第56話 模倣

 全艦がジャンプアウトに成功し、未知なる星団の中へと飛び出した。無数の星々がキラキラと輝き、それぞれがまるで遥かなる宇宙の戦場へと彼らを呼び寄せているかのように感じられた。


 ダレンの決断を受けて道は選ばれ、仲間たちが待つ戦場へと舵を切る。

 レーダースクリーンに映し出される敵艦隊の姿。

 敵の存在はジリッと待ち構える獣のように、全艦に慎重さを求めていた。


 戦闘アラートが鳴り響き、艦隊は戦闘準備を整える。

 1つ言えるのは、敵がこちらを待ち構えていた。しかし、予測位置が違ったようだ。

 経済速度であったなら、敵艦との衝突警報が鳴り響いたであろう位置に陣取っていた。しかし、今回はこれまでの速度が違っていた。

 

「全艦、戦闘に備えよ。敵艦隊の位置を確認し、攻撃ベクトルを設定せよ」


 ダレンの指示に応じて、全艦は敵艦隊に対する位置の調整と攻撃準備を開始する。


 艦独自のスキャンと、先行させた偵察感からの情報を待つも、偵察艦はかなり離れたところにいるようだ。

 タイムラグなしに通信できるところにいないようだ。


 ホロエリアに映し出された敵艦隊の形相は、その規模と厳かさからこちらの艦隊を圧倒する。


「敵艦隊がそろそろ旗艦の射程範囲に入る。全艦、攻撃準備を整えよ。」 再びダレンの声が辺りに響く。心臓が高鳴り、手に汗を握る緊張感が募る中、艦隊は静かに攻撃の態勢を取っていた。


「司令官!敵艦隊より交戦の意向を示す通信があります。」


「受け取る。画面に出せ。」


 ダレンの前のホロディスプレイに、何故かジルテット中佐が冷笑している顔が映し出される。


「ダレン少将、貴官は仲間を救うフリをして映える英雄にでもなろうというのか?我々の存在を誤解しているようだな。私たちは戦い、そして必ず勝つ。それが我々の使命だ」


 ジルテットの姿をしたそれの言葉には傲慢さと皮肉が滲んでいた。

 ご丁寧に声も同じだ。


 ダレンは突きつけられた挑戦に対し、胸に響く根拠のない自信と家族を守る決意とで詰め寄る。


「ジルテットじゃなく、中佐の姿を模した何かよ!我々がここに来た理由は・・・仲間を救うためだけではない。人類に未来を与え、平和を取り戻すためだ。そのために先に進む。我々は貴様らを止め、必ず勝つ」


 ダレンの言葉は堂々としており、艦隊の士気を更に高めた。ジルテットは一瞬、言葉を失った後、彼の顔には蔑みが浮かんだ。


「くだらない。今すぐにでも最後の戦争を始めようじゃないか。勝者がすべてを決定させる。」


 通信が切れ、沈黙が訪れる。艦隊の中に広がる静けさは、ついに始まる戦闘への覚悟と期待が混ざり合ったような緊迫したものだった。


「敵艦隊が攻撃を開始。全艦、交戦開始」


 ダレンの声が艦隊に響き渡り、ついに戦闘の火蓋が切られた。それぞれの艦が戦闘行動を開始し、宇宙の中で繰り広げられる戦闘の雄大さは、彼らの闘志を燃え上がらせる。


 この戦いが勝利と敗北を分け、未来を決定すると確信していた。

 ダレンと彼の艦隊が命懸けの戦闘に挑む中で、新たな歴史が刻まれることとなる。

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