食料と山と終わった世界と


「わぁ……」


 そう感嘆の声を出しているのはルナだった。表情は微妙に変わっている程度でちらっと見た程度では分かりにくいルナだけど今回は目をキラキラさせているのが分かる。


「終わった世界とは思えない景色ね」

「うん……」


 廃駅を抜け、ちょっとした町を過ぎると今度は無造作に草や木が生えた森のような場所にやって来ていた。森の中の道は結構悪いけれど、それでもこのキャンピングカーなら普通に通れる広さがある。

 というより、道路だったであろう跡が残っていて道自体はちょっと悪いけど時々ガタンっと大きく揺れる以外は特に問題なく進むことができている。


 空は快晴で太陽の光も降り注ぐ。

 夏……梅雨の時期に近い感じではあるもののそこまで暑い感じはしないのよね。文明が滅んだ影響もあるのだろうか? 環境破壊は確かに年々進んでいたのは知っていたけど。


 話を戻そう。

 そんな樹木が生えているこの場所は何なのかと言えばまあ、山よね。今も山道を登っている段階で私達が居るのはそんな山道の途中にある休憩所のような場所。

 そこから見える景色は圧巻。木がいっぱい生えているのもあって下とかは見にくいのだけど、ちらちら見えるそれは文明が滅んだとは思えないものだった。


 とはいえ……大きな鉄塔は廃れ、鉄筋だろうか? ビルだったであろう建物が地面に倒れ、中がむき出しになって崩壊しているのも見える。山を登る前に通ったちょっとした町だろう。


「これからこの世界ってどうなるんだろうね」

「このまま……ずっと誰も居ないまま消えていくのかな」


 地球という惑星はそのまま残るだろう。

 そして人が居なくなった地球は環境汚染が止まり、長い月日をかけて元の環境に戻る……可能性もあるだろう。自然の力というものは物凄いものだ。


「消えることはないんじゃない? ただ……私達人間が居たっていう事実は消えてしまうだろうけどね」

「ん……」


 この世に生存者がいないのであれば……多くの人々が暮らしていた国や町、村などがあったという事実を知っているのは私達だけとなる。そんな私達もいずれは……そうなれば、最終的には何も残らないだろう。


「……新たな生命が生まれるかもね」

「そうかも」


 残念ながらそんな未来のことを私達が見ることは出来ないけれど……地球だって元々はなにも居なかったはずだ。そこから進化したりして人間という種族が生まれた訳よね。


「文明は崩壊しても……自然が残っているのはいいわね」

「ん」


 今だけは私達の独占状態。思う存分、この景色を楽しもうじゃない。


「山を抜けたら何処に出るかな」

「別の町じゃない?」

「そうよね。町にガソリンスタンドがあったらちょっと確認しましょ」

「ん」


 まだまだ燃料に余裕はあるけれど、予備というか貯蓄が多いことはいいことだ。まあ、流石に多すぎると車に乗せきれなくなるからその辺は状況を見て、になるだろうけれど。


「食料はどれくらいある?」

「まだそれなりには残っているはず。でも念のため、補給するのもいいかもしれないわね」

「ん。それはそう」


 因みに食料はどうしているのかと言えば、まあ普通に町だった場所にあるお店から食べれそうなものをもらっている感じだ。最初こそは抵抗感があったけれど、気付けばそれはなくなっていたから。

 缶詰や乾パンなどと言った非常食に使えそうなものは長持ちするので助かる。あとは自衛隊のレーションとかはそこそこ種類も豊富だし拝借するのもいいかもしれない。


 とはいえ、自衛隊もそうだけどそういった基地に行かないとそういうのはないのだけど。少し前にそれっぽい場所を通りかかったことがあり、そこで拝借したものもある。結構な数があったので積めるだけ積めたのはいい思い出? かも知れないわね。


 一応食料に余裕はまだある。飲み水はどこの店でも普通に置いてあるし、飲めそうなものを拝借したりしていた。

 食べる時はなるべく節約もしたいからどうしようもない時以外は1日2食にしている。大昔の人々と同じ感じになるわね。


 何処かに拠点を作ってそこで暮らすなら自家栽培とかも出来ただろうけど、如何せんキャンピングカーによる移動なので一か所に留まることはない。行けるところまで行くだけ。


「じゃあそろそろ行こうか」

「ん」


 そう言って私とルナはキャンピングカーへ戻るのであった。



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