犬猿の仲であった幼馴染の死の未来を変えるべく俺が動いていると何故か彼女の方も俺に近寄って来るようになった
タカ 536号機
第1話 その日
「もう、10月。諸君らは2年生。これだけ聞けば先生が言いたいことは分かるよなぁ? そう.....修学旅行があるぞぉぉぉ!!! 楽しんでいけよ馬鹿野郎どもぉぉぉ」
「「「うぉぉぉぉ」」」
高校2年生の10月といった12月から始まる受験期に片足を突っ込んだような時期。俺のクラスでは担任の石橋先生と一部の生徒達がそんな雄叫びをあげていた。...いや、一応ここ進学校のはずなんだけど。
おかしくないか? もうなんか少し言うことあるくないか? 具体例をあげるなら「勉強も忘れずになぁ!」くらい付け足すべきなのでは?
と、そんな疑問を抱く俺は
そして...。
「...もう少し静かに出来ないのかしら」
少しため息をつきながら小さくそんなことを漏らした彼女は、俺の宿敵とも言える存在である
霧島 礼子と言えばテストは学年2位、運動も水泳以外はサラリとこなし、容姿も空と見紛うほどの美しい水色の髪に灰色の瞳、女子の誰もが羨むスタイルとスペックだけみればまさに完で壁な奴である。非の打ち所がないといっても過言じゃない。
しかし何故俺がそんな彼女のことを宿敵と称するかと言えば...。
「そして隣に座る奴の息の根も静かに出来ないものかしら」
「...奇遇だな俺も同じことを考えてたよ」
この俺に対する彼女の口の悪さと根本的にそりが合わなさすぎるのが原因である。
しかし、何故かそんな彼女と俺は幼馴染であり高校も同じ更にはクラスどころか席まで隣ととことん呪われているとしか思えない関係なのだ。
というか、むしろ呪われててくれ。これが本当にただの偶然の合致とかそっちの方が怖いから。
「というか、普通に話しかけてくるなよ」
「誰もアンタなんかに話しかけないわ。勘違いしないで頂戴」
「...まぁ、クラスでお前の話聞いてくれる奴ないししょうがない話か」
「な、なんですって!? それを言うならアンタもでしょ?」
「はぁ!? 俺は普通に友達おるわ!」
「私だっているわよっ」
「さっき「も」って言ってただろがっ。自分でいないこと認めてただろ」
「あ、アンタだってクラスの誰かと用事以外で話してるところ見たことないわっ」
「お、お前が見てないだけだろ、それは!」
「そんなことない——」
結局、毎度のごとくその場が収まることはなくむしろドンドンとヒートアップしていってしまうのだった。
*
「それで、2人して怒られてこんな時間まで指導と。...アホなの、2人とも?」
「返す言葉もない」
「ごめんなさい」
学校も終わった頃、俺と礼子は校門の前で心底呆れた様子のもう1人の幼馴染である
「はぁ、ちゃんと反省してね。...2人とも」
「サー、イエッサー」
「おけまる水産だわ」
「「あぁ!?」」
「あー、もう言ったそばからおっぱじめようとしないで? なんでそこの了解の返事の違いで喧嘩になりそうになってるの? しかも、2人とも反省してねに対する了解の返事としては不正解だし」
危うく第2ラウンド開始かと思われたが美久の制止によってその場は諌められた。
「..本当にもう少しだけでいいから仲良く出来ない?」
「「出来るわけがない(わ)!!」」
「うん、なんでそこだけ揃ってるの? ...なんか、もういいや。帰ろっか」
なにかを諦めたかのような表情で夕日を見つめた美久はそう呟くと俺と礼子に背を向け、歩き始めた。
俺も礼子も帰り道は同じなので美久の後ろについて歩いていく。
「にしても、久しぶりだよね。こうして3人で帰るの。...私、何度も誘ってたはずなのに」
「..そうだな」
「...不思議な話よね」
「とりあえず2人とも私と目を合わせて喋ってくれるかな?」
顔には出ていないものの笑顔の美久から底知れぬ圧を感じた俺がやや顔をそらしながらそう答えると、反対側では礼子も同じようなことをしていたらしく美久からそんな言及を受けてしまう。
「「だって、こいつとクラス以外で顔を合わせたくないから(たくないもの)!!」」
「...ちっちゃい頃はもう少し仲良かったのに。面倒くさく育ったなぁ」
美久は今日何度目か分からないため息をつくと、そんなことを呟いた。...これはちょっとまずかったかもしれない。礼子のことはどうでもいいが美久に心労をかけるのは申し訳ない。
「まっ、いいや。今日のでちょっとでも懲りたなら多少は仲良くしてね。じゃあ、私はここだから。また明日!」
「お、おう」
「...また明日」
俺がそんなことを考えていると美久はにっこりと笑みを浮かべ俺と礼子にそう告げると、目の前の美久の家へと向かって歩いていく——が。
「あー、綺羅ちょっといい?」
「? どうした?」
途中で何か思い出したかのようにピタッと足を止めると振り返ると俺の元へと駆け寄って来た。
「気づいてるかもだけどなんか今日の礼子具合悪そうだから、出来れば家までついていってあげて」
「...善処する」
そして俺の耳元でコソッとそう囁くと今度こそ自分の家へと入っていった。
「...ほら、行くぞ」
「はっ? なんで私とアンタが一緒に帰らないといけないわけ?」
美久がいなくなり再び地獄の空気となった中、一応俺は美久の要望に応えるべくそう言葉を発したが礼子は心底嫌そうな顔を浮かべた。
「いっとくけど俺もお前と一緒に帰るとか心底ごめんだからな。ただ、美久がお前の具合が悪そうだからって——」
「アンタと帰ると余計に具合悪くなるのよ。それぐらいアンタでも分かるでしょ。分かったらついてこないで」
「...さいですか」
礼子はピシャリとそう言いきるとスタスタと歩いていってしまった。流石にそこまで言われてしまうと礼子の具合の心配なのどは消え失せてしまい、若干のいらつきを覚えつつも俺も1人家へと帰るのだった。
そして次の日、俺の耳に真っ先に入ってきたのは霧島 礼子の訃報だった。
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次回 「後悔と決意」
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