第16話 ※良い子のみんなは真似しないでね♪
「ご、ご主人、大丈夫でヤンスか?」
階段を昇って一息ついたタニシが部屋に入ってきた。加勢に来てくれたとはいえ、今現在、不利な状況であることには違いはなかった。
「オカンがアレな事になっとる。しかも、魔王が更に許しがたい事をやっとる!」
魔王の手には……というより、片手の指の間全てに棒状のものを挟み込んで持っていた。つまり4本だ。その棒状の物の先端をしきりに口元へと運んでいた。それらを食べているのだ。
「あんた、そんなものにまで手ぇ出しおったんか?」
「フフフ、これは宮からの献上品だ。先程の蹴りのダメージを回復するにはもってこいの一品だ。冷たくて甘い。この世界にはこのような物が存在しておったとはな。ますます、この世界を手中に収めたくなった。」
ヤツが食べているのはスティック型のアイスだ! チョコがマーブル状にブレンドされた、バニラアイスである。ちなみにコレもウチのお気に入りのオヤツなのだ。シュークリームに続き、またしても略奪の被害を被ってしまった! しかも残り全部一辺にだ! 箱の残骸が近くに転がっている。残弾はゼロだ!
「やってくれたな、オカン! ウチの最後の希望まで奪ってくれたな!」
「甘い、甘いで、ミヤコ! そのアイスと同じくらい激甘やわ! あんたがいつも食い尽くすさかい、腹いせにマオ君に残り全部プレゼントしたんや。悔しかったら、自分で買うてくるんが筋どすえ。」
ちくしょお! 買いに行くなんてメンド臭いことしたないんや! 箱入りアイスなんて買ったらお小遣いに壊滅的なダメージが残るんや。それよりも、ときどき入るヘンな京都弁が更にムカつかせる!
「ちょっとアンタ! いったい何個、ウチの楽しみを奪ったら気が済むんや!」
「フフフ、貴様も人のことを言えるのか? 貴様自身、今まで食べてきたオヤツの数を憶えているのか?」
アイスを食い尽くした魔王は、これ見よがしにアイス棒を目の前にバラッとぶちまけてきた! その行為を目の当たりにして、ウチの怒りは頂点に達した!
(プッツーーーーーン!!!!)
何かが切れた。その勢いでとっさに近くにあったスプレー式の消臭剤を手に取り魔王に向かって吹き付けてやった!
(※良い子のみんなは真似しないでね♪) 商品名「ファブ・ニール」というヤツだ! こんな物が効かないのは承知の上だ。せめて一撃をくれてやらねば、ウチの怒りは収まらんのだ!
(ぷっしゅううううぅ!)
「ギャアアアアアアッ!!!!!」
消臭ミストが顔にかかった途端、魔王は絶叫した! なんだ? まさか効いているのか、コレが? たまたま目に染みただけかもしれんので、もう一吹き!
(※そこのボーイやガール達、決して真似してはいけないよ☆)
「うぎぁぁぁぁぁぁっ!!!! や、やめろ!苦しい! 体がやけるぅぅぅ!!!」
悶絶している。やけるとは言っているが、燃えたりしているワケではない。もしかして、コレは弱点なのか? 除菌成分が効いているのか? 魔王って実はバイキンと同じような存在なんだろうか? まあいいや、これなら形成を逆転できるかもしれへん!
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