第71話 老朽化

 これまでにも細かな不具合はいくつか発生していたが、ろ獲艦を除いた艦隊の大部分が耐用年数を超えており、33年という長きにわたり宇宙を航行し続けてきた艦船は、確実にその寿命を迎えつつあった。


 被害を受けた艦は適切な修理を受けても、潜在的な故障を引き起こすことは少なくない。しかし、半数の艦は一度も被弾していない。通常、就航から20年が経過した艦船は半年をかけてシステム更新、武器の換装や大幅なバージョンアップなどのオーバーホールを受ける。


 特にエネルギー送電線はサイレント故障する部分であり、必ず交換される。そして、35-40年を経て引退に至る艦船は、解体され資源となるか、新規武器のテストの標的としてその役目を終えるのだ。


 フェニックスクラウンのような戦闘艦は、莫大な資金を注ぎ込んで建造され、50年の稼働が見込まれたにもかかわらず、居住区のドアが硬くなる、シャワーの水漏れが増えるなど、常日頃の小さな痛みが存在した。


 しかし、堅牢性は未だ失われていない。特にダレンが率いる新型艦は、オーバーホールまでの想定年数が30年と、従来の艦に比べて1.5倍の耐久性を備えている。それも若干の不安が感じられるが、現時点で被弾した艦を除くと故障はなく、まだ機能している。


 しかしながら、駐留軍艦隊に属していた艦、特に33年前からすでに老朽化が進んでいた艦たちは、帰投後に廃艦を予定していただけに、既に致命的な問題を孕んでいた。中には航行可能なものもあったが、主要な武器システムに機能不全を抱える艦も多く、後部のレールガン以外の武器が使用不能になるという非常に危険な状態に陥っていた。


 レールガンは定期的に交換される電磁コイルを持っているため、機能障害を発生しにくいという利点があった。乗組員たちはこれらの問題への対処に追われ、模擬戦の合間の訓練も中止される状況となった。


 技術班は持ち前の工夫を駆使して解決策を模索したが、限界を迎えた機材に対して奇跡を求めるのは困難であった。これから迫る模擬戦において、ダレンは故障したシステムに頼ることなく、新たな戦術を構築せざるを得なかった。


 33年前に技術班がコールドスリープに入らないという選択をしたのは、今日のこのような事態を予見し、備えていたからだ。 限られた時間の中で重力ジャンプを控え、艦隊の乗組員たちは不完全な装備を補うために互いに協力し合う必要があった。


 武器制御システムに問題を抱える艦は防御に、他の艦は攻撃に重点を置く役割分担が必要となった。


 老朽化が進んだのは廃艦を予定した艦以外、駐留艦隊に属していたものも元々就航から10-20年を経過していたため、故障率が上昇していた。 そして、艦の指揮系統にある全ての者たちは、これから始まる模擬戦を通じて、荒削りであっても、最大限に機能する戦闘体制を整えることに励まざるを得ないのであった

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