道中のなんやかんや


「町の次はなんか草原っぽいところに出たねー」

「ん」


 キャンピングカーを走らせながらつぶやく。

 町の跡を抜け、進んでいくと今度は景色が変わって草原のような場所に出た。建物の跡がちらほら見えるけど、大半が草で埋まっている。あと虫みたいなのも飛んでるかな。


「田んぼだった場所だったのかな」

「多分」


 何となく分かる。

 この場所を全部田んぼだと思って想像すると、見慣れた田舎のような景色が思い浮かぶ。恐らくあの少し高くなっている場所は堤防だった場所だろう。ということはあの先に川がある……と思うけど、あそこまで行くのは面倒かな。


「水とかはまだあるよね」

「ある。町で補充もしたでしょ」

「それならいいわね」


 川があるなら水を調達できると思ったけど貯蓄は十分なのでその必要はない。2人だけで尚且つ節約しているのもあってそこまで大きく減らないのよね。

 こんな世界になっても生き残っている私達には食料や生活用品、水と言ったものは生きるのに必要なのだ。だって私もルナも人間なのだから。


 服についてはこんな状況なので贅沢は出来ないけど、大丈夫そうなやつを見つけたらそれを他の物資同様に拝借している。最初こそは今着ていたものしかなかったからアレだったけど、旅をしている間に少しは見つけられた。

 シャワーとかトイレはついているのだからぶっちゃけ、裸で過ごすことも出来る訳だけど……まあほら? 一応人間だし、服を着たいという欲は残っているのよね。


「ん……」

「どうかした?」


 運転中なのでじっとは見ていられないけど、ちらりとルナを見ると何か唸っているようだった。


「ううん。何でもない。ただ……外の気温、25度」

「夏日だね。でも猛暑でもない。近年の夏とか異常に暑かったのにね」

「うん。平気で30度超えてた」

「35度とか40度まで行ってた時もあったわよねぇ」

「ん」


 それをを考えると大分低い。

 6月でも普通に30度超えてた日も多かったし……でもまあ、今の年月というのはスマホのやつが正しいのか、それを判断できる材料が私達にはないけれど。


 当然ラジオを付けても雑音が流れるだけだし、テレビにしても何も受信できないし。本当に誰も居ない世界になったんだなって思う。


「どうして私達は取り残されたんだろうね」

「分からない……本当に」

「だよね」


 この終わってしまった世界に私達だけが取り残された。

 その理由は誰にも分からないし、それを答えてくれる人も居ない。もし知っているのであればそれは神様くらいなものなのだと思う。


 ……環境破壊を続けてきた人類を一度滅ぼして元に戻したかったのかもしれない。自然の力というものは凄いもので、長い年月を掛ければ環境もか戻してしまう。

 

 ――でもだからこそ分からない。


 私もルナも人間だ。それこそ環境破壊をし続けていた人類の1人なのだ。それなのに、どうして私達だけ無事なのか?


「……」


 考えるだけ無駄なのも分かっているけど、それでも考えてしまう。私達だけを残して何をさせたいのだろうか? 復興なんて不可能なのに。


「新世界のアダムとイヴになれってことなのかな?」

「ん……それだと私達はどっちもイヴ」

「だよねえ」


 女の子同士で何をしろと。

 子孫を残す? いや無理でしょ。女同士でどう子を作れというのか。それとも、特に関係なくただただ私達だけが選ばれただけなのか……。


「……でもスフィアとなら」

「ん?」

「何でもない……」

「そう? なんか顔赤いけど……一旦休む?」


 運転中だからよく見れないけど、明らかにルナの顔が赤くなっている。熱でも出てしまったのだろうか……それなら治療を優先しないと。一応風邪薬の残ってるし。


「大丈夫」

「……そう? それならいいのだけど」


 嘘を言っているようには見えないけど……うーん心配だ。ちょっとその辺に止めることにしよう。


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