変わった季節
季節が過ぎ、スマホの日付としては9月半ばに入った頃、相変わらず私達はキャンピングカーに乗ってあっちこっちを旅している。
「早いねー季節が過ぎるの」
「ん」
正確な季節はわからないけど、3か月は経過したってことは少なくともスマホでわかる。日付が合っていなくとも1日1回は日付が変わるのだから。
「朝と夜、それから昼間の温度差よね」
「だね。でもそれが秋というもの。……まあ、秋かどうかもわからないけど」
ルナと恋人同士になったとて変わりはない。強いて言うなら毎日キスする日課が増えているくらいだ。あとは……うん。ちょっと余裕がある時とかの夜に……いやこれはいいや。
互いの距離が近づき目の前と言ってもいいくらい、になったけれどやることは変わりがない。キャンピングカーを走らせて、途中で可能であれば補給したり、途中で止めて景色等を堪能したり。
話が逸れた。
相変わらず、変わらない旅を続けているということだ。でもルナと一緒に旅するのはやはり楽しいし、ルナもそう思ってくれているので毎日が楽しいと思う。
「まあ、明らかに気温は下がったよね」
「ん」
やはり、夏で間違いなかったのかもしれない。
そしてそんな夏が終わり、秋に入ったというところだろうか。とはいえ9月で気温がここまで下がるのは最近ではなかったものだ。
年々秋が消えていくと言われていたあの頃。だけど世界が終わった? 影響で? 秋が戻ってきたのかもしれない。
仮にスマホ通りの季節だとすれば、今回の夏はあまり暑くなかった。梅雨というか雨は降ったもののその後についてもそこまで気温が上がることはなかった。
一番高くても26度程度。
しかもこれは一番高いということで毎回この温度という訳ではなく、基本的には26度未満。20度~25度くらいだった。夜は19度……10度台に突入した時もあったし。
「過ごしやすいからいいけど」
「うん」
今はそんな夏(仮)が去り、秋(仮)がやってきた。昼間でも気温は20度に届くか届かない程度。夜になると流石に1桁台になることはめったにないけどそれでも10度前半くらいだ。
「でもこの温度だと冬? になったら結構寒くなりそうね」
「そうかも。普通に最低気温はマイナスになるかもね」
「あり得そう」
温暖化云々言われていた時代が懐かしい。むしろ、滅んだから地球は温暖化というよりも寒冷化している可能性もあるわね。
「地球の気候が戻ったらまたヒトとかも出てくるのかな」
「どうだろ」
なぜ人間だけが完全に消えてしまったのか。いや、完全と言い切るのはまだ早いかもしれないわね。でもたぶん、それで合っている気がする。
海外とかはわからないし、私達がまだ行ってない場所もあるからそこがどうなっているのかは不明なので私達だけでは言い切れないのは確かかもしれない。
「仮にそうなったらまた縄文時代みたいな時から始まるのかしらね」
「ん」
再びヒトが現れ、進化し、そしてまた文明は築かれる。そうなった時、人間はまた同じことを繰り返してしまうのか、それともちゃんと考えるのか。
それは今の私達にはわからない。私もルナも失敗したほうの人間なのだろうし。取り残された理由は結局、全然わからないけども。
「見届けることも出来ないだろうしね」
「うん」
私達の寿命……いつ尽きるかはわからないけど。私もルナも基本的には同い年だから、仮に尽きるのであれば……ルナと一緒がいいなあ。
「ルナはこの旅のゴールってあると思う?」
「わからない。でもいずれは陸がなくなる、と思う」
「そうよね」
これ前にも話したけど、結局私達が走っているところは陸なのだ。日本だと仮定して日本は島国であり、四方が海に囲まれている。
それ即ち、最終的には陸がなくなって海とぶつかるということ。当然だけどこのキャンピングカーは水陸両用車ではないため海を走ることは不可能。
「そうなったらどうしようかね」
「……」
「大丈夫大丈夫。前に見たいにお墓とか言わないから……あ、今言っちゃったけど」
「……大丈夫。わたしも理解しているつもりだから」
「そっか」
何のことかはわかるけど、あえてそこは何も言わない。
……でも結局海にぶつかるだろうし、それ以降をどうするか? そこは問題かな。課題として頭に置いておこう。
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