弥香が慌てて言う。

「歌奈、バカなの?

そんな話したら男は即刻逃げるじゃない!

だって普通じゃないし、いきなりそんな話したら怖いと言えば怖いよ。

いっぺんにさめるって」

「分かってる、だから、今のうちに全て話したの、後悔しないように

そして傷つかないように。

なにより、2人の出会いの意味と不思議な現象が知りたいから」

苦笑いしながら、弥香が言う。

「まぁ、バカな歌奈らしいよ。どうなったの? 」

「一緒に様子を見ようって事になった。続くみたい。

何ができるか可能性をみてみたい」

「幸せ?」

「幸せな一方、怖いって気持ちもあるの」

「そうだね、私たちの関係もだね」

「そうだね」


「待って、歌奈」

「歌奈、どうして怖いの?

怖いこという歌奈を受け入れてくれてる人だよ? 」

「うん。愛があるんでしょ?」

「うん」


「歌奈の理論でいきなよ、ここまで来たら。

何が待ち受けてるのかわからないけれど、追求しなよ。

愛をそのまま追いかけたら、また次の何かが見えるんじゃない? 」


「うん。新しい世界が見たいんでしょ?

その先に何があるのか、女神さまが導いてくれる世界は悪くないんでしょ?」

「うん。」

「弥香、ありがとう」


珈琲を飲みながらゆっくりと話すことにした。

「歌奈は、今後、どうしたい?」

「うん、昂と一緒にいたい。」

「うん、じゃあ行きなよ。

迷う必要なんてない。

歌奈が彼を求めて、彼も歌奈を求めてる。

それだけでいいじゃない」

そういうと、弥香がいたずらっぽく笑っている。

「そして、歌奈なりの答えを可能性見つけていきなよ」

「うん、きっと何かは見つかる。

良い事もあれば、悪い事もあるよ。

それが、現実だから。

でも、それにあたうるだけの何かは得ると思う」

「そうだね」と柔らかく微笑む私。

「この選択は悪くなかった、むしろ最高だったって思えるものにしなよ。

自分で人生を作っていくんだよ。

それが、歌奈を救いにきた女神様の望んでいることだよ」

「うん」



「弥香は?弥香はどうしたいの?今後」

「私は、まだわからないな」そう言って弱く微笑む。

「わからないの、でも心に正直に話してみる、歌奈みたいに。

そして、相手の望むことと併せてちょうどいいところに落ち着ける

事にする」

「うん、いつ会うの?」

「来週の月曜日」

「うん」

弥香の悲しい表情に、そっと微笑んでみる。


「弥香、うん、チョコはどっちになるにしても弥香を愛してくれたと

いう事実はあったよ。

それだけは、忘れないで」

「うん」

弥香が微笑む。




月曜日の夜、弥香とチョコがあっている。

チョコの名前は、川崎 英二。


「私は、英二さんの手を取って歩いてゆきたい、でも英二さんには家庭がある、ままならない現実がある。」

英二は黙っている。


「聞いてほしいの、私の友達に起こった奇跡を。

その子はね、自分の信じる世界観があったの、それに関わるうちに私にも不思議な事が起き始めたの。」


「彼女は、未来からの自分と女神さまが導きに来たって思ってるの。

それは現実なのか、妄想なのかはわからないの。

けれど、何かの力が動いている事だけは確かなの」


「女神様?」


「うん、その子は、7年待ってる人がいたの、不思議なすれ違い現象がお互いに起こり続けて会えなかったらしいの。

何のためかは正確にはわからない、けれど、奇跡ってあるんだなって。

そうおもえる瞬間を目の当たりに出来たの」


「弥香、それはファンタジーだよ。

俺もそんな現実があるといいとは思うけど。」

「そんな優しい現実が私達に訪れる未来が見える?」

「まだ、分からない。けど……」

「じゃあ、どうして私に執着するの?

綺麗事だけなら聞きたくない」

「そうだな」



「そうだね、この先は、続けるの?

それとも解放してくれるの?

味方になってくれるの? 」

「弥香は、何を俺に望むの? 」

「あなたは私と関係を続けて、私に他の男が出来たら平気なの? 」

「平気じゃない、きっとそいつを殺したくなる」

「じゃあ、あなたの側にずっといろってこと? 」

「あなたは、私に何を求めてるの? 」

「今、あなたは言ったよ? 他の男を見つけたらゆるさないって。

「わからない、けど、どうしても側にいたい。

弥香としか心が通じ合っていないから」

「一緒にいたいだけじゃダメか?」

「わからないの」

「私だって側にいたいけど、あなた次第なの。

私はずっと一緒にいたいって言ってるのに」

「だったら、一緒にいればいいだろう」

結局、この人にすべてを預ける事になるんだと思う。

そういって、抱きしめられる。


キスをする。

唇が合わさり彼を求めてしまう、また彼も私を。

唇をずっと貪るように重ね合わせる。

何度も何度も離れられない。


そして、服を脱がされる。

彼の欲望のままに弥香の欲望のままに

熱に火照らされてゆく。

彼の唇に指先に翻弄されてゆく、彼の放したくないという感情が弥香をつき動かしてゆく。


どんどん、熱い吐息が私を追い詰めてゆく。

理性を奪い去る。

そして、2人で昇ってゆく。



彼が弥香をいつもより逃がさないように追い詰めてゆく。

彼と、こうやってベッドで隣にいる時間が好き。

側で他愛のない話をするのが好き。

彼の鼓動を聞いているのが好き。

彼の匂いも、空気も、激しさも、温かさも

側にいてよ。

全部が好きなの。

今はこの瞬間に満たされれている。


「ねぇ、英二さん、好きだよ」

そういうと、抱きしめてくれる。

「弥香、俺は弥香を失う現実は受け入れたくない」

「わかってる」


心の中で話しかける。

「ねぇ、歌奈、私は英二さんから離れられないの。

こんな形の愛もあるのかな」

「きっと、歌奈は私がどうなっても見守っててくれる?

私もバカだからきっとこの道を進むしかないってわかってるの。

いつか私にも女神様が訪れる事を願っているの」



「ねぇ、英二さん。

いつかこの恋を後悔しないって後悔させないって、それだけは約束して?」

そういうと、彼は頷いた。


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