16 俺は死んだことになっているらしい

魔導列車から転落して三日目になる。

レヴァントのこと、その他、気になるものは多い。

それでも俺はのんきに旅をしている。


林の中で、携帯食を食べ終え、野宿をたたもうとした時だった。

王国一の天才魔術師ヒックス・ギルバートからの伝言オウムが飛来した。


緑の伝言オウムは弾丸のように舞い降り、正面にて停止、ホバリングしている。


ヒックスはオウムに音声を吹き込み、俺の居場所を魔術で探索して飛ばしてきたのだろう。

通常、魔術師はカラスかフクロウを飛ばすものだが・・・。


(まあ、ヒックスのオッサンらしいな)


肩の上にとまらせ、頭をなでてやる。

俺を確認したオウムは喋りはじめた。

その声は、ヒックスの特徴をよく掴んでいる。


ピー・・・。


『『死んじゃいないようだなミハエル。だがな、冷静に聞け』』


『『王国では、お前を含め第一騎士団の数名は『邪眼水晶核を反体制ゲリラから守り死亡』って話になっている』』


(なっ、死亡だと?)


『『普通に考えて、お前は存在を「消された」ぽい。だから、王都に帰って来た時は気をつけろ、危険だぞ! 繰り返す、危険だ! 』』


『『あと、俺とミヒナは正式に交際を開始した』』



(俺が消された!? 消された、だと?)


理解できない話だ。


(ヒックスのオッサンが、マシロの妹で第三騎士師団長のミヒナと交際だと?)

この最後の一言も含め、すべてが理解に苦しむ話だ。


『邪眼水晶核』はあの後、無人の魔導列車に乗ったまま、おそらく王都まで突っ走ったのだろう。

しかし、いきなり騎士団長の俺を捜索もせず俺を『死亡扱い』とは・・・。


騎士団総帥のネロスがそうしたのか?

そのようなはずがない。

ネロスの指示ではないとすると、俺を消したい人物が反体制ゲリラの他にもいるってことなのか?


俺が生きているとわかったら、また暗殺者が送り込まれてくるのか?

それはそれで、返り討ちにするだけであって問題はないが、面倒な話だ。


頭を抱えていたら、再びオウムが喋り出した。


『『カフカの調査団は、王都へ引き上げている。俺もミヒナちゃんと一緒に帰還中だ』』

『『レヴァントちゃんの洗脳解除についても、方法が見えたので安心しろ』』


『『以上。返信があれば、この後、オウムに言い聞かせてくれ、記憶してくれる』』


ピー。

甲高い声で、緑色のオウムが鳴いた。


「あー、俺、ミハエル。王都に帰ったら、まっさきに寄るから。オッサンも暗殺されないようにな」

両手で優しく手に持つと、オウムを空高く放り投げる。


ここ数ヶ月、王国では要人の暗殺が連続しており、雰囲気がすさんでいた。

ヒックスのオッサンも一応は王国の要人だ。

頭脳は一流だが、戦闘能力はない。そこは自覚的に気を付けてもらいたいところ。


これら要人の暗殺は反体制ゲリラの仕業とされているが、どこかでマシロが絡んでいることはほぼ間違いないだろう。


(さて、王都に帰ったとこで、騎士師団長に復帰できるのかな・・・、銀行預金も凍結されてなければ良いが)


考えることが、多くなりすぎている。


レヴァントと二人で田舎に引きこもって、のんびり過ごしたいのが俺の未来計画だった。

しかし、レヴァントの激しい性格では、田舎暮らしは無理だろうとも思えてきた。


『邪眼水晶核』が悪用されたら、それこそ王国の危機だ・・・。騎士団の部下達を放って面倒ごとから逃げるわけにもいかない。


何より、ヒックスと準備を整えてレヴァントを捕獲しないといけない。

これが一番大事。


なにが起こるか分からないが、それでも王都に帰らないといけないことは確かだ。


ただ、俺は無事王都に入ることが出来るのだろうか?



◆ ◆


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